親方は日本国籍を有していなければならないのだろうか?白鵬の親方株取得問題が記事になった今、改めて考える。

少し気になる記事が有ったので、
「次の九重部屋はどこだ?」は一度お休みして
この記事を書かせていただきたい。
白鵬が、モンゴル国籍を有した状態での
親方株取得を目指しているというのだ。
一般紙ではないソースなので、記事自体の信頼性は
読み手の裁量に委ねられるところではあるが、
過去に聞いていた話が記事になってしまった、という印象である。
親方の条件に国籍条項を付けているということについては
意見が別れるところである。
だが白鵬がそれに異を唱えている、と報じられている。
避けてはいたことだが、一度考えてみたい。
親方になるのに、日本国籍を要するという条件をどう捉えるか。
私は、なのか、我々は、なのかは分からないが、
白鵬に対してどうしても負い目が有る。
何しろあの苦しい時代を支えてくれた恩人なのだ。
日本人よりも日本人らしく、
どの横綱よりも横綱らしく、
八百長問題で揺れる中大相撲の在るべき姿を体現し、
大相撲の力を見せ続けて信頼回復に大きく貢献した。
遠藤や逸ノ城の登場に湧くのは、目指すべき最強の敵として
この稀代の横綱が君臨していることも見逃せない。
八百長問題以降の大相撲の中心は間違いなく白鵬であり、
白鵬無くして今の大相撲の隆盛は語れないのである。
そんな白鵬が、大相撲に残りたいと言っている。
そして、その条件としてモンゴル国籍を有することを条件としている。
この要求をどう捉えるか。
つい私は良い顔をしてしまいたくなる。
この恩人を悲しませたくはないし、不毛な議論もしたくはない。
ならばいっそ、この要求を呑んでしまってもいいのではないか。
そういう誘惑に駆られてしまう。
そもそも、日本国籍を有するという条件自体、
どのような理由で作られたものなのか、知る由もない。
外国人に乗っ取られないようにするためなのか、
外国人に対して相撲界に骨を埋める覚悟を求めるために作られた
ハードルのようなものなのか、様々な解釈は有る。
私もこの議論の着地点を見出すためにそれらの
リスクについて考えてみた。
だが、どれを取っても理由付けになってしまう。
誰かを批判する時や肯定する時に用いる正論というのは
大抵の場合が後付けなのである。
誰かの批判をしている時、元々その人や団体を嫌いではないだろうか?
逆もまた然りだ。
だとすると、私にとって親方株と国籍という問題については
直感的にどのように考えているのか。
まずはこの部分を問い質してみようと思う。
私は、一体どう感じているのか?
結論として、
日本国籍が要するのは自然なことではないか?
ということだった。
そこには差別的な意味合いも見えないし、
心理的に引っかかる部分も無い。
唯一引っかかるポイントは、白鵬が異を唱えている。
この1点だけなのである。
今まで問題化しなかったのは、これまでの外国人力士達が
この規定に準じて日本国籍を取得してきたからだ。
ならばそれでいいのではないか。
逆の立場になって考えると、更にその想いを強める結果となったのだが
例えば自分がロシアでサンボの選手になったと置き換えて、
際立った成績を残した後で指導者になろうと考えたとしよう。
ここで、ロシア国籍を求められたとする。
これは、不自然だろうか。
私にはそうは思えない。
本当に指導者になりたければ、どのような障壁を押しのけても
国籍の問題をクリアしたいと思うだろう。
何かを得るには、何かを捨てるしかない。
言葉では言い表せない理不尽や不合理が多ければ多いだけ
文化の深みが有ると私は思う。
髷も、土俵のサイズも、材質も、行事の格好も、軍配も、全てに意味が有る。
それらを全て最適化することも可能だが、かつてのままにしているからこそ
文化として粋なのだ。
粋を合理化し、平等にすれば競技としては成熟する。
だが、文化としての側面は失われていく。
一番円満なのは、白鵬が日本国籍を取得することだ。
これは間違いない。
外国籍を有していた諸先輩がかつて通った道を辿ることも
白鵬に一つのグラデーションを与えることになると思う。
だがもし白鵬がこれを是としないのであれば、
これはもう、徹底的に話し合うしかない。
諸先輩方が受け入れてきた道を、何故白鵬は拒むのか。
これを棚卸して、白鵬に向き合うべきだろう。
考えてみると、白鵬に向き合うということ。
これこそが今一番欠けていることなのかもしれない。
土俵上の問題も然りだ。
32回目の優勝という一つの節目を迎えたところで、
今まで棚上げにしてきた問題に向き合い、
来るべき日に備える。
親方の国籍問題は、根源的な問題と大きくリンクしているのかもしれない。
ひょっとしたら他にも話し合わねばならないことは多いのかもしれない。
そう。
「かもしれない」で想定される話が多すぎるのだ。
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親方は日本国籍を有していなければならないのだろうか?白鵬の親方株取得問題が記事になった今、改めて考える。” に対して5件のコメントがあります。

