貴乃花が関取を育てられない理由。6

親方転身していきなり躓き、
タニマチも去り、サポーターは集まらず、
有力な弟子は集まらず、
そして指導力も無い。
一体、誰がこんな部屋に入ろうというのか?
一歩引いたところから見ると、元大横綱が
やること成すこと全て上手くいかない様は
キュートではある。
だが、キュートというだけで片付けるのに
貴乃花という存在は大き過ぎるのだ。


その大き過ぎる貴乃花なのであるが、
結局彼はあらゆる側面から相撲部屋の運営を
誤ったしまった。
そして、今も尚それは変わっていないのである。
引退から8年も経つのに。
そこで誰もが思うだろう。
なぜ貴乃花は、親方として失敗してしまったのか?
理由は、実に単純である。
そう。
力士としてあまりに成功し過ぎてしまったからなのだ。
成功者というのは、自らの成功体験に対して
強烈なプライドを持っている。
そして、そのプライドというのは成功体験の
プロセスやマインドに対しても抱くことになる。
つまり、平たく言うと、オレと同じ気持ちで
オレと同じやり方をしろ、ということである。
だが、残念ながらその方法論というのは
貴乃花にしかできないことであり、
また、横綱に成るようなごく限られた人間にしか
マネできないことなのである。
確かにそれをすれば成功するのは判っている。
だが、それを実行に移せないし、
同じ矜持を持つことも出来ない。
弟子は貴乃花ではない。
つまり、貴乃花のやり方は誰にも合わないのだ。
だが、貴乃花はいつまで経っても
自らの成功体験から離れることが出来ない。
何故なら、自らの成功体験こそが自らを支える全てであり、
それを否定することは自らの現役時代を
否定することになる、と少なくとも本人は思っている
からなのである。
力士としては自らのやり方を狂信的に信じることで
ひたすらストイックに追い込むことが出来たのだが、
指導者として自らを、そして弟子を精神的に追い込んでも
弟子のマインドと肉体面が歩み寄らない限り
貴乃花の方法論では成功することが無いのである。
貴乃花の方法は、横綱を育てる方法論であり、
能力やマインドに劣る、持たざる者を育てるための
方法論ではない。
結局、貴乃花は嘗てそのやり方で成功した
自分に酔っ払っているのである。
そうでなければこれほどの失敗を重ねながら、
自らの方法論を否定せずに継続し続けることは無いだろう。
貴乃花はこれからも育成で失敗を重ねるだろう。
運良く最高の素材を手にするか、
自らを否定しない限り。

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