柏戸は大鵬と並び称するべき存在か?日馬富士は横綱として合格点か?過去の横綱の成績から、横綱としての合格ラインを改めて考える。

今年もあと4日である。
今年亡くなった著名人の方の特集を目にする機会も多く、
その中で大鵬というのは一際目を惹く存在である。
大鵬と言えば、柏戸との柏鵬時代を築いたことで
有名なのだが、大鵬の32回の優勝と比較すると
柏戸の5回というのは、並び称するには
成績的には無理があると言わざるを得ない。
それほど大鵬が凄かった、ということを
逆説的に語ることになるのかもしれない。
もしかすると、今の時代に柏戸が居たとしたら、
日馬富士並の批判に晒されていた可能性が有る。
何度も語っていることではあるが、
相撲というのは印象で論じることが多く、
論拠が無いために実像とは異なる批判や賞賛をしていることも有り得る。
では、横綱としての及第点というのは、
結局どのラインなのだろうか?
1場所で何勝すればよいのか?
12勝?
13勝?
1年で何場所優勝しなくてはならないのか?
1場所?
2場所?
そこで、知っている人は知っていると思うが
柏戸以降の力士の成績を分析し、
横綱としての及第点を検証してみたい。


◆図:柏戸以降の横綱の勝率・優勝率・優勝+準優勝率・休場率
※注:成績は横綱時代のみに限定する。
力 士 勝率 優勝 優+準優 休場
柏 戸 73.5% 08.5% 29.8% 20.2%
大 鵬 85.8% 50.0% 63.8% 15.8%
栃ノ海 59.6% 05.9% 05.9% 32.9%
佐田山 74.6% 15.8% 42.1% 11.6%
玉の海 86.7% 40.0% 90.0% 00.0%
北富士 74.6% 25.9% 33.3% 15.8%
琴 櫻 66.0% 12.5% 25.0% 16.7%
輪 島 76.6% 25.5% 42.6% 12.3%
北の湖 81.1% 34.9% 58.7% 11.5%
若花2 75.1% 10.7% 46.4% 15.8%
三重海 70.5% 25.0% 37.5% 27.8%
千富士 84.8% 52.5% 71.2% 16.7%
隆の里 69.3% 13.3% 26.7% 35.4%
双羽黒 69.2% 00.0% 33.3% 10.8%
北勝海 76.7% 20.0% 40.0% 27.6%
大乃国 66.2% 04.3% 13.0% 32.2%
旭富士 71.0% 11.1% 33.3% 25.9%
  曙 78.0% 16.7% 41.7% 23.1%
貴乃花 81.3% 30.6% 55.1% 27.6%
若花3 61.6% 00.0% 18.2% 36.5%
武蔵丸 76.3% 25.9% 40.7% 28.9%
朝青龍 83.7% 54.8% 69.0% 12.0%
白 鵬 89.6% 63.2% 94.7% 00.0%
日富士 74.3% 25.0% 25.0% 00.0%
平 均 78.7% 29.7% 49.6% 18.2%
稀勢里 71.6% 00.0% 33.3% 00.0%
まずは、勝率ラインである。
これは数字のマジックなのだが、
勝率で語るとこの平均を上回っているのは24力士中
大鵬・北の湖・玉の海・千代の富士・貴乃花・朝青龍・白鵬の7名しか居ない。
これには大きな理由が有る。
大横綱達は在位期間が非常に長く、圧倒的な成績を残す。
そして、相対的に順位の低い横綱は成績が上がらないので
在位期間が短い。
そのため、大横綱達の残した成績比率が
全横綱の中で非常に高く、この平均値をそのまま
要求水準とするのは少し無理が有る。
24力士中勝率12位の力士の水準を目標と考えると
二代目若乃花の75.1%が妥当と考えるのが自然だろう。
15日の75%。
すなわち、11.25勝。
11~12勝というのが、数値を用いた上で横綱に求められる水準なのである。
次に、優勝ラインを考える。
これについても大横綱達がラインを引き上げているため、
平均値よりは中間力士の成績をそのまま引用する方が
妥当なラインと判断する。
24力士中12位。
これは実は、日馬富士のラインである。
優勝確率:25%。
1年に1~2回程度。
2年で3回。
ただし、優勝というのは大横綱と一緒であったり
同程度の実力を持った力士が複数存在していたりという
外部的な要因が作用することも多い。
そこで、場所中で2番目の成績を準優勝と定義し
この成績についても要求水準を明らかにしたい。
12位の力士は、武蔵丸。
40.7%というのが、このラインとなる。
1年だと2~3回といったところか。
これらを柏戸に当てはめると、勝率は平均的だが、
大鵬が同時代に居たことから優勝回数は伸びなかった
不運の横綱という評価に成るのではないかと思う。
そして、もう一つの興味として日馬富士なのだが、
彼もまた1場所の成績的には横綱としての
要求水準は満たしているが、
不安定さゆえに優勝に関与できていないことが
横綱としての課題だと言える。
とはいえ、他の横綱が引退前の衰退期の成績が反映されていることを
考慮すれば、日馬富士はもう少し成績を伸ばせれば
数字の上では横綱としては十分というのが今回の結論である。
余談だが、稀勢の里の大関としての成績も参考資料として
掲載している。
横綱としては勝率も足りないし、優勝も出来ていない。
ここ4場所の成績を保てれば良いのだが、
過去2年程度の成績では難しい。
とりあえず持ち帰っていただきたいのは、以下の二つ。
・12勝以上平均的に出来ている横綱は、24人中7名のみである。
・日馬富士の勝率は横綱としては平均的である。
これを以ってどのような感想を抱くかはその人次第だが、
考慮の材料にしていただければ幸いである。
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と思います。よろしくお願いいたします。
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※12/29追記
柏戸の優勝回数を4⇒5回に訂正しました。
ご指摘ありがとうございました。