  1. worldsportsfan より:

    ベースボールの指導者も
    サッカーの指導者も
    ボクシングの指導者も
    柔道の指導者も
    どの国探しても国籍取得を義務付けるのは稀でしょう。
    「今までそうしてきたんだからそうしろ」???
    お話になりませんね。

  2. 石浦 より:

    はじめまして。
    いつも拝読させていただいています。
    白鵬の件。
    今後も曲折が予想されますが、協会が譲歩することはないと思いますし、それでいいと思います。
    誰でも理解できるように、相撲は単純なスポーツではなく、いまだ神事の側面も強い。
    現役力士の国籍制限は無に近くなりましたが、それは指導する親方が日本人であることでカバーできる面もあるでしょう。
    無論、帰化した親方がどこまで日本人的かはありますが、そういう制限があればこそであり、(カラー道着に見られるような)柔道化を望むファンもいません。
    協会が株式会社でなく、公益法人という面も影響あるかもしれませんな。
    報道ベースからですが、白鵬の狙いは、国籍規約改定ではなく、不正出の大横綱となった自分を、特例扱いにされることを望んでいるようにも見受けられます。
    この辺は、あまり表に出てくると、折角の評価に翳りが出るやもしれません。
    リクエストなんですが、もうちょいとタイトル通り、幕下相撲の記事が読みたいと思ってます。

  3. sumolove より:

    はじめまして。
    いつも興味深く拝読しております。
    私は雑念なく感じたのは、逆に
    「白鵬だけは、日本国籍を有することなく親方にいなれることを許可することを認める」
    ということです。
    日本文化・伝統は、特例を設けないことに意義があるという方も
    多いかと思いますが
     ・八百長問題など大相撲の存亡危機を何度も救ったひとり横綱
    であったことは疑いのない事実で、それこそ前例のない貢献である
    と思うからです。
    それにプラスして、今後、記録のほとんどを塗り替えるくらいの
    功績、大相撲の歴史を日本人の誰より勉強して、その文化を愛していること、それから、何と言っても横綱になって約8年弱、休場せ
    ずに秩序を守り通してきたことなどが理由です。
    彼こそは、今後二度と現れないだろうという稀代の横綱であり、もう生きてるレジェンド(伝説)になっていますし、もっと敬意を表するべき存在だと思います。
    彼だけがモンゴル国籍を持って親方として残ることに、上記を覆すほどの危機やデメリットは感じません。
    いずれにしろ、もっと議論を深めていくべき議題だと思いますね。

  4. godust より:

    いつも拝見しております。
    今回の件、個人的には白鵬の意見を尊重してあげたいと考えました。
    白鵬の出身地であるモンゴルは強国に挟まれ、時に戦い、時に譲歩しながら独立を保ち続けた国です。
    そして、多くの国が同じように自分の国を守る為に必死に戦った過去があります。
    他国より占領、属国にされながらも戦い続けて独立を勝ち取った国も多くあります。
    把瑠都の出身地であるエストニアが旧ソ連を相手に独立を宣言したのは1991年です。
    そのような国に生まれ育った人にとっては、自国を名乗ること自体が非常に意味のあることです。
    日本も愛国心がある国だとは思いますが、根本的な部分が違うのかなと思います。
    ブログ主様は、自身の夢の為に国籍を捨てる覚悟があると思われます。
    その心意気も素晴らしいと思いますが、例えばエストニアを例に取ると今から23年前です。
    ということは、恐らく30代以上の国民はその瞬間に立ち会った記憶があるでしょう。
    把瑠都は30歳なので本人の記憶自体は微妙ですが、親族には独立のために尽力された方が居ることでしょう。
    私は、そんな家庭で育った人達が、国籍を変えることに抵抗を感じるのは普通の感覚に思えてしまいます。
    伝統を重んじることは大事です。
    しかし、それはその人の正しい精神を殺してまで行うべきでしょうか。
    私には、国籍を変える事が外国人への『踏み絵』に見えてなりません。
    今回は白鵬の言い方にも問題が有る気はしますが、単純なワガママとも言い切れません。
    ならば協会としては、前例が無い、そゆいうルールだ、といった内容で突っぱねることはせず、ブログ主様が言ったとおり決まった経緯や歴史学などを説明し、交渉すべきと思います。
    そして、両者納得の上結果を世間に公表して欲しいです。
    相撲も国際化が進み、過去には無い問題も今後増えてくるとは思いますが、古今例が無い事こそ、協会主導の元で日本の伝統文化として恥ずかしくない結論を導き出して欲しいものです。

