その日一番の大歓声。「私は、稀勢の里を諦めない」とは?

先日、両国国技館で大相撲を観戦してきた。
遠藤VS大砂嵐の大逆転に声を上げ、
隆の山の鮮やかなとったりに歓び、
上位陣が安泰であることに安堵すると共に
波乱の無さが少しばかり残念であった。
何より土俵の充実ぶりが非常に嬉しく、
夜勤明けであるにもかかわらず
その後の相撲フリーペーパーTSUNAのオフ会でも
喋り通しだったのは、そのことを雄弁に物語っている。
さて、そんなわけで先日の国技館で
最も盛り上がった瞬間について語りたい。
そう。
稀勢の里である。


把瑠都との相撲に勝利した一番。
ここまでの稀勢の里は、6連勝。
危ない相撲も有りながら、結果が付いてきている。
栃煌山や安美錦といった序盤の難敵を倒すことで
初日から徐々に内容も良くなり、
そして迎えた序盤の最大の山こそが、
この把瑠都戦だった。
国技館に来ている者は誰もが知っている。
稀勢の里が把瑠都を苦手としていることを。
攻めても、土俵際で逆転される。
稀勢の里のスタイルでは、
把瑠都の腕力の餌食になってしまう。
相性は最悪。
しかし、把瑠都もかつての把瑠都ではない。
そして、稀勢の里もかつての稀勢の里ではない。
6連勝という結果もまた、期待に拍車を掛ける。
声援が飛び交う中、時間一杯。
ざわめく館内が、仕切りとともに静まり返る。
立ち合いから左が入る。
態勢を入れ替えると同時にそのまま一直線に押し出す。
土俵際で踏み止まり、投げを打つ把瑠都。
把瑠都の態勢はまだ残っている。
だが、稀勢の里の左が強烈なのか
把瑠都の膝が悪いのか、稀勢の里の押しが
把瑠都を押し込む。
この結果を、把瑠都の故障による運と見るか、
稀勢の里の実力と見るかは判断が別れるだろう。
だがこれで、稀勢の里は7連勝を飾った。
序盤最大の山場を辛くも切り抜けたのだ。
立てない把瑠都を心配するも、
勝ち名乗りを受けた時の館内の雰囲気は
物凄いものだった。
この日一番の大歓声。
四方八方から聞こえる、意志の籠った拍手。
老若男女問わない、彼の名を呼ぶ声。
私は衝撃を受けた。
期待も大きいが、落胆の数だけ稀勢の里は
アンチを増やしてきた。
裏切られた痛みが大きいからこそ、
傷つくまいとして無関心を装うか、
憎まれ口を叩いてきた。
館内に居た人も、愛憎入り混じった感情で
稀勢の里を観てきただろう。
だが、根本では彼に強くなって欲しい。
そういう気持ちが有るからこそ、
愛情が屈折することも有るのだ。
実際私が稀勢の里への期待を口にすると、
猛反発する人も少なくない。
だが、私が仮に琴奨菊や妙義龍への期待を口にした時、
果たしてここまでの反発をするだろうか?
それだけ、稀勢の里は特別なのだ。
そこにはもう、人種とかいう
小さな理由では収まらない動機が確実に存在している。
我々は、稀勢の里と共に苦楽を共にしてきた。
ドラマの数だけ、思い入れは強くなる。
そしてそのドラマというのは、今のところ
その殆どがバッドエンドなのである。
しかし、時折見せる彼にしかできない相撲に、
我々は魅せられてしまう。
裏切られると思っても、憎まれ口を叩いても、
結局気になって仕方が無い。
そういう存在なのだ。
だが、そろそろバッドエンドは終わりにしたい。
それだけの相撲を、今場所の稀勢の里は見せている。
もう一度言う。
私は稀勢の里を諦めない。
遂に10連勝。
最高の結末を期待せずには居られない。
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その日一番の大歓声。「私は、稀勢の里を諦めない」とは?” に対して4件のコメントがあります。

  1. げんもん より:

    テレビ解説の中で軽く言われていた気もするのですが、気合いを入れすぎて『力み』になってしまっていたのが気合いを『力』にすることが出来るようになってきたのではないでしょうか?
    今場所の相撲も内容的には今までもさほど変わっていないと思うのですが、本人のなかに余裕が出てきたのてはないかと思います。
    とにかく残り五日間頑張ってもらいたいものです!

  2. 祖母譲りの大相撲好き より:

