快進撃の裏に潜む、巨大な不安。エジプト人力士:大砂嵐を巡る、2つの懸念材料とは?前編
大砂嵐が好調である。
角界初の、アフリカ出身関取。
驚異的なスピードでの十両昇進。
加えて、ムスリム特有のラマダン。
相撲に興味の無い私の友人でさえ、
近頃のニュースで取り上げられる
大砂嵐に興味を持ち、私にその話を振る始末である。
このようなことは高見盛以外に無かったので、
急速に知名度を高めている現状に戸惑いつつも
非常に嬉しく思っている。
何せ強い。
とにかく強い。
4月の稽古で既に北太樹を圧倒していたのだ。
鳰の湖や北播磨といった関取に勝つのはともかく、
横綱とも対戦できる位置に居る力士を相手に
幕下の大砂嵐が当然のように勝つ様子には衝撃を受けた。
アスリート的素養に長けた力士というのは
ついついその能力に頼ってしまい、
いつまで経ってもある形から抜け出せない。
弱点に対して本気で向き合おうとしない。
思い当たる力士が居る方も多いと思う。
だが、大砂嵐はそうではないのだ。
場所を追うごとに身体は大きくなり、
突き押しの厳しさが増すと共に
相手の攻めにも耐えられる身体的能力を身に付けている。
そして、攻めのバリエーションも増えている。
そもそも素直で性格が良く
貪欲に吸収する姿勢は稽古を通じてもすぐに判ったが、
今までに無い四つ相撲を覚え、早くも今場所その形で
勝ちを掴むのだから、センスも抜群なのだ。
だからこそ、場所ごとに加速度的に増す難易度にも
対応できるのではないかと考えている。
同じ外国出身の力士で言えば
日馬富士も、鶴竜も幕下では圧倒できず、
それどころか大敗をも経験している。
幕下というのは、それほどまでに
今までのステージとは相撲の質が異なるし、
対応するためには成長が求められる。
それを飛び越えて十両に昇進し、
十両でも力を見せつけるのだから、大砂嵐は凄いのである。
順風満帆で、話題も沸騰の大砂嵐。
相撲界を背負って立ち得る逸材であると
私は考えているのだが、実は期待と同じくらい大きな
不安も抱いている。
大きく分けて2点有るこの不安。
それは、彼の土俵人生を左右しかねないポイントである。
ちなみにそれは、紙面を騒がせているラマダンとは
無関係である。
一体何が不安視されているのか。
次回に続く。