  5. matuyuki より:

    こんにちは
    楽しく拝読しております。
    さて、5日付の白鵬のモンゴル国籍問題ですが。
    震災後数年は、白鵬に対して非常に尊敬と感謝でいっぱい、ゆえにぜひ大相撲史上、唯一無二の処遇=日本国籍取得せずとも親方に成るよう嘆願すらしておりました。
    この気持ちを宮城野部屋へメールで送ったこともあります。
    朝日新聞の読者コラム宛にも送りました。
    そして早や数年、現在は、その気は毛頭ございません。
    現段階の白鵬に対する気持ちや見方がまさかの逆転となりましたから。
    情報によると、申し立ては彼自身からとか。
    もしかしたら、国籍取得は最後の手段であって、願わくば、故郷のモンゴル国籍のままでなれないものかと、悩んでいる程度かもしれません。
    むしろ、異議申し立てじゃなくて、苦悩の心情吐露だったらどんなに大相撲ファンは救われるかと。
    まず引っかかるのが、彼自身の異議という出発点。
    大相撲界に骨を埋める覚悟で綱を張っているんじゃないのかと。
    謙虚さを欠いた言動は、大相撲に関する限り、断固として批判します。
    わたしが一番最初に感じたのは、ついにこの問題が出たか。
    そして、次に驚いたのが、国籍の是非よりも、報道の順序として、まず第一に白鵬自身からの意見というこの事態でした。
    こういう話は、周囲から持ち上がって、その動きを白鵬自身は静かに見守りつつどちらにも身を任せるという考え方でなければいけない、こういうのが日本人の精神構造だし伝統的な身の処し方です。
    謙虚、これは必須なのです。
    差別だの狭い了見だのとご批判の方々には、大相撲界の頂点に立っているのは横綱ではないと、明言しましょうか。
    【伝統】の重みを考えるべし。
    引退が近づいた時、誰彼となく、周囲から、また大相撲界の内部から推奨されるようにして、モンゴル国籍のままが認定される、こういう道を辿るのが本当。
    いつだって、横綱自身の態度は、全てをゆだねる形でなければなりません。
    それが伝統として国技である大相撲界なのです。
    夫婦は籍を入れる、こういう事でしょう。
    妻は夫の家へ嫁ぐ、単純にすれば理解できますよね。
    一心同体にならずして、親方にはなれず。
    日本人がこだわるのがいけないとか、国籍なんか関係ないというのは、浅はか。
    逆に、なぜ日本国籍取得=モンゴル国籍破棄を頑なに拒むのか、彼に問いましょうか。
    そんなに大切なのかと。大切だとしたら、大相撲界が日本国籍を要求するのも同様に大切なのは理解できるでしょうと。
    父上と相談されたらよろしい。大相撲界に送り出した親なら、日本人になる事を大いに喜んでくれるはずと、わたしは思います。
    私の親でも、こういう場合、立派にやれと背中を押してくれると確信します。
    伝統を壊し、新たな伝統=白鵬を作ろうとしているのでしょうか、彼は。
    それならば、断固として立ち向かい阻止する事、これが日本人。
    日本の伝統は、守り抜く、今の正直なそして強い気持ちです。
    まさかの反転ですね、自分自身でも驚きです。
    日本人の精神構造は、外国人には理解不能と、またしても思いました。
    謙虚、これが今の白鵬には欠片も有りません。残念です。
    九重親方の苦言にあるように、大相撲ファン・白鵬ファンからも不満が出ているあれこれ、ここが一番の問題。
    これがなければ、今でも唯一無二の存在として、外国籍保持の親方を推奨するのですが。かえすがえすも、無念です。

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