暑い名古屋で最高に熱い稀勢の里の闘いを観よう。

今場所で最も意味の有る勝利を、千秋楽で手にした。
勿論、稀勢の里である。
白鵬との熱戦に敗れ、優勝から後退したところで立て直せずに鶴竜にも敗れた。これは致し方ないことだ。誰でもああなる。後退した後は誰でも100%の実力など発揮できない。前の記事にも記したが、優勝争いから後退した後で崩れたのは白鵬も同じだったのだから。
千秋楽の取組に勝てば綱取りは継続すると明言されていた。優勝が懸かった白鵬との一戦も意味は有った。だが、この日馬富士との一戦にも大きな意味が有った。
そしてこの一番が意味を持つのは、一度集中力が切れた後だからである。ここで立て直すのは、本当に強い力士にしか出来ない。勢いでもなく、神がかり的な雰囲気でもなく、頼れるのは本質的な自分の強さ。裸の萩原寛の強さが問われる一番だったのである。
私はもう、観なかった。
観ることが出来なかった。
この一番に敗れることが、稀勢の里の夏場所を否定するような気がしたからだ。12日間のスタイルチェンジが水の泡になるような、絶望の底に絶望が有るような、そんな不安に駆られたからだ。
プレッシャーは有る。
テンションは最悪。
相手は日馬富士。
悪い条件は整い過ぎていた。そういう時に稀勢の里は強さを見せられなかった。3年間で1度たりとも。あの気分を味わうのはもう、ごめんだった。
だが、稀勢の里は別の形を見せた。
今場所見せた受けの形ではない。
自ら攻める形だ。
攻めた稀勢の里は強かった。
日馬富士は受けるしか無かった。
後退するしか無かった。
全てが完璧だった。
私は今場所の稀勢の里で、一番信じられない相撲を観たと思う。プレッシャーに勝ったことも、1日で立て直したことも、そして攻めて勝ったことも、全てが今までの稀勢の里には無かった。
また一つ、稀勢の里は成長したのだ。
12日間で夢を見た。
白鵬戦で敗れても更に夢を見た。
だが、鶴竜戦で絶望の淵に落とされた。
そして、日馬富士戦でまた夢を見た。
本当に疲れた15日間だった。こんな緊張感の有る15日間が1年に6回も有ると、身体が持たない。夢のような、でも娯楽というには重過ぎる。しかし楽しすぎる夏場所だった。
最高の稀勢の里を阻む白鵬が居る。
落胆する稀勢の里を倒す鶴竜が居る。
そして、千秋楽に待ち受ける日馬富士が居る。
このような環境で相撲が取れる稀勢の里は不幸なのだろうか。否。私はこれほど幸せな力士は居ないと思う。
稀勢の里は成長するしかないのだ。それしか道は残されていない。多くの方が彼らを打倒することを望み、自身も強さを渇望する。本来であれば稀勢の里は第一人者になっている。その後の成長は望めない。
しかし、稀勢の里には更に強くなるチャンスが残されている。このような環境は、どの時代にも無い。ここから強く物語は、本当に魅力的だと思う。
ただ、この物語が魅力的なのは最後に勝つからだと私は思う。
もう負けて得る財産は要らない。
今回の2敗で最後にしたい。
あとは勝つことで歴史を創りたい。
その先は、もうすぐそこに有る。
暑い名古屋に有る。
暑い名古屋で最高に熱い稀勢の里の闘いを観よう。
絶望はもう要らない。
歓喜の千秋楽を。
さぁ、休もう。
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暑い名古屋で最高に熱い稀勢の里の闘いを観よう。” に対して9件のコメントがあります。

  1. hanamizake より:

    大相撲をまともに見始めてたかだか2〜3年程度でありますが、
    これほどまでに希望を抱き、感動し、絶望し、そしてまた希望を得た場所はありませんでした。
    思わずテレビの前でガッツポーズをしたのは今日の取組が初めてだったと思います。
    昨日迄は、それが根本的には解決策にならないこと(ついでに言えば慣例的にありえないこと)を把握しつつ、「対白鵬が千秋楽だったなら結果は違っていた」と思っていました。
    でも今は、今場所は通過儀礼だったのだと受け止めています。稀勢の里の真の覚醒の道程だと。
    それは来場所以降無惨に打ち砕かれるものかもしれませんが、それでもこの気持ちを抱ける事そのものが得難く有り難いものだといまは思ってます。

  2. マレーグマ より:

    いつも楽しく拝見しています。
    今場所こそ稀勢の里の優勝かと思ったんですが残念でした。
    茨城新聞に稀勢関の父(貞彦さん)のコメントが載ってまして、白鵬との取組の際は明らかに緊張し固くなっていた。丹田(へその上)で呼吸していたものが胸の辺りで呼吸していた。と、うろ覚えで申し訳ないのですが…さすが子供の変化は見逃さないですね。続けてお父さまは「白鵬と同じ世代に生まれて不幸なものだ」とコメントされていました。でも、私は主さんの仰る通り白鵬なくして稀勢の里を語ることはできないし、白鵬がいるからこそ光があたるのだと思いました。
    今場所後の西岩親方の引退に花を添えたかったですね。来場所に期待です!

