2023年九州場所6日目所感
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貴景勝は相撲の特性上、翔猿ペースになりやすい
前半戦の山場ともいうべき取組が組まれた。
貴景勝対翔猿。
地位で見れば貴景勝が勝つべき取組。
しかし実際は翔猿が連勝している。
連勝し過ぎていて、私は貴景勝が勝っている時の映像をYouTubeで見つけられなかったほどだ。
確かに相撲には相性があり、地位が関係ないどころか逆転してしまうようなマッチアップも存在する。
その代表例が、貴景勝対翔猿と言えるだろう。
この相性は、翔猿の横の動きが良いことそして貴景勝がそれを踏まえた上で攻めると優位に進められるだけの威力で前に出られないことに起因している。
つまり貴景勝が翔猿を捕まえられず、遠い間合いから見合うような展開になりがちで、これは完全に翔猿のペースだ。
貴景勝は前へのプレッシャーを強く掛けて、翔猿の逃げ場を狭め、常に翔猿の前をキープしたいが、果たしてどうなるか。
貴景勝がよく見て、ペースを渡さなかった
立合い。
翔猿の変化。
これをまともに食うほど貴景勝は翔猿歴が短いわけではない。きちんと留まれる程度に出足を抑えているので、ここはクリア。
問題はこの後だ。
翔猿と貴景勝が同じタイミングで手を出し合う。お互いにそれほど前には出ない。
小さな間が出来るも、貴景勝が無理に前に出て来ないのと、翔猿が大胆に仕掛けられないために五分の攻防に。
貴景勝は終始落ち着いている。翔猿を常に前に見る理想的な戦いぶりだ。
普段ならどこかで翔猿が自分から仕掛けてペースを握るが、ここまで前に圧力を掛けて突かれ続けると優位には立てない。
貴景勝の張り手から流れが傾き、そこからは貴景勝の展開に。
翔猿は大胆に動けなかった
よく見て、翔猿にさせなかった貴景勝の貫禄勝ちだった。
今までと何が違ったのだろう。
一言で表すと、流れを渡さなかったこと。これに尽きる。
じゃあ何が良かったかと言えば、圧力を掛け続けられたこと。普段ならもっと翔猿が貴景勝を呑んで大胆に前に出てくるし、横に動いて揺さぶってくる。
今日はそれができなかった。
決して貴景勝がリスクを追って強く前に出てきた訳ではない。それは体