稀勢の里の綱取りを分けるのは、9日目と10日目である。過去の綱取り失敗事例から、今の稀勢の里の状況を検証してみた。

稀勢の里がここまで7勝1敗で来ている。
理想的とは言わない。優勝争いをするうえで、最強横綱たる白鵬が居るにもかかわらず序盤で1敗してしまったのだから。むしろ白鵬が1敗するという状況の中で、辛くも優勝争いに踏みとどまっていると評した方がいいだろう。
1敗するまでの稀勢の里は理想的な相撲を取っていた。受ける相撲は一つの完成形を見せているようにすら感じさせた。だが、敗れた相撲を含めてこの中盤戦は不安定であることは否めない。
先場所は終盤戦に向けて大いに期待させ、とはいえこれまでの経緯を考えると漠然とした不安を抱くという、稀勢の里に有りがちな伏線を張っていたのだが、今場所は少し違う。そう。そこに有るのは漠然とした不安ではなく、確固たる不安だ。
立合いの不安定感が付け入るスキを許し、腰が伸びて後退する。勝ちは拾うが、危ない印象しか抱かない。何故なら、それはこれまでの稀勢の里の負けパターンだからだ。
「負ける気がしない」という表現が有るが、稀勢の里の場合は負ける気しかしない。どこかで負ける稀勢の里の将来を思い浮かべながら、美しく塩を撒く稀勢の里を不安げに見つめる。
だが、私は少し考えてみた。綱取りに失敗する時、もっと早く負けが込むものではないだろうか。むしろ稀勢の里はここまで上手くやれている方なのではないだろうか。
そもそも先人達はいかに綱取りに挑み、いかに散っていったのだろうか。その傾向が分かれば、今の稀勢の里像が見えるのかもしれない。ひょっとしたらそれほど不安に思わなくてもいいのかもしれないし、まだまだ予断を許さないのかもしれない。
そこで私は2001年以降の綱取りについて検証してみようと思う。具体的には、大関たちがいつ脱落したかを敗戦日から検証する。1敗目、2敗目、そして大抵の場合綱取りが絶望的になる3敗目を喫したのは何日目なのか。これをまとめることで8日目に1敗の稀勢の里の現状を分析してみたい。
今回の検証はあくまでも脱落日が遅ければ遅いほど綱取りを継続するという意味で優秀だという考え方なので、最終成績と脱落日は連動していない。集中して優勝争いを継続することを一つの指標として評価しているため、このような検証をしているということをご理解いただきたい。ただ、絶望的になった後で切れることなく土俵に立ち続けることもまた一つの能力なので、最終成績も併記したいと思う。
図1:
2001年以降に綱取り失敗した力士の1敗目、2敗目3敗目を喫した日
この図から、実に面白いことが判明した。
綱取りに失敗したものの、翌場所も綱取りを継続した力士も含めて先場所の稀勢の里を除いて全員が5日目までに1敗しているのである。誰もが序盤の入りに失敗している。むしろ序盤の1敗は失敗と言わないのではないかと思う程だ。
そして、やはり一定の割合でかなり早い段階で綱取りが絶望的になることが判明した。5日目までに綱取りが絶望になった力士は全体の17%、そして10日目までに絶望になった力士は68%だ。7割もの力士が早々と綱取りから脱落しているのが実情なのである。綱取りを賭けた力士といえどその重圧からは逃れられないことがお分かりいただけるだろう。
そういう実情を踏まえたうえで稀勢の里の今場所を見てみよう。彼はもう、8日目を終えている。早々と脱落すること無く、既に綱取り失敗した力士の中で上位3割に食い込もうとしてるのである。既に一定の水準で自分を保てているということが分かる。
この異常な状況の中で、劣勢が多いながら勝てている。それだけで彼の実力と現在のコンディションが立証できているのではないかと思うのだ。
しかし、その後が重要だ。ほぼ全ての力士が10日目までに2敗目を喫している。ここが真のターニングポイントなのだ。ここから先は、先人たちと同じ轍を踏まないための考察である。
私はあくまでも綱取りに失敗した力士の中で稀勢の里を比較してきた。だが、目指すべきはそこではない。私が失敗事例だけを振り返ったのはあくまでも稀勢の里の実情を相対的に評価したかったからなのである。
さておき、綱取りに失敗する力士の殆どが中盤戦で優勝争いが厳しくなる2敗目を喫している。ここで負けるか、それとも生き残るか。この2日を如何に凌ぐかで、その未来が別れるということがお分かりいただけたと思う。
ましてや相手は白鵬だ。稀勢の里の比較の対象は、どう転んでも白鵬なのである。だからこそ、相対評価で済むのは大関としての優秀さを測るためのものであり、そこから先はいかに白鵬を倒すか。この1点に集約されるのである。
ここから先の2日間は、過去の大関との比較をするためのものだ。この闘いを乗り越えられれば、稀代の横綱:白鵬と闘うための舞台に立つための資格を獲得出来る。
稀勢の里が過去の名大関と比較して優秀なことは、大関在位時勝率7割という数字からも立証されている。この数字を叩きだした者は過去全て横綱に昇進している。そんなことは多くのファンが知っている。今日の‭検証に於いても、綱取りをする上で悪いコンディションでないこともお分かり頂けたと思う。
稀勢の里にとって名大関という評価は有り難くないものだと思う。横綱に成れる力士に対して名大関というのは確かに良くない表現だ。稀勢の里への過小評価を揺り戻す意味で相対評価が必要な時も有るからこそ、皮肉なことに名大関という評価を得ることになったわけだ。
だがもう、相対評価は要らない。
勝負の2日間でそれを立証する結果が出ることを祈りたい。
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稀勢の里の綱取りを分けるのは、9日目と10日目である。過去の綱取り失敗事例から、今の稀勢の里の状況を検証してみた。” に対して1件のコメントがあります。

  1. スイム より:

    貴方の記事は中途半端である。
    もし検証するのであれば成功事例も検証し
    両面から検証すべきであります。

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