もう我々は、稀勢の里には期待しない方が良いのか?前編
稀勢の里に対する風当たりが強い。
白鵬があと2日を残して優勝という事態を受けて、
場所として見るべきポイントが無くなったこと。そして
相撲界に漂う閉塞感に対するスケープゴートとして
期待の高い稀勢の里がなかなか結果を残せないことに
不満の声を挙げている、ということだろう。
ここで最近気になるのが、あくまでも私の周囲だけなのだが
もう稀勢の里には期待しない、という声が出つつある
ということである。
好きの反対は無関心、という言葉が有るが、
可愛さ余って憎さ100倍ではなく、
相手にしないことでイライラを防ぐという
方法を取ろうとしているのだ。
確かに彼の潜在能力を思えば、白鵬や
好調時の日馬富士に勝てないことや
平幕への取りこぼしが未だ絶えない現実に
こうした対処をしたくなる気持ちもわかる。
だが、待ってほしい。
稀勢の里は本当に諦めるべき力士なのだろうか?
そもそも彼は大関になってから1年足らずの力士である。
確かに大関獲りまでの間、足踏みが長かったことは否定できない。
だが1年前まで関脇だった力士に短期間で
横綱を圧倒する成長を要求するというのは酷ではないか。
まずは彼が大関としてどの程度の実力を持っているかを
検証し、我々が彼に対してどのようなレベル感で
期待すべきかを明確にしていこう。
過去に当ブログで紹介したデータを元に稀勢の里の
立ち位置を考察する。
◆データ①
戦後の大関(横綱昇進者を除く)在位期間の勝率
(2012年05月24日現在)
力士 勝 負 勝率
鶴竜 8 7 53%
稀勢里 31 14 69%
琴奨菊 38 22 63%
把瑠都 122 58 68%
日富士 184 105 64%
琴光喜 141 104 58%
琴欧州 325 219 60%
栃東 207 125 62%
魁皇 524 328 62%
雅山 57 58 50%
武双山 186 148 56%
出島 100 71 58%
千大海 515 345 60%
貴ノ浪 353 194 65%
霧島 139 76 65%
小錦 345 197 64%
北天佑 378 245 61%
朝潮 294 203 59%
若島津 356 219 62%
琴風 212 110 66%
増位山 44 44 50%
旭國 168 122 58%
魁傑 70 65 52%
大受 30 32 48%
貴ノ花 422 278 60%
大麒麟 189 132 59%
前乃山 67 56 54%
清國 233 147 61%
豊山 301 201 60%
栃光 188 131 59%
北葉山 250 179 58%
若羽黒 102 78 57%
琴ヶ濱 185 152 55%
合計 6764 4465 60%
平均勝率が6割ということは、つまり
毎場所9勝6敗することが大関として
最低限求められるラインということになる。
ちなみに稀勢の里の大関昇進後の成績は、71勝34敗。
勝率で言うと、67%。
1場所辺りの期待値は、10.1勝。
大関在位期間という括りなので、
過去の力士で言えば晩年の成績が含まれているため
少し上乗せして考える必要はあるが、
大関としては優秀な部類なのである。
続く。
ここまでの稀勢の里は、大関として優秀な部類・・・?
すごく違和感があります。
まあまあの成績として君臨している、しかし、綱取を目指す若い大関としては物足りない・・・
というイメージしかないです。
上位陣のなかで数少ない日本人ということで、すぐさま優勝候補に名前を挙げられるほど実力がついているとは思えません。
というのは、いつも負け方は同じで進歩が見られない、
解説者達からも「立会いが不十分、意図が見えない」「腰が高い」「脇が甘い」といつも指摘されていることは同じでここ数年、完全に克服したというところは1つもありません。
横綱2人を左からのおっつけで吹っ飛ばした勝ち方は痛快で、期待してしまうのは無理もないですが、冷静に見ると「下位に取りこぼさない型」というものにも進歩が覗えないです。
「中卒叩き上げの力士が外国人出身力士を薙ぎ倒す」という光景をみたい気持ちはわかりますが、冷静に見ると厳しいと思います。
稀勢の里自身は、一生懸命にやってると思いますが、指導者の問題か、本人の意識の問題か、なかなか殻を破れないのに歯痒くてしかたありません。
ウエイトトレーニングやただ強くぶちかますだけの稽古ではなく、「技量」が不足しているのだというところに気付いて、いろいろ試してみるなど試行錯誤を繰り返して、早くコレだというものを身につけてもらいたいです。
>ごさん
コメントありがとうございます。
後述しますが、おっしゃる通り工夫が無いことや
進歩が無いことが原因で、
苦手力士が克服できない、という問題が起きています。
だから数字として優秀といわれてもピンと来ないし
数字を聞くと「なら尚更改善できるじゃないか!」
ということにも繋がります。
そうすると、逆に期待は出来てしまうんですよね。
期待だけは…
だから観ていてイライラするんですが。
稀勢の里の場合、「せっかく横綱になれそうなのに才能の無駄遣いっぷりが歯がゆい」と叩かれているわけで、『戦後の大関(横綱昇進者を除く)在位期間の勝率』なんてデータを使って「横綱になれなかった大関の中では比較的優秀」という話をしても、あまり意味がないのでは。
>ハム太郎さん
コメントありがとうございます。
「横綱になれる能力が有りながら、歯がゆい相撲を取っている」
その通りです。
ただ、その前段階としてまずは「横綱になれる能力が有る」
という部分を検証したかったということです。
「歯がゆい」という部分については別のパートで
語っておりますのでそちらをご確認いただければ、
と思います。
>「横綱になれる能力が有る」という部分を検証したかった
えーと、そういう目的であるならば「横綱になれた力士の大関時代の成績」と比較しなくちゃいけないわけで、「横綱になれなかった力士」との比較をしても説得力がない、と思うのですが。
確かに横綱との比較は面白いですね。
機会を作ってやってみたいです。
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まずは彼が大関としてどの程度の実力を持っているかを
検証し、我々が彼に対してどのようなレベル感で
期待すべきかを明確にしていこう。
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本文中にも有りますが、最初はこういう動機で
データ比較をしてみたかったものですから。
まあ、「勢稀の里に横綱昇進は期待しないけれど、大関として考えれば立派な成績」という結論になるのであれば、同意します。