「大相撲ぴあ」と「がっつり!大相撲」。2冊の魅力と、相撲関連書籍全体への要望を考える。前編。

相撲関連の書籍出版が相次いでいる。
近所の書店ですら多く入荷している2冊の本。
一つが「大相撲ぴあ」。
そしてもう一つが「がっつり!大相撲」。
後者に関してはセブンイレブンでも買える代物だ。
相撲人気、ここに極まれりという印象である。
そして気になるのは当然この2冊の出来なわけで
発売から既に1週間近く経過し、品薄な店舗も増えていると聞く。
そこで今回は、この2冊について所感を纏めようと思う。
まずは「大相撲ぴあ」。
相撲のフリーペーパー「TSUNA」が編集に携わっているだけに
紙面の作りや登場するライターや識者がTSUNAオールスターズである。
そしてこの本には「相撲初心者のための入門書」という明確なコンセプトが有る。
というのも、以前TSUNAで紹介した内容が数多く掲載されているからだ。
素人を相撲オタクに、というTSUNAの方針そのままに紙面が構成されている。
これが大きな特徴である。
土俵の作り方やチケットの取り方、国技館の楽しみ方に始まり、
識者による見所の紹介や有名力士のインタビュー、
相撲女子の座談会など、相撲を知らない人の視点に立った作りは
ビギナーには嬉しいところではないかと思う。
ちなみに「大相撲ぴあ」の中で私が白眉の出来だと感じたのは
よしもと芸人「キンボシ西田淳裕の『お前誰?』」で間違いない。
一般知名度の低い力士を西田氏が紹介するのだが、このコラムが良いのは
相撲を知らない方でも喰い付けるくらいの温度の話題を提供している点に有る。
相撲が好きな人はつい話をマニアックな方面で語りやすく、
また一般的な方面に話を揺り戻すと「宝富士はマツコ・デラックスに似ている」的な
次元でお茶を濁してしまいがちなのだが、彼はこれをしない。
そしてもう一つは、彼独自の情報がこれに加えられる点だ。
この二つが融合され、ビギナーも相撲ファンもニヤリと出来る、そういうコーナーが出来ている。
彼はネタもトークも面白いが、どちらかと言えば紙面でこそ面白さが発揮できるのではないか。
「キンボシ西田淳裕の『お前誰?』」という発明が出来たことこそ、
実は「大相撲ぴあ」発刊の意義だったのではないかと私は思う。
あと、話は異なるがデーモン閣下の「今後の角界はこうなる!」について
「危惧されるのは、各『相撲部屋』が本来の『かくあるべき姿』を
保ってゆけるか」という部分」という指摘が刺さった。
マナーなどの不文律の部分についての取捨選択。
将来のために変えるべきなのか、文化として守るべきなのか。
難しい話だが、当ブログでもたびたび話題にしている部分ではある。
続いて「がっつり!大相撲」。
47都道府県出身力士を全ての都道府県別にページを作って紹介したり、
一門別の相撲部屋の相関関係や歴史的沿革を纏めたり、
歴代横綱や外国人力士の系譜を紹介しており、
つまりは過去の力士・出来事やデータをぎゅっと纏めた本である。
相撲ファンと一括りに言っても、一人ひとりで
ぐっとくるポイントが異なる。
200ページ近い構成がここで活きるのは、トピックの数を多く提示することで
多くの方が刺さりやすい紙面構成をしている、ということである。
47都道府県別の力士紹介というのは、正にそれだ。
そして当ブログとして聞き捨てならないのは、
「最強大関は誰だ?」という特集を打っていることである。
切り口として当ブログの見解と重なるところも有るので
その結果は各自でご覧頂きたい。
最近よく思うのが、データには「それで?」と「ふーん」と
「なるほど!」の三種類が存在していること。
数字から発見が見いだせないデータは「それで?」、
既知の事実や何となく知っているデータは「ふーん」、
知らない事実や発見が導かれるデータは「なるほど!」に類する。
「がっつり!大相撲」はいい意味で「ふーん」に類するので
相撲が好きな方が読んでいて小気味いい雑誌であることは間違いない。
スポーツ新聞を読むのと同じ感覚で楽しめる、
と言えば読み方は理解できると思う。
この二冊は共に読んでいて楽しい部分が存在するが、
確実にターゲットは異なる。
そのため、少し読んだうえで自分にフィットした方を購入されるのが
オススメ、というが私の見解である。
だがこの2冊を読破した後、私は相撲関連全体の書籍に対する
要望を再認識することになった。
続く。
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