豪栄道の隠れた強さは、ミスを勝利に結び付けるところである。ミステイクヒッター:豪栄道は、初春に波乱を巻き起こすのか。
白鵬が10連勝で終盤戦を迎える。
様々な伝説に彩られた横綱が、今場所も勝利を重ねて
遂にここまで来た。
その伝説を育む要因は様々だ。
横綱昇進後に休場の無い、健康。
48場所連続2桁勝利の安定感。
そして、32回優勝の勝負強さ。
こうした強さに関してはもはや言いつくされた感も有る。
圧倒的な数字を並べただけでも、本人を目にせずとも
その凄さが伝わるのが白鵬の凄さである。
だが今場所の10連勝は、実は白鵬のあまり語られない
強さに支えられたものである。
土俵際で勢に交わされながら何とか体を残した、5日目。
ラフな闘いの中で隙を突かれる中スピードで上回った、6日目。
そして相手の形を許しかけたところで持ちこたえた、7日目。
これを見て何か気付かないだろうか。
つまり、劣勢からの立て直しが非常に上手いのである。
白鵬の圧倒的にして安定感の有る成績は、
知らない人からすると寄せ付けぬ強さによって
齎されると思うかもしれない。
事実、白鵬は相手に何もさせずに勝つ強さも備えている。
だが、これだけ圧倒的な力士であれば当然、
他の力士と比べるとピンチの数が絶対的に少ない。
つまり、有事で闘う実践的な訓練が足りていないのである。
ミスをしないことは一つの才能だ。
だが、ミスをした後ですぐに最適な対処をすることは
ミスをしないのとは全く別の才能と言えるだろう。
前述の3つの場面を勝利にこぎつけられる力士が、
一体どれだけ居るのだろうか。
白鵬は負けを勝ちに出来る力士でもあるのだ。
相撲は競技の性格上、15日間の中で良い日が有れば悪い日も有る。
悪い日に勝ちを重ねられることが違いを産み、
それが優勝回数として反映されている。
安定して勝ち、
劣勢でも勝ち、
勝負どころでも勝つ。
このような力士にどのように挑めばよいのだろうか。
だが、そんな白鵬に対抗できる力士が居る。
豪栄道である。
白鵬の今場所の強さたる、劣勢からの立て直し。
対する豪栄道の強さは、この真逆のものだ。
そう。
ミスを勝利に結び付けるのである。
豪栄道が最近白鵬に勝利した場面を思い出してほしい。
白鵬がミスをする。
隙を突く豪栄道。
それでも信じられないような体勢から逆襲する白鵬。
その信じられないような体勢の無理を突く豪栄道。
更に無理な体勢で勝ちを目指す白鵬。
崩れながらも最後の一押しを仕掛ける豪栄道。
とまぁ、こんな形である。
白鵬が凄いのは、全く信じられないような体勢から逆襲し、
気が付くとミスに付け込もうとする力士を出し抜いて
逆転してしまうところに有る。
つまり、劣勢の白鵬を更に追い込むのは
想像以上に難しいことなのである。
だからこそ善戦はしても、勝利には結び付けられない。
だが、豪栄道にはこれが出来るのである。
不思議なことにここ最近白鵬は、
豪栄道が相手の時によくミスをする。
ミスに付け込む強さ。
これは実は才能で、野球で言うとホームランバッターに
求められる能力だったりする。
メジャーリーグでは失投を逃さず捉える選手のことを
ミステイクヒッターという呼び方をする。
じっとこらえて相手のミスを待ち、
少ないチャンスに全てを賭ける。
だからこのようなタイプの選手は打率は低いが
試合を決める一打を打つことが多い。
かなり昔のマーク・マグワイアが70本ホームランを打った時、
あまりにも真ん中のボールが多すぎて
そのことが驚きだったのだが、松井秀喜が移籍した後で
それがどんなに凄いことかを思い知らされることになった。
真ん中のボールを捉えられずに渋い顔をする、日本最強打者。
マグワイアがあれほど簡単なボールをたくさん捉えられるのだから
当然松井もいけるのではないか?と想像していた私の目論見は外れ、
松井秀喜は中距離打者として歩むことになった。
競技の違いは有れども、難しさとその才能の重要性は変わらない。
考えてみると、豪栄道は稀勢の里と相性が非常に良いが、
この対戦の時稀勢の里は精彩を欠いた結果、
豪栄道に敗れているケースが多いのである。
少なくとも稀勢の里は全力を出し尽して豪栄道には敗れない。
私は、明日の取組の予想をする。
ミスが無ければ、白鵬。
ミスをすれば、豪栄道。
これは、想像以上に白鵬にとってはプレッシャーである。
ミステイクヒッター:豪栄道の強さを、しかと目撃せよ。
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コメント失礼します。
白鵬の強さの真髄部分について、なるほどと納得させていただきました。
ただ、後半のマクガイヤの部分ですが、彼の本塁打はステロイド使用によるもの、というのが一般的な評価となっています。
なので白鵬の凄さとはチョット違うかな、と感じました。。。