    彼はあのふてぶてしい表情から母などは「好きになれない」と言うし、
    何度も期待をされて、裏切られて、空気読めよと言われ、
    アンチに回る人がどんどん増え、、、
    でもそんな彼を諦めたことは自分は一度もないのである。
    あるツイッターで見つけた言葉だが(引用できずに申し訳ない)、
    「稀勢の里ファンも強くなった!」というような内容を見た。
    うまいことを言うとは思ったが、逆に自分一個人的にはあまり感心するわけではなかった。
    それは自分は一度も彼を諦めたことがないからだと本記事を見て思ったのだ。
    彼は恐らく「平成の大横綱」として最初に名前が挙がる
    貴乃花と同等以上のプレッシャーと長く長く戦ってきた。…というか今も戦っている。
    そうなるだけの力士であるところは少なくとも昔はみんなが認めていた。
    段々諦める人が出てきた歴史はここを見ている方ならご存知だろうと思う。
    そう、本当にいろいろな意味で彼は「特別」なのである。
    それが証明されたのが今場所だっただけだ。
    彼は努力の人で、真っ直ぐでとても不器用で、稽古熱心でも知られ、
    八百長問題の際にも上位力士として唯一ガチンコであると言われていた。
    師匠の教え通りに出稽古に行かず、それでも練習量は人一倍と言われた。
    それで今場所である。別に出稽古解禁がどうとかそういうつもりはない。
    彼自身が言っている通り、一つ一つの積み重ねが今の彼を作っているのであり、
    心技体の心の部分の成長(~14日目)と甘さ(千秋楽)が際立った場所が今場所だっただけである。
    千秋楽で「やっぱり結局ここで負けちゃうんだよなぁ…」と言った落胆の声を多く見かけた。
    正直この程度のことで諦めているのでは、
    彼を本当に応援しているのか疑ってしまう自分がいた。
    自分はむしろ負けてほしいと思っていたから某所に投稿してみたが、
    思ったよりその見解への賛同者は多く、嬉しかったものだ。
    彼には重く重く重過ぎる試練を乗り越えて、
    ファンの記憶に残る横綱になってほしいものだ。
    自分は記録に残る横綱より、記憶に残る横綱が見たいのだ。
    今場所の14日目の稀勢の里の取り口は自分の記憶に強く残るだろう。
    彼が受けてきて、これからも受けていくプレッシャーを、
    長いことやっている彼の一ファンとして共有して、私はこれからも稀勢の里を応援し続けるだろう。
    白鵬はよく日本人より日本人らしい立派な横綱だと言われている(少なくとも私はそう感じる)。
    まったくもってその通りであるのだが、それは彼が昭和の大横綱たちを初めとする、
    立派な人格者でもある日本人力士像をいうのを体現しようと心掛けてきたからだと思う。
    これは素晴らしいことだし、元々自分は外国人力士全員に敬意を持っている。
    大相撲は近代的・スポーツ的という部分より先にくる歴史的・文化的な面が大きい。
    言葉の壁もある中で、立派に土俵に立つ姿は素晴らしいと思うし、
    いろいろな人に少なくともそういう面ではもっと認めてあげてほしいと思う。
    この辺りは話が逸れるのでここまでとさせていただくが…。
    何を言いたかったかと言えば、
    稀勢の里は白鵬より「日本人らしい」のである。
    良い意味でも悪い意味でも「日本人くささ」が彼にはあると思う。
    自分はそこが魅力的で彼を応援し続けているし、彼は勤勉な日本人らしく努力するだろう。
    今場所の主役は彼だったのはいろいろな意味で明らかである。
    だが自分は来場所全勝でも横綱を辞退してほしいくらいだ。
    (もしそうなった場合できるのかとか専門的なことはわからないが)
    心というものは技や体と違って長い長い努力の果てに身に付くものであり、
    今場所その片鱗を見せている以上は慌て騒ぎ立てる方が無粋だと感じる。
    きっかけは掴んだ。
    相変わらず愚直でガチンコな相撲で、実力で時間をかけて綱をとり、
    私のような気長に待っているファンが心から祝福し、そうでなかった人にも認められ、
    みなが更なる応援をして行きたいと思える形になるよう今後も精進してもらいたい。
    そう、そんな稀勢の里になってくれることを私は諦めたことはないし、今後も諦めるつもりは全くないのだ。
    彼本人にかかり続けているプレッシャーを思えば、
    応援し続けていられる自分は幸せを感じる。
    何より彼は怪我をしないでここまできたのがすごいのだ。
    自分はファンとしてこんな程度のことで怪我はしたくないのである。
    最後に…、、、読んでいただいた全ての方には、
    このような長文・駄文にお付き合いいただき心から感謝する。

  3. 野村 英樹 より:

    はじめまして。書き込みの方法がよくわからなく、もし間違っていたら申し訳ありません。
    以下よろしくお願いします。
    ◆問1:
    稀勢の里が5月場所で13勝2敗だったことを受けて、
    7月場所で14勝以上であれば、横綱推薦も有るとの
    意見が出ています。これについて賛成ですか?反対ですか?
    →大反対です
    ◆問2:
    問1に賛成する理由、反対する理由を教えてください。
    →確かに今場所の活躍は先場所とはがらりと変わった非常にいい内容でしたが、1場所や2場所でよい成績だったからといってホイホイと横綱にするべきではない。
    確かに日本人力士の横綱というのは一日も早く見たいですが最低後2場所は取り口を見たほうがいいと思います。確かに今場所の稀勢の里はいろいろと努力したということはTV等でよく放送されていたので努力したんだなと思いますが、悪く言えばまだ1場所だけのことで正直今場所以前までの相撲は大関の相撲とは言いがたいです。それなのに今場所の成績だけを見てそういう発言ができる横審というのはどういう神経をしているのか理解に苦しみます。
    ◆問3:
    最近、大きな怪我をして番付を大きく落とす力士が後を絶ちません。
    以前は公傷制度によって救済措置が有りましたが、
    現在では制度が廃止されています。
    こうした問題についていかがお考えですか?
    また、良い案が有ればこれを機にお教え下さい。
    →怪我が原因で番付を落とす力士が多いのは見ていて残念ですが、それをチャンスにあがってくる力士もいるのでコメント難しいです。取り急ぎ問い1と2を回答したかったのでこちらについてはまたコメントさせてください

  4. Nihiljapk より:

    げんもんさん
    コメントありがとうございます!
    プレッシャーが掛かれば掛かるほどに
    普段のいい動きが出来なくなっていたのが
    最近の稀勢の里の特徴でしたので、
    連勝するに連れて内容が良くなっていき、
    次第に手のつけられないほどの安定感を生み出したのは
    かなりの驚きでした。
    最後の一番だけはかつての彼に戻ってしまいましたが
    劇的な変化が見られた15日間でした。
    来場所以降も期待せずには居られませんね。

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