「マツコ&有吉の怒り新党」で紹介された、トリックスター:宇良。元学生横綱に勝利した彼が見せた、大相撲に於ける可能性とは?

関西学院大学から入門した宇良が、序ノ口で大輝を撃破した。
ご存知の方も多いと思うが、宇良とは昨年トリッキーな取り口で「マツコ&有吉の怒り新党」で取り上げられた力士である。
居反り。
伝え反り。
背中に相手を置き、のけ反ってひっくり返す。
足取り。
相手の足を取って、バランスを崩して倒す。
大相撲でほぼ観ない技を操り、アマチュアの強豪を倒す宇良の取口は多くの人の注目を集めた。そして、大相撲という選択をしたことに驚いた。
面白い相撲ではあるが、アマチュアでの実績と年齢、更に体格を考えると苦戦は必至だ。注目に見合った実績を残せないのではないか。そう考えるのが自然だったからだ。反り技も足取りも、大相撲では観られないのには当然理由が有る。簡単な話で、大相撲では有効に使うのが大変難しい技だからである。
例えば反り技に関しては技の性格上、体格差が有る相手に潜ることは出来ても反って力を伝え、ひっくり返すのは難しい。つまり、宇良の戦略は体重別やアマチュアに於いては有効でも、大相撲の世界で使うには状況が限られているため、今までのスタイルを見直し、大相撲に適応せねばならない。私が大相撲という選択に驚いたのは、こうした事情からだったのである。
全日本大学選手権でベスト16という実績を考えると、実力的には三段目上位から中位。関取を目指すのであれば現状から200人程度ゴボウ抜きしなければならない。大相撲で観られるのは嬉しい反面で、宇良は茨の道を選択したと私は考えていた。
だが、順調に行けば1年程度で関取に成るであろう、元学生横綱の大輝を宇良は破ったのである。しかも、前に出る大輝に対して距離を保ち、土俵際で手繰って体勢を入れ替えての勝利だ。
元学生横綱という肩書からも分かると思うが、アマチュア時代の実績で言えば大輝のそれは輝かしいものである。大学4年の時に、御嶽海に阻まれてタイトルを獲れなかったことから幕下付け出しデビュー資格を得られなかったが、そういう可能性が非常に高かった力士であることを考慮すると、今回の勝利が如何に凄いことか分かると思う。
もしかすると、これは10回に1度の勝利かもしれない。今後の対戦で今回の再現をすることは難しいのかもしれない。それはこれから判明することだ。
ただ、今回の勝利はアクロバティックなものではなく、いわゆる大相撲の枠組みの中で掴み取ったものであることは間違いない。果たして幕下力士の中で、大輝を相手にこのような形で勝てる力士が何人居るだろうか。そう考えるとこの勝利の持つ意味は大きいのだ。
宇良が選んだのは、木瀬部屋。
臥牙丸や徳勝龍、徳真鵬に明瀬山。
見事に巨漢揃いの部屋だ。
小兵の宇良が入門するには手本となる力士が居ない上に、小兵を育成するノウハウが無いことからこの決断に対して疑問を抱いていた。22歳と若くない宇良がノウハウの無い部屋で一つ一つ手探りで方法論を掴むのは大変難しいことであるように思えたからだ。
だが、よく考えてみると毎日のように巨漢と胸を合わせるのだから、自然と大相撲に適応せざるを得ない環境であるとも言える。木瀬部屋は稽古をさせるのではなく、各自の自主性に任せる方針の部屋という話を聞いているため、自ら考え、自ら相撲を構築してきた宇良からすると早く成長出来る環境という観方も有る。
だから、元学生横綱からの勝利は必然だったのかもしれない。宇良にしか出来ない相撲が有るからこそ、先は厳しいかもしれないが生きる道を見つけて欲しい。そしてその道はもう既に見つかっているのかもしれない。
今日の勝利は、そんな光明の見えるものだったように思えるのである。
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