批判覚悟で勝ちにこだわる白鵬は、全勝の琴奨菊の前に現れるのか。理想の横綱像を求める自分と、例の白鵬を観たい自分との間で揺れる大一番。

大関:琴奨菊。
大関として通算成績は214勝147敗24休。
勝率に換算すると、5割9分2厘。
5回の対戦で大体3勝する計算。
平たく言うとクンロクである。
在位26場所での2桁勝利数は8回。
準優勝は1回。
余談だが大関昇進後の稀勢の里は255勝114敗。
2桁勝利は18回。
準優勝は7回。
日本人力士、というより稀勢の里に期待が集まるのも無理もない。
しかし、琴奨菊は大関を守り続けてきた力士だ。
歴代大関の平均勝率がピッタリ6割ということも、以前の調査から明らかになっている。時に大怪我を負いながら、何かと「不甲斐ない」という批判を浴びながら、それでも琴奨菊はここまで大関を務め上げてきた力士なのである。
大関とは孤独な立場だ。
勝ち越すだけではなく、強さを見せねばならない。実際の難易度は別にして、クンロクもハチナナも蔑称として用いられることが多い。豪栄道が1年半精彩を欠き続ける中、同じ重圧に耐えてきた力士だということに目を向けると琴奨菊にしか無い価値が分かるのではないかと思う。
琴奨菊は過小評価されてきた力士の一人だ。今場所の活躍は、琴奨菊の強さを客観視するにはまたと無い機会だった。そして今日、勝ちを積み重ねて遂に白鵬と対戦する。
50戦46勝。
この戦績が示すものが何かお分かりだろうか。
白鵬対琴奨菊の過去の対戦成績である。
この戦績だけで、二人の関係性は分かると思う。10回対戦して下手すると1度も勝てない相手。感覚で言えば、勝てる気がしないのは間違いない。そういう絶望的な経験をし続けているのが、琴奨菊である。
琴奨菊は様々な白鵬を想定した上で闘わねばならない。いつもの当たりを批判覚悟で受け止めないのも白鵬のやり方だ。だとすると、立合は動きをある程度見た形を取らざるを得ない。それでも琴奨菊が勝つには、白鵬を持って行くだけの強い出足を担保せねばならない。
考えてみると、一つ大きな疑問が有る。そう。白鵬は琴奨菊に対して議論になるような取組を見せたことが無いのだ。
琴奨菊ほどの実力者に対して何より勝ちにこだわる白鵬が何故そうしないのかは疑問だが、だからこそ形振り構わぬ白鵬が今日出てきたとしたら、これは見物である。
遂に琴奨菊は、あの白鵬を引きずり出すことになるのだろうか。今場所の琴奨菊は白鵬にそこまでの覚悟をさせる力士なのだろうか。今日の一番は、そういう視点も有ると思う。
もし白鵬がオーソドックスで勝つとしたら、何も言うことは無いと思う。もし白鵬が例の姿勢を見せて勝つとしたら、その正当性や過去の経緯に想いを馳せると思う。
だが琴奨菊の攻めを一方的に受けて土俵を割るとしたら、私は白鵬に怒りの声を上げるかもしれない。何故例の姿勢を見せないのか、と。それは琴奨菊を甘く見たが故の敗戦だと受け止めることになるからだ。つまり、今日の取組で白鵬が琴奨菊をどのように捉えているかが分かる訳である。
勝ちにこだわる白鵬を見たくない自分も居る。だがあの白鵬が今日現れて、琴奨菊にどう対峙するか見たい自分も居る。そして琴奨菊がその白鵬にどう立ち向かうかが見たい自分も居るのである。
私は一体、どのような取組を求めているのか。
私は何を白鵬に求めているのか。
琴奨菊が絶好調だからこそ、白鵬の出方が気になる。
白鵬に注目しよう。
白鵬の全てに注目しよう。
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