魅力的な四股名とは?
新十両の丹蔵が好調である。
入門からの下積みが5年と、苦労を重ねての
昇進だっただけに、私個人としては
今場所は勝ち越しを目標としての戦いになることを
予想していたのだが、いい意味で裏切られている。
身体が大きく、期待も大きい力士ではあったのだが
なかなか結果が出なかっただけに、
幕下ウォッチャーとしても、この現状は
とても喜ばしい限りである。
個人的に彼が大変魅力的な力士になったと
感じているのには、その取り口だけではない理由が有る。
そう。
名前である。
近年の力士は、十両昇進と共に
改名する事例が増えているのだが、
どうもピンとこない名前であることが多い。
その部屋を表す冠の後に、
各々が思い入れの有る漢字を2文字付け加える
という形式が多いため、
名前をトータルで見た時に統一感が無いのである。
例えば千代大龍。
憧れの千代大海から「大」と彼の本名である
龍二の「龍」から名前を拝借しているのだが、
千代大龍という名前には彼の要素が一つも無いのである。
九重部屋を意味する「千代」と、
千代大海リスペクトを意味する「大」「龍」。
名が全く体を表しておらず、
このままでは和製千代大海、千代大海二世でしかないのだ。
せっかく彼には明月院という素晴らしい本名が有るにもかかわらず
わざわざ彼の体を表せる個性を消してしまう結果になったことは
大変残念である。
つまり、四股名というのはその力士を想起するのに
非常に有用なものであり、
だからこそ個性を消してしまう名前を付けることは
四股名という相撲を魅力的に映し出す要素を
消してしまうことになってしまうのだと私は思う。
四股名もまた、大相撲の文化的側面の一つであり、
日本的文化を感じさせる粋な風習である。
だからこそ、字の雰囲気や読み方を考慮しても
なるほど、と思わせるそれであることが理想である。
それ故に丹蔵という字画は一目でそこに特別な意味合いが
込められていることが理解できるし、
聞いてみるとやはり彼の家の伝統を感じさせるそれであることから
彼を表すには最適な四股名だったと言える。
寺下という一般的な名前から丹蔵という
いかにも力士、という名前に変わることによって
幕下力士から一人前の力士へと変化を遂げる。
改名の意義を実践し、そして実際に彼は
この場所で飛躍を遂げようとしている。
彼のような改名が、スタンダードになることを祈りたい。
千代大龍に関してはとても同感です。千代を付けるにしても千代名月とかいくらでもやりようあっただろと思いますね。ひょっとして彼は名月院という名字にコンプレックスでもあるのでしょうか。だったら無理は言えませんけども・・・。