【吐合速報】 勝負の大阪場所、始まる。

元学生横綱でありながら、入門して間もなく
力士生命を揺るがす大怪我を負い、
番付外への転落という憂き目を味わった、吐合。
そしてようやくその苦労が結果という形で
実を結んだ先場所。
幕下11枚目でスタートした吐合。
相撲の神が降臨したかのような完璧な6日間と、
ベストを尽くしながらも相手に上回られて
大願は成就しなかった7日目。
どの相撲も素晴らしく、胸が熱くなる思いであった。
それだけに、そこまで至りながらも十両昇進を
決め切れなかったことが残念だった。
理由は二つある。
8年間苦汁を舐め続けた元学生横綱の吐合の努力が
結果という形で実らなかったことと、
これが勢いによってもたらされた強さではないか?
という邪推が有ったからである。
特にこの2番目が問題で、初場所の結果は
神懸かっていたからこそのものであれば再現は出来ない。
だからこそ、決め切れなかった吐合にとって
大阪場所は真価が試されるのである。


だが、考え方によっては一時の勢いだけで
達成された十両昇進であればその壁に
阻まれることは必至なのだ。
後になって無理に昇進していなかったことが
良薬になったと振り返れる、そんな2カ月に成れば
結果的には良いのである。
初日の相手は、幕下筆頭の若乃島。
奄美出身で粘り強い取り口が持ち味の曲者である。
幕下2枚目となると、対戦力士も十両獲りが懸かる
ツワモノばかりだ。
モンゴル人、十両経験者、学生相撲出身のエリート。
この辺りは最早怪物である。
コツを掴めば幕内、更には三役も目指せる逸材を相手に
勝ちこさねばならないのが、幕下上位の定めなのだ。
先場所は只の勢いだったのか?
それとも、本物なのか?
土俵に上る吐合。
歓声が飛ぶ。
これは、大変な変化である。
先場所の頑張りから覚えられたのだろうか?
男性の声も、若い女性の声も聞こえる。
感慨深い。
気持ちを整理する間も無く、取組が始まる。
立ち合いから相手を中に入れない。
突き押しでジリジリと後退させる。
気が付けば土俵際まで攻め込んでいる。
耐え切れずに身体を反転させて形勢逆転を狙う若乃島。
逃さない吐合。
そのまま押し込んだところで決着。
完勝。
文句のつけようの無い出来である。
先場所開眼した、攻守一体の押し相撲は健在である。
相手を中に入れない突き押しは、今場所も猛威を奮う。
先場所幕下上位で5番勝利した若乃島を相手に
この内容ということは、殆どの相手に対して
取り口を再現できることが期待される。
いよいよ十両が見えてきた。
あと3番。
フロックではない実力を携えて
堂々と十両昇進を決める吐合が、私の眼には浮かんできた。
しかし…
そんな楽観的な未来を描いていた私に対して
目を疑う取組が用意されていた。
里山。
そう。
あの里山が明日の相手なのだ。
十両昇進を懸けて先場所7番目に闘い、
そして敗れた相手こそが里山だったのである。
大激戦と呼ぶにふさわしい対決。
個人的には先場所のベストバウトだったのだが、
十両の里山と幕下の吐合が、またしても激突するのだ。
誰が組んだのかは知らないが、
幕下ではある程度目途の立った(と思われる)
吐合に対してここで十両との取組、しかも
里山との対決を組むとは、本当に酷なことをするものである。
しかし、十両との取組が組まれるのもまた、
幕下上位の宿命。
十両に昇進すれば、相手は全て十両なのである。
そもそも里山自身も、連敗スタートなのだ。
早くも今場所の趨勢を決めるかもしれない大一番。
元学生横綱 VS 現役十両。
イデオロギーとイデオロギーの対決に、終わりは無い。

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