  3. 来場所は… より:

    千秋楽で白鵬が全勝優勝を飾ったとき、何と運命的なのだろうと多くの人が思ったことだろう。
    その勝ち星が通算で987個目だったからである。
    今場所のように序盤から白星を重ねていけば、数少ない白鵬のモチベーションの中でもおそらく最大のものであろう1000勝目は13日目、つまりは稀勢の里戦ということになるのだ。
    例えばこれが来場所も全勝優勝してようやく1000勝というのでは、全盛期と比して体力の衰えた白鵬にもプレッシャーはかかるし、早々に1敗でもして目標達成が不可能ということになると、近年の横綱はそこでやる気を失ってズルズルといってしまう可能性があった。
    「13勝で通算1000勝」
    これは横綱になってから1場所平均で13勝以上している白鵬にとっては何のプレッシャーにもなるまい。おそらく今場所のようにスイスイと12個の白星を並べ、稀勢の里と対峙することになろう。
    やはり運命をも司る神は、昇進の条件を緩めてもらい、かつ苦手の碧山戦を除外されるような協会ぐるみの依怙贔屓力士の味方など決してしないということだ。
    そして当然のごとく来場所の13日目にはその依怙贔屓力士に「相撲の神」横綱の制裁が加えられるだろう。
    最終成績
    横綱白鵬:15戦全勝もしくは14勝1敗
    大関稀勢の里:11勝4敗もしくは10勝5敗
    結局は小学生でも読めるいつも通りの展開になる。
    これが「運命」なのである。

  4. shin2 より:

    >>白鵬、稀勢に苦言 土俵以外でも努力を
    2016年5月24日 デイリースポーツオンライン
    >>力士会の面々が歌っている日本相撲協会の公式ソング「ハッキヨイ!大相撲ひよの山かぞえ歌」のビデオを例に挙げ、「みんなが歌っていたでしょ。彼は立っているだけ。そういったものから直していかないと」と苦言を呈した。続けて「(自身が主催する国際少年相撲大会の)白鵬杯に顔を出すとか、子供たちにアドバイスするとか…」と促した。報道陣に「土俵の中だけではなく、それ以外でも努力を?」と尋ねられると「その通りです」と答えた。
    >>http://www.daily.co.jp/general/2016/05/24/0009114011.shtml?pg=2
    ブログのコメント欄で長々と引用してすみません。
    でも、白鵬、稀勢の里のプライベートなことまでダメ押し、ちゃうわダメ出しするかねえ?
    それとも「白鵬派閥」(そんなモンがあるのかどうか知らんが)に入れと命令してるのか?
    名古屋場所前、稀勢の里は30歳になる。
    力士の平均年齢は以前より上がっているだろうが、彼は17歳で新十両、18歳で新入幕している。
    若くして昇進した力士は30歳前後で引退している(若秩父、大鵬、北の湖、貴ノ花父、貴乃花息子etc.)。
    たぶん、これが最後の横綱昇進のチャンスだろう。
    審判部や横審がゴチャゴチャ言おうが、気にすることはない。
    悔いのない名古屋の闘いを、ってまだ1か月以上あるがな。

  5. ××× より:

    慧眼いつも恐れ入っております。このblog読むと見え方が変わってきますもの。
    そこで質問、乞ご教示なのです。
    前場所優勝を受けての白鵬の最初の綱とりは、小生の記憶では、朝青龍と1差で見送られました。理由は、千秋楽を待たず14日目に朝青龍に優勝を許したこと。このことで「準ずる」に値せずとされましたね。対し、前場所優勝もしていない今回の稀勢の里、同じく14日目に優勝を許し、さらに2差。なのに「準ずる」扱いをされてます。この「準ずる」に値する・しないの違いは、何によるのでしょう。外国人差別/日本人優遇を言うは簡単。でもそうではないと思いたいし、そうではないはず。とすると、皆さん納得のいくを説明というか根拠はいかに、となるわけでして、その辺どういったものになるのでしょう?

  6. nihiljapk より:

    そうですね。たぶん決戦が千秋楽なら恐らくまた結果は変わっていたと思います。少なくとも2敗目は無かった可能性も出てきます。ただ、3敗だった可能性も有ります。結局分からないんですよね。
    今ある現実しか残りませんし、絶望の陰で希望も残してくれた。後でこれでよかったと振り返れる日が来れば、いや、ハッピーエンドでなくても良いかもしれません。どういう未来が待ち受けているかは分かりませんが、昨日満ち足りていた時点で正解じゃないかと解釈しています。

  7. nihiljapk より:

    んー、双羽黒以降で日馬富士までは連続優勝が条件になり、鶴竜からまた「準ずる」が復活したという話だと理解しています。そのことに対して「甘い」とか様々なことを仰る方もいますが、実は綱取りの数場所で優勝していない力士も結構居ます。だからそれほど今の「準ずる」は問題ではないと解釈しています。

  8. nihiljapk より:

    親からすれば不幸以外の何物でもないかもしれないですね。大変な時代に大変な宿命を背負ったものだと思います。もっと楽な時代も有るし、楽な生き方も有ると思います。でも今見られる稀勢の里が魅力的ならそれでいいとも思います。

  9. nihiljapk より:

    白鵬がお好きなことは分かりましたが、人のブログのコメント欄で「制裁」とか只事ではないので、正直辛いです。
    何故稀勢の里が一方で支持されているか、きつい言葉を一度下げてお考え頂いてからでも遅くないんじゃないかと思うんです。それでも無理なら何も言いません。納得はせずとも理解出来ればもっと相撲観戦が楽しくなると思うので・・

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