現実に打ちのめされながら大岩戸に声援を送る行為こそ、相撲の醍醐味である。

早いもので、当ブログ開設から6年経過した。
「幕下相撲の知られざる世界」は、友人のインターネットラジオで幕下の面白さを語ったところ、記録に残すべきだと言われたことから何となく始めた相撲ブログである。吐合に興味を抱き、小窓から半笑いで幕下を観ていたのが原点なので、当初は書きたいことを書き終えたらもう何も残らないのではないかと感じていた。
事実、当時の私は相撲をそれほど熱心に観ていた訳ではなかった。夜勤前に幕下を、やっていれば幕内上位を、その程度の関心しか抱いていなかったのだ。だから、書きたいことを書き切るまでは突っ走ろう。そこから先は、その時考えよう。見切り発車でスポーツナビに登録したのである。
だが私はまだ、このブログを続けている。少ないながらも定期的に開設される相撲ブログが良くて半年、短くて1場所で消えていく中、静岡新聞に寄稿するところから始まって、相撲アイドルと相撲芸人の対談記事を担当し、西岩親方のインタビューを敢行した。AMラジオで本場所の見所を語り、大相撲がテーマのトークライブを主催し、果ては日本テレビのクイズ番組の監修を行なった。身に余る話である。
結局私は、相撲が好きなのだ。
そんなことを、大岩戸が思い出させてくれた。
今場所の大岩戸は、1勝4敗。
十両を目指す絶好のチャンスは、ひとまず潰えた。
個人的に面識が有り、同世代で、ナイスガイで、相撲が誠実なのだから、応援しないわけにはいかない。理屈は色々と付けられるが、感情が応援したいと言っているのだから、それ以上の理由は無いだろう。人が誰かに惹かれ、手前勝手な思い入れを抱く時はこんなものである。
今場所私は、大岩戸の十両挑戦を心から楽しみにしていた。だが、声援も空しく、星は上がらない。自分の相撲が取れないどころか、相手に相撲を取られてしまう。何も出来ずに敗れてしまう。
大岩戸が弱いのではない。
大岩戸に何もさせない相手力士が強いのだ。
そして、相手力士にも背負うものが有るのだ。
大成道も。
希善龍も。
白鷹山も。
そして、常幸龍も。
大岩戸が今場所敗れた相手は皆強い意志を持って相撲に臨んでいる。大成道と白鷹山は、初めての十両が目前だ。希善龍は、年収1000万円と100万円を行き来する力士だ。常幸龍は、大怪我からの復帰を目指している。
そういう彼らを倒さねばならない。
大岩戸の幸せを祈り、それが実現すれば素晴らしい。
だが大岩戸が勝てば対戦相手が割を食うことになる。
だから私は好きな力士の幸福を一方的には求められなくなっていた。しかし、大岩戸の幸せが実現するという、実に手前勝手なハッピーエンドを望み、先場所実現してしまった。たまにはそんなことが有っても良いのではないかと感じていた。
ただそれは、たまにしか実現しないことなのだ。
現実の厳しさに打ちのめされながら、厳しさの中に生きる者の強さに惹かれる。そして、その強さがたまに報われ、殆どの場合玉砕する儚さが私は好きなのだ。厳しさに直面してああ、そうだよなぁとため息を付くことも、報われて喜びを爆発させることも、どちらを取っても私にとっては相撲を見ることなのである。
美しい物語もいいだろう。出来過ぎた物語も、最近ではYouTubeを見ればいくらでも出てくるだろう。簡単に名シーンが手に入る時代だからこそ、最高の喜びばかりを求めてしまうのは仕方ないことだと思う。
だがそうした喜びは、過程としての苦難を見続けているからこそ尊いのではないかと私は思う。むしろ厳しい現実に打ちのめされることも含めて経験できたからこそ、私は相撲が楽しくて仕方ないのだ。
如何に勝つか。
如何に敗れるか。
如何に闘うか。
如何に逃げるか。
相撲の面白さはそういう人間模様が土俵上で全て出てしまうところではないかと思うのだ。これは吐合さんを見ながら気づいた、私の原点とも言うべき見方である。
大岩戸を見ながら、相撲の楽しさの原点に辿り着けたことは幸せなことだと思う。ただ、厳しさに直面する苦味を相撲の魅力と捉えながらも、最終的には報われて欲しい。たとえ相手が背負っていようと、素晴らしい相撲を取ろうと、大岩戸も素晴らしい人間であり、力士である。
そういう葛藤に揺れながら、目を覆いながらも結局見てしまうのが、相撲を見ていて一番楽しい時なのではないかと思う。大岩戸はそういうことを思い出させてくれた、恩人である。
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