スポーツナビブログ終了。幕下相撲の知られざる世界の「終わりの始まり」。

2011年。
私は、どん底だった。
本業で管理者に就任したものの、待ち受けていたのは深刻なパワハラだった。来る日も来る日も怒られた。全ては気分に振り回されていた。ホワイトデーに何を送るかという理由で叱責を受けた日もあった。毎日が憂鬱だった。
そんな仕打ちを毎日受けていれば、私生活も荒れる。眠れない。つい日中の叱責を思い出してしまう。失敗の記憶は心にも体にも深く刻まれているので、起きてしまう。そして、考えてしまう。考えるまいとすればするほど、悪いことばかりを考えている。そして、悪い記憶に疲れ果ててようやく眠りに就く。一度眠りに就くと、今度は起きられない。体が動かないし、頭が全く起きてこない。体が起きることを拒絶するのである。
今日もまた、怒られるのか。
私は悪いのだろうか。
悪くないはずだ。
だが、私は毎日怒られている。
私は間違っているのだ。
間違っていなければ怒られることはない。
だが、何が間違っているのだろう。
それが分からない。
分からないから怒られる。
怒られないように振る舞う。
上長を避ける。
だが、避けることが気にくわない。
叱責される。
次は避けないようにする。
だが、避けないことで何かが勘に触る。
叱責される。
こんなことが毎日続いた。
新米管理者の責任感が事態を悪化させていた。
逃げられない中で、私は助けを求めた。
だが、誰も助けてはくれなかった。
助けを求めても無駄だと知り、私は救いを求めた。
そんな時、見ていたのが幕下の相撲だった。
正確には、吐合を見ていた。
名もなき男達の闘いを、安全圏から楽しんでいた。
転機は突然やって来た。
ある日、友人がネットラジオを放送するので出てほしいそうなのだ。30分の小さなコーナーで何か話してほしいというので、幕下の相撲なんてどうだろうと訊ねると、困惑しながらも了解してくれた。
気がつくと私は、放送の中で1時間話していた。放送終了後も話し続け、最終的に1時間半話していた。友人は私に、これは記録するべきだと勧めた。
では、ブログを書こう。文章を書くことは好きだ。でも、どこで書こうか。多くの人が読んでくれるところが良い。ならば、抜群に面白い「プロ野球死亡遊戯」と同じ土俵で闘ってやろう。スポーツナビ。いいじゃないか。
2011年7月。
スポーツナビブログ「幕下相撲の知られざる世界」はこうして誕生した。
私は、毎日のように記事を書いた。書いている時は、パワハラを忘れられた。そして、記事を書けば毎回数千人が見てくれた。吐合の話を面白半分に書いているのに、驚くほど多くの人が私の記事に目を通してくれた。
ツイッターのフォロワーは増え続けた。その中には力士も居た。ライターも居た。そして、テレビで見知った有名人も居た。
ブログを書くことで、私は救われていた。ブログが無ければ、そこには絶望しかなかったのだから。スポーツナビブログのアクセスの多さ、そして反響の大きさは刺激的で、私はブログにのめり込んでいた。
吐合Tシャツを作った。
オフ会を開いた。
そこで知り合った友人と配信を行った。
もはやブログであってブログでなかった。
幕下も書くが上位も書く。いやげものもスナック愛も当日自由席も、全て私にとっては大相撲だった。浴衣を作り、川崎フロンターレのゴール裏で白鵬マスクを被って声を枯らした。やりたいことは全てやる。それが「幕下相撲の知られざる世界」だった。
パワハラの問題は2年半続いた。一定の道筋を作ったところで、2013年に当時の会社を退職した。転職して、全てリセットされた。
ここからは、一つ一つが刺激の連続だった。
ワールドカップ期間に「プロ野球死亡遊戯」とコラボ企画を行った。2015年には静岡新聞の巡業記事を書いた。直後に「大相撲ぴあ」の山根千佳とキンボシ西田の対談記事を担当した。そして、スポーツナビの企画で西岩親方のインタビューを担当した。
週刊フラッシュ。
現代ビジネス。
SBSラジオ出演。
サンデーステーション出演
日本テレビ相撲クイズ監修。
そして、ビジネスジャーナル。
2017年は形になっただけでもこれだけある。形にならずに立ち消えたものは、数知れない。自称幕下相撲評論家、吐合啓蒙家は気がつくとスポーツライターになっていた。
そして遂に、スポーツナビブログがサービスを2018年1月に終了することが決定した。
スポーツナビブログという場を与えてもらい、記事を書き、その記事が新しいフィールドでのチャンスを創出した。全てはスポーツナビブログから始まったのである。
スポーツナビブログという多くの方が読む場を失うことによってこれから先チャンスを喪失することは大変な痛手だ。私のような形でチャンスを得られる人が居なくなる可能性もある。これ残念なことだ。だが何より、私を救ってくれたスポーツナビブログという存在が失われることが何よりも悲しいのである。
パワハラという救いようの無い災厄も、ブログという居場所が有ったからこそ2年半も耐え忍ぶことができた。もし無かったら、私は一体どうなっていたのだろうか。考えただけで恐ろしくなる。奇跡のようなタイミングで、奇跡のような場が与えられていたからこそ、私は今両国で結婚生活を送れている。
私はスポーツナビブログを離れねばならない。もしかすると、今がそのタイミングだったのかもしれない。ブロガーではなくスポーツライターになれたのが、2017年の今なのだから。だとすると、ここまでこのサービスを継続してくれたこと。そのことに私は感謝すべきなのかもしれない。
スポーツナビブログとしての「幕下相撲の知られざる世界」は、近日中に終わりを迎える。だが、引っ越しした後の「幕下相撲の知られざる世界」はこれから始まる。そう。これは終わりの始まりなのだ。
◆トークライブのお知らせ◆
12月2日18時より錦糸町丸井のすみだ産業会館でトークライブ「第4回幕内相撲の知ってるつもり⁉︎」を開催します。今回のテーマは「数字で振り返る、2017年の大相撲」です。今回は土曜日に行いますので、普段来られない皆様もふるってご参加ください。お待ちしております。
なお、参加ご希望の方は以下の予約サイトよりご登録下さい。
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