大砂嵐が好調な一因は、土俵経験の少なさ。予測不能な相撲のメリットと、今後を左右するデメリット。

大砂嵐が4連勝と好調である。
私が初めて稽古見学した際に、北の湖部屋で異彩を放っていたのが
当時幕下の大砂嵐だった。
幕下なのに、北太樹・鳰の湖・北はり磨との申し合いに加わり、
この3名を圧倒する場面も随所に見せていたのだ。
これにはさすがに驚いた。
だが、体力が無いし身体が信じられないほど硬い。
底知れぬ潜在能力と相反する脆さが
コインの裏と表のように代わる代わる出るので
観ている方は呆気に取られるばかりであった。
5月場所で幕下優勝を飾り、十両を2場所で通過し、
今やあの時の幕下力士は幕内下位に定着しつつある。
大砂嵐の強さは、アスリート的な能力が
極めて高いことと、飲み込みの早さであることは
誰もが認めるところだろうが、
私は個人的にはもう一つの理由が有ると考えている。
それは、やりにくさである。


思い出してほしいのだが、大砂嵐の対戦相手が
彼を簡単に倒す光景を見たことが有るだろうか?
私は、殆ど記憶に無い。
身体能力が高く、そこに手を焼いていることは間違いない。
ナチュラルパワーの強さや回転の速い突っ張りは、
正にそれに当たる。
しかし、大砂嵐の面白いところはこうした能力の高さに加えて
予測不能な動きを繰り出すところに有る。
彼はまだ、ある意味で力士に成り切れていない。
というのも、相撲の文法を理解し、それを体現出来る
段階に無いのである。
基本的なことであれば、股割りが出来ない、
腰が高く脇が甘い。
技術的な面を上げるとキリが無いが、
普通の相撲を観ているとあまり見たことがない形が
随所に見られるのは彼の特色である。
しかしこの「あまり見たことがない形」にこそ、
相手力士は手を焼くことになる。
今まではこの未熟な部分が要因で敗れることが多かったのだが
この2年の土俵経験が基本的な能力を向上させたため、
かつてと比較すればかなり改善したと言える。
とはいえ、稽古場で経験していない状況も
起こり得るのが本場所の土俵である。
このような時に、どうするか。
土俵経験が多い力士は考えるよりも先に身体が反応し、
普段土俵で取っている動きが出ることになるが、
大砂嵐の場合は本能に基づいた動きが出る。
そして、それこそが「あまり見たことがない形」の正体なのである。
大砂嵐にとっては自然な動きが、相手には理解できない。
コンマ数秒の反応の差で、大砂嵐は有利な体勢になる。
初見で対応が難しいことは間違いない。
つまり、今のところ彼の土俵経験の無さこそが
好調の一因なのである。
だからこそ、今後が問題なのだ。
隆の山は幕内も経験したが、あの相撲に対して
相手が対応出来るようになり、番付を下げる結果となった。
変則というスタイルは、最初は成果が残せても
ノウハウが蓄積すると対策が取られる。
結局あまり見たことが無い形というのは、
誰もが思いつくが、誰もやらないだけなのである。
オーソドックスなスタイルは、相撲の長い歴史の中で、
様々な試行錯誤を経てたどり着いた文化遺産と言える。
大砂嵐の成長が先か、対戦相手の分析が先か。
興味は尽きない。
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大砂嵐が好調な一因は、土俵経験の少なさ。予測不能な相撲のメリットと、今後を左右するデメリット。” に対して1件のコメントがあります。

  1. おき海ファン より:

    なるほどですね。
    そうすと、歴史の蓄積からすればモンゴル相撲の方が上になるわけですね。グランドの違いはあれこそ組んだ時のテクニックなど、なにかしらあるのかもです。まあ何れにせよ日本人頑張れよ。です。

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