持っている奴に持ってない奴がたまには勝つ。石浦が、レベルが急上昇する幕下上位で勝ち続ける凄さを今語る。

石浦が6連勝で、幕下優勝に王手を掛けた。
場所前に幕下上位のレベルが飛躍的に向上している、
という話をしたのだが、
現在幕下上位には叩き上げの力士と、学生相撲出身力士、
そして幕下十両のボーダーラインに位置する力士と
怪我からの復帰を目指す力士いう形で構成されている。
十両から落ちてくる力士も特に力が衰えている訳ではないので
単純に幕下上位レベルも力士が飽和状態となる。
だからこそ今までは十両で踏み止まれていた力士が
幕下と行き来することで定着し切れていない、
という構図なのである。
1場所で4席前後の昇進枠については、
超新星と怪我組である程度取られるので、
地道に力を伸ばしてきた大卒・叩き上げ力士達は
チャンスを掴むのもままならない状態で、
彼らの多くが幕下上位を卒業できずに定着している。
そんな幕下上位定着力士の一人が、石浦だった。
先程私は地道に力を付けてきた力士が十両昇進ではなく
幕下上位に定着するという皮肉な状況について述べたが、
幕下上位でさえ数が限られている。
そのため、上位の中でも生き残る力士と
こぼれてしまう力士が現れるのではないかと予想した。
そして私は石浦が恐らく苦戦するのではないかと考えていた。
川成や芳東、希善龍のような大型力士、
琴恵光や出羽疾風、笹ノ山のようなスピード型力士、
安彦や川端のようないずれは幕下を卒業する実力者、
この中に混じると石浦のスタイルは通じにくいと考えたことが
その理由である。
低い体勢から前みつを取り、左右に揺さぶって体勢を崩し、
更にぶつかって崩して崩して土俵の外に持って行く。
身体が大きい力士が相手であれば
どこかで体勢が戻れば元の木阿弥だし、
スピード型であればそもそも自分の形を作りにくい。
そして実力者に関しては言わずもがなである。
石浦は確かに素晴らしい力士だ。
だが、石浦以外にも素晴らしい力士が
そこかしこに居るのが現在の幕下上位だ。
より素晴らしい力士が先を越すのではないかと
私は考えていたのだが、石浦はその上を行った。
初場所では、いずれも石浦が自分の形を出しているのだ。
拾った勝利は無い。
状態が良いことも有るのだろうが、
これは本当に予想外だった。
幕下上位の中で、石浦は強豪達を相手に自分の相撲で勝つ。
これは彼が今場所好調だからだろうか、
それともこれが今の実力だからだろうか。
それは分からない。
だが本当に魅力的な相撲だし、
明らかに相撲にひたむきであるからこそ
この結果をポジティブな方向で捉えたいと思う。
大学卒業後に一度は相撲界から離れた後で
大喜鵬の活躍に触発されて角界入りした、
再チャレンジ組だからこそ、この道しかない強さが
石浦には有るのだろう。
このようなストイックな姿勢に対して
共感する方は多いのではないかと思う。
「大相撲この一年」の中で、松村邦洋さんが
小兵力士に対する期待を口にされていたのだが、
私は正直それは難しいのではないかと考えていた。
それは大型化が進む中で、相手の圧力を受けるためには
最低限度の体が必要になるからである。
遠藤が一時期150キロまで増やしたのは、
正にこれが理由である。
実は「小兵力士が上位で活躍できない理由」という内容の
記事を書く予定だったのだが、これがお蔵入りして
私は嬉しく思っている。
石浦は体のハンデを乗り越えるために自身が先手を取り、
攻撃を極力受けないという手段を現在磨いている。
そして攻撃を受けたとしてもある程度は耐えられる
身体づくりも同時に進めており、
日に日に少しずつ体が大きくなっている。
こうした努力が実を結んだのだと思うと、胸が熱い。
あと一勝で、十両。
これがゴールではないが、昇進を決めればこれは快挙だ。
121キロの里山が十両で最軽量の中、
103キロの石浦が昇進したら痛快ではないか。
持ってる奴に持っていない奴がたまには勝つ。
こんなシナリオが有っていいと思うのだ。
ただ、新十両になると仮定した時、
新十両に有りがちな大怪我だけは留意してほしい。
そういう仮定で石浦を語れることが、私は何より嬉しい。
あと一番、見届けよう。
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