安美錦の魅力を一言で表すと。
安美錦が大好きである。
前頭上位で五分の星取りの安美錦。
決して大きくはないが、均整の取れた
力士らしい風格のある安美錦。
闘争心が表には出ないが、
常に一発を狙っている安美錦。
出てくれば上位が相手でも何かを期待するし、
一方的に土俵を割っても何か納得できる、
不思議な力士。
絶対的に強いことが彼の美ではない。
しかし、持たざる者がハンディを克服して
闘うところに自分を投影する、
という小兵力士的な美というわけでもない。
一体、彼の魅力とは一体何なのだろうか?
いろいろと考えてみたところ、
この一言に落ち着いた。
そう。
丁度いいのである。
強さが先立っての存在でないために
仮に負けてもそこまで落胆しないし、
かといって弱いわけでもないので程良く勝てる。
しかもその強さというのが、横綱との対戦が
常に組まれる程度の地位であることから
相撲の質も非常に高い。
こうした状況の中で、大関や横綱など
普通は勝てない人達との対戦が組まれるわけだが、
安美錦の場合は彼独特の相撲を取ることで
あっと言わせてくれる。
本来であれば彼の優れた技術や洞察眼を
魅力として語りたいのであるが、
何を言っても後付けの理由になってしまう。
私が先程思いついたのは、彼のスタイルは
「安美錦なる相撲」なのである。
陳腐な言い方だと「曲者」とも表現できるのだが、
この言葉に集約すると安美錦なる魅力が
1/3も伝わらないので、この言い回しを使わせてもらう。
特に酷い立ち合いの変化をするでもなく、
サーカスのような綱渡りをするでもなく、
闘志を前面に出すでもなく、
安美錦は安美錦なる相撲で実力者をなし崩して
まんまと勝利する。
相手もまた、キツネにつままれたかのように
安美錦なる相撲の術中にハマり、やられた!という表情になる。
大波乱というには日常的な、安美錦によるジャイアントキリング。
相撲内容にしても、その結果の納得感にしても、
安美錦というのは本当に丁度いいのである。
こういう存在が彩ることで、横綱や大関の強さも際立つし、
相撲自体の奥深さに触れることにもなる。
代えの利かない安美錦は、相撲界の宝である。