柏戸は大鵬と並び称するべき存在か?日馬富士は横綱として合格点か?過去の横綱の成績から、横綱としての合格ラインを改めて考える。” に対して14件のコメントがあります。

  1. ういろう より:

     「大鵬と柏戸の関係は、リアルタイムで見た人間にしか理解できないよ」
     そう言い切ってしまっては、《柏鵬時代》の両者の拮抗を、時代を超えて共有することはできません。それでは、「相撲を見る、語る楽しみ」が、ずいぶんと狭いものになってしまい、もったいないではありませんか。
     「数字」からは、例えばこんなことが見えてきます。大鵬・柏戸、両者の対戦成績は、大鵬の21勝16敗ですが、最後の大鵬5連勝を除けば、16勝16敗と全くの互角です(昭和42年5月場所まで)。すでにその時点で、大鵬の優勝は25回を数え、柏戸はわずか4回に留まっていたにもかかわらず。
     全盛期の大鵬と、互角に戦うことができた力士は、他にいません。優勝回数や連勝記録とは関係なく、またそこまでの《星取り》とも無関係に、相撲ファンは柏鵬戦に胸を躍らせたことでしょう。まさしく《両雄》と呼ばれるにふさわしい二人だったのだということが、より浮き彫りになってくるのではないでしょうか。
     nihiljapkさんは、「数字の羅列・比較」だけでは、相撲の魅力を十全に組み尽くすことはできないということを十分にご承知の上で、「冷静に数字を分析してみることにも、おもしろさの種があるよ」ということを、おっしゃっているのだと思います。
     「数字の羅列・比較」だけで相撲を語るような方が、長く幕下に低迷している一力士に熱い思いを持ち続けられるでしょうか。
     数字だけではわからないものがある・・・・・・それを本気で否定する人は、まずいないと思います。
     でも同時に、「数字を調べ直してみて、初めて見えてくることもある」というのも、また真実の一つの面ではないでしょうか。
     
     「相撲とは、そういうもの」だと、私は思います。

  2. 臼田 より:

    非常に面白いデータですね!日馬富士はデータ上では師匠を超えているのですね。それだけみれば、圧倒的強さの白鵬を前にして横綱としての務めは十分に果たしているのでしょう。○○時代と2横綱を称することも多いですが、振り返ってみれば独りの横綱の圧倒的強さの陰に埋もれていた横綱も多かったと思います。その時代時代にヒーローは複数存在しえないのでしょう。

  3. ういろう より:

    はじめまして。
     標準的な横綱勝率を、平均値ではなくて、力士ごとにみた《中間値》で評価するという考え方は、なるほどと思いました。
     日馬富士の場合、比較の対象が白鵬、あるいは勝敗だけとってみれば間違いなく強豪横綱だった朝青龍となって、印象的にはだいぶ損をしていると思います。冷静に数字を比べてみれば、勝率で言えば北の富士・佐田の山(いずれも勝率74.6%)とほぼ同程度で、この両横綱を「ダメ横綱」と断ずる人は少ないはずです。
     白鵬という横綱の水準の高さは、未だ「晩年」に至っていないということを差し引いても、驚異的です。比較の対象を玉錦以降に広げてみても、双葉山(横綱勝率88.2%)を上回って一位であるのを始め、38場所在位して未だ休場ゼロで、これは北の湖(新横綱から42場所連続皆勤)につぐものです。
     また、「一場所あたりの金星配給」は、0.211個で1位(2位は玉の海0.3個)、「負け数に占める金星の割合」は13.6%でこれも1位(2位は玉の海15%)となっていて、「負けない・休まない・取りこぼさない」という点で、圧倒的な大横綱と言えると思います。
     日馬富士に話を戻せば、一場所あたり1.286個の金星を配給しています。これは玉錦以降39人の横綱中ワースト9位(柏戸以降ではワースト5位)となっていて、平幕への「取りこぼし」をどう減らしていくかが、今後横綱としての平均的な水準を保っていけるかどうかの鍵になるのではないでしょうか。
     最後に余談ですが、「黒星に占める配給金星の割合」が一番高いのは、なんと双葉山で、横綱在位17場所中に喫した24敗のうち、半分以上の14敗が平幕相手の黒星です。本当に意外な数字でしたが、全体勝率の高さを考えると、「ある程度の対戦を重ねた役力士にはほとんど負けなかった」ということの裏返しかと思われ、感じ入った次第です。
    長文を失礼いたしました。

  4. あひる より:

    こんばんは。お久しぶりです。
    自分も柏戸関の現役時代を知らないので何とも言えませんが、大鵬関との対戦成績を見ても、余り弱い横綱という印象はなかったのではないかと推測します。
    直前3場所が10勝・11勝・12勝で昇進できたのも、大鵬関と共に新たな時代を作っていってほしいという周囲の期待が大きかったからでしょう。今の基準に当てはめると、ちょっと考えられないかもしれないですね。
    朝青龍関や白鵬関が圧倒的な成績を残してきたために、今日馬富士関に対する評価が厳しくなっている面はあると思います。
    ちなみに、柏戸関の優勝回数は5回ですよ。

  5. パリンドローム より:

    はじめまして。
    以前から、データを多く引用しての考察記事、楽しく拝見してます。
    いち相撲好きとして自分の意見をネットに書き込むのは初めてです。
    日本人横綱の不在のこと、横綱はどうあるべきか、
    などなど、このブログでも扱われているように、
    相撲に対しての論点は色々あって、それぞれに言いたいこともありますが、
    その中でも一番、強く反論したくなるのが、まさに日馬富士に対する批判でした。
    不調の時の脆さに加え、相撲の内容にも度々注文をつけられる日馬富士ですが、
    とにかく横綱であるという点から発した批判ばかりが先行して、
    それ以前に彼が幕内最軽量の力士であるという重要な点が霞みがちではないかと。
    (九州場所では松鳳山と並んで最軽量だったと思います)
    一方では、昨今の重量化してある種の動きが少なくなった取り組みを批判していたりもする。
    放送の解説を聞いていると、こういったダブルスタンダードが多くて嫌になります。
    それぞれ立ち位置をはっきりして意見を言って欲しいものです。
    とにかく、今の幕内で日馬富士のような相撲を取ることができる力士は貴重ですし、
    軽量力士なのだから、日馬富士までいわゆる横綱相撲を取らなくても良いでしょう。
    怪我で本来の動きができなければ、簡単に負けることがあるのも仕方がない。
    今年は不調な時期が長かったという点は否めませんが、
    私は、日馬富士は今のままでも十分、横綱としての資格があると思いますし、
    もっと長く現役を続けてもらいたいと思っています。

  6. 斉藤 より:

    柏戸あっての大鵬、大鵬あっての柏戸です。当時をリアルタイムで見たらそう言わざるをえません。したがって 数字を羅列、比較することはあまり意味をなしません。相撲とはそういうものです。

  7. Nihiljapk より:

    > 臼田さん
    実は日馬富士は平均レベルの横綱なんですよね、今のところ。
    師匠は横綱としては短命だったので、横綱限定での成績比較を
    してみると上だった、というのは分かる気がします。
    それにしても、白鵬が凄すぎて真の日馬富士が見えないんですよね。
    その白鵬相手に年に2回優勝するというのは、日馬富士の凄さ
    と言えるのだと思います。

  8. Nihiljapk より:

    >ういろうさん
    凄い知識と分析眼ですね。
    正にその通りで、白鵬の凄さって数字の面からも
    圧倒的だと立証できるんですよね。
    負けない・休まない・取りこぼさないとは上手い表現ですね。
    この1年は特に、関脇以下では妙義龍と豪栄道にしか負けていない。
    こんな力士は他に類を見ない。
    だからこそ、大関にも横綱にも成りづらい。
    厳しい時代ですが、だからこそ成長できる。
    稀勢の里が白鵬と毎場所のように素晴らしい相撲を取れるのは、
    白鵬有ってのこと。
    いい時代なのかな、とも思います。

  9. nihiljapk より:

    >あひるさん
    直接対決の成績って重要ですよね。
    曙VS貴乃花然り、朝青龍VS白鵬然り。
    強い力士とがっぷりの相撲を取れるって、
    それだけで十分だったりします。
    稀勢の里に期待を寄せるのは白鵬との対戦の熱さに依るところも
    かなりあると思います。
    それだけに、取りこぼしをしないことが
    更に盛り上げることになるのではないかと感じました。

  10. nihiljapk より:

    >パリンドロームさん
    初コメントありがとうございます。
    論拠の無い状態で相撲は語られ過ぎてきたので、
    過大評価も過小評価もされてしまう。
    遠藤は過大評価というか、過大な期待を背負いすぎている。
    そして、その逆が日馬富士。
    論理性が無い評論を受けているので、
    後で検証してみると相反する主張をされている。
    それほどフランクな話題とも言えますが、
    今のままの状態は気の毒です。
    2年前に比べると数字で語られる機会も
    増えてきたかと思っています。
    そういうことにこのブログが少しでも貢献できれば
    これほど嬉しいことは有りません。

  11. nihiljapk より:

    >斉藤さん
    まぁそうおっしゃらずに少し数字にも目を向けてくださいよ。
    色んな発見があって面白いですよ。

  12. beo より:

    いつもながら労作ですね。
    この手の表を見るにつけいつも思うことは白鵬の成績が如何に突出しているか、ということですね。しかもライバルのモンゴル両横綱と同時代にあってこの成績ですから神としか言いようがありません。準優勝以上95%ってなんじゃそりゃ!っていうレベルですね(笑)。
    あと、労作にケチをつけるようで大変恐縮なのですが、%の数字同士がくっつかないようにスペースを入れていただけると大変見やすいかと思うのですが・・。

  13. ごうたろう より:

    いつも興味深く拝見しています。
    今回のものも一つの指標として素晴らしいと思います。
    そもそも、相撲社会は、勝った負けたの「相対」で番付や優勝が
    決まるものですので、こうした「数字」からの客観的視点はもっと
    注目されるべきと思います。
    それにしてもやはりというか・・・現役大横綱・白鵬の安定した
    好成績。休場なしで常に優勝争いに絡んでいる(=優勝+準優勝で95%)というのは凄過ぎます。
    あの「憎たらしいほど強い」と称された北の湖でさえ、白鵬の前ではやや霞んでしまうくらい・・・
    やはり白鵬は、大横綱の中でも、双葉山・大鵬と同等の別格扱いに
    されるべきでしょう。もっと国民にリスぺクトされてもいいと思われます。
    日馬富士も、横審から酷評されるほど悪くないのはよくわかります。よくやっているほうですよね。
    (栃ノ海・大乃国・3代目若乃花など哀れです)
    信憑性をさらに高めるために提案があります。
    準優勝という括りから「優勝者から2差以上つけられたもの」を
    削除してみてはいかがでしょう。
    もともと準優勝という表彰はないですし、15戦全勝優勝で、準優勝が12勝3敗では優勝争いした(=綱の責務)印象は薄いからです。
    過去の横綱を評価する指標として是非、見てみたいものです。

  14. Nihiljapk より:

    皆様
    コメントありがとうございます。
    横綱を観る上である程度客観性が伝わって嬉しく思います。
    あと、見せ方として
    ・数字が見づらい:
    申し訳ありません。
    このブログの仕様でパソコンとスマートフォンとで
    見え方が変わる関係で、パソコン側に寄せた編集をしている
    ことから発生しているかと思います。
    グラフを画像化して貼り付けるなど、
    次回以降留意いたします。
    ・準優勝を惜しいものだけに限定してほしい:
    申し訳ありません。
    量が膨大であることも作用し、
    準優勝の惜敗率とも言えるデータを取れずにおります。
    一つの指標として、勝率が2番目に高いものを抽出しておりますが
    次回以降力士の力量を図るための指標として
    採用を検討いたします。

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