山根千佳さんが教えてくれたこと。やっぱり相撲は、面白い。

以前「大相撲ぴあ」で相撲アイドル:山根千佳さんのインタビューを担当した時のこと。
私は、敢えて嫌な質問をした。
何故殆ど全ての力士と面識があるのに、わざわざ出待ちするのか?と。
相撲ファンは大きく分けて3種類存在している。力士と接したい人、相撲を斜めから観たい人、そして、相撲を語りたい人だ。山根さんは力士と接したい人であり、私は相撲を語りたい人だ。この分類は横断することも有るので、他の要素を持ち得ている場合も多いが、私は力士と接することに対してそれほど興味が無い。
だから、力士と接したい方のことが分からなかった。
私からすると、力士は尊敬する対象であり、憧れの対象であり、そして畏怖する存在でもある。私のために時間を取っていただくことなど、おこがましいと考えてしまうのだ。「力士とは、遠くにありて想うもの」というのが私のスタンスだからこそ、彼女のスタンスについて納得しないかもしれないが、理解してみたいと感じていた。
回答によっては、彼女の化けの皮をはいでしまうかもしれない。そして、私の意図を悪意をもって受け止められてしまうかもしれない。不安は有ったが、対談の流れが止まったところで私は彼女に聞いてみた。すると、実に面白い答えが返ってきた。
「私からすると、なんでみんな毎回やらないの?っていう感じです。」
「だって、一度として同じときは無いじゃないですか。」
確かにその通りだ。
力士と接していても、状況が異なれば話す内容も変わる。力士が変わることも有るし、自分が変わることも有る。立ち姿も、会話も、一度として同じことは無い。だから出待ちが面白いのだとすれば、非常に腹落ちする回答だと私は感じた。
私はこの時、山根さんが相撲のビジネスファンではないと確信した。相撲ファンの若い女性が少ないことから、女性にとって相撲が好きだということはビジネス的に利用されるだけのことかもしれないと感じていただけに、本当に好きでなければ得られない回答に対して嬉しく思った。
そしてあれから1年近く経過して、私はこの言葉をもう一度振り返った。そう。私も山根さんと同じなのだ。
私は相撲に興味が無い方と話していると、何故相撲が好きなのかと聞かれる。そこで私はいつも「物事を好きになるのに理由は無い」と答えている。だが、彼らからするとそういう私のことが分からないので、少数派としての趣味を持つ私に対して東京で場所が有ると観に行くのか、質問する。2~3回は観に行くと言うと、その後は完全にクレイジー扱いだ。
年に90日も行われている相撲を、なんとかの一つ覚えのように昼の1時からテレビで観る。そして高い金を払って、変な土産物を買い漁りながら、合わせて0.3トンの闘いを観る。それも、それを15日の中で数日である。彼らが私を見る目は、私が出待ちする山根さんを見る目と同じだ。そしてそれに対する回答も、そっくりそのまま山根さんと同じだ。
今年初めの見どころは、琴奨菊だった。
3月からは稀勢の里になり、11月には豪栄道が主役である。
序盤で波乱が起きることも有る。
中盤では際どい組み合わせでふるいに掛けられる。
終盤には直接対決が待ち受けている。
更には、見どころは幕内総合優勝だけではない。
新進気鋭の若手も居れば、上位を脅かす業師も居る。
そして、意地を見せるベテランも居る。
下を見れば、夢に向かって最後の闘いを繰り返す幕下力士も居る。
自分に見切りを付けられずに人間臭い闘いを繰り返す力士も居る。
相撲に必死に成り切れない力士も居る。
一日たりとも同じ相撲は無い。
土俵を観れば、毎日力士の数だけドラマが展開される。
だから、相撲は面白いのである。
九州場所は一体何が有るのか。
新たな歴史の扉が開くのか。
それとも、日常が繰り返されるのか。
何が起きても、それがドラマだ。
今年最後のドラマに喜び、ドラマに泣こう。
それが大相撲を観るという行為なのだから。
◇おしらせ◇
11月27日に東京近郊で相撲観戦会を開催します。
今回は特に縛りは設けませんので、参加をご希望の方は詳細を案内いたしますのでプロフィール欄を参照の上、メールいただけますようお願いします。
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