照ノ富士は、モンゴル人力士としては新種である。モンゴルからの直接入門力士と、高校相撲出身者の強みと弱みを考える。

照ノ富士が凄い内容の相撲を見せている。
遠藤を相手に攻めを封じ、攻防の末に上手を掴み、
土俵の外に追いやる。
上位との対戦でも対応力を見せてきた遠藤に対して
身体能力だけでなく相撲を取って、相撲で勝った。
上手が入れば、この地位であれば誰でも勝てるのではないか?
そう思わせるほど力強く、難攻不落であるように思えた。
また、上手を掴むだけの技術も有る。
この地位で、照ノ富士に一体誰が勝てるのだろうか?
私には千代鳳の突き押し相撲と、
攻勢に出た時の妙義龍くらいしか思いつかない。
この地位で、安定感の有るモンゴル人力士。
若いモンゴル人力士で、安定感が有るとなると
殆どの場合が日本の高校相撲の経験者だ。
早くから日本の相撲に触れている分だけ、
相撲が非常にスムーズなのが特徴的である。
立ち合いや相撲の展開に粗削りなところをあまり感じさせず、
むしろ彼ら特有の上手さで勝ちを積み重ねる。
モンゴルのベースの匂いはほとんど消えて、
日本の相撲を彼らは取る。
高校三年間で日本への適応は完了しているので
後は自分の相撲を先鋭化するだけ。
だが、高校相撲を経たモンゴル人力士は、
大体共通してモンゴル人力士特有の強みを失う。
つまり、荒さである。
モンゴル人力士として頂点を極めた力士は共通して、
荒さを強さに昇華している。
朝青龍も、白鵬も、日馬富士も、そして
綱取りの時の鶴竜も。
粗削りで未熟な弱さを内包しているのが、
モンゴルから直接入門した力士である。
そこを洗練させ、荒さをミックスして自分のスタイルを
確立すると、日本人も東欧のスポーツエリートも対応できない。
だが、自分のスタイルを先鋭化できずに燻る力士も存在する。
白鵬に成れずに角界を去るモンゴル人もかなりの数存在している。
日本の高校や大学を経由して大相撲に入門した力士は安定しているが
適応し過ぎているが故に日本の相撲の枠に留まっているのが
彼らの良さであり弱点とも言える。
照ノ富士は、朝青龍のように高校相撲を経由しながらも
荒さを強みとして出世したタイプではない。
むしろ、日本の相撲へ適応しながら
今までのモンゴル人には無い体格的なアドバンテージを
利してのし上がった力士である。
つまり、新種なのだ。
考えてみると、逸ノ城も照ノ富士と同じように
モンゴル的な野性味は特に感じさせない、
体格的なアドバンテージを武器とした力士である。
二人が例外なのかもしれない。
とはいえ、同じ時期に同じ強みを持ったモンゴル人力士が
出現したとなると、一つの傾向として捉えざるを得ない。
そして日本相撲に適応し過ぎると、突き抜けた成果が得にくい。
だが、彼らは圧倒的な性能差でその壁を壊そうとしている。
横綱も、大関も、皆三十歳前後。
誰が脱落してもおかしくない状況だ。
更に、今のところ新時代を築く可能性を見出せるのは
新時代のモンゴル人を含めてほんの僅かである。
彼らが道を切り開くのは、想像以上に早いかもしれない。
私はそれが、2015年末ではないかと考えている。
例えば、白鵬は序盤の安定感の喪失。
例えば、稀勢の里は重量級力士の早期劣化傾向。
そう。
全員が不安を抱えている。
このような時期には、入れ替わる力士が必ず登場する。
これだけの可能性を見せられると、私はそれが
照ノ富士ではないかと思う訳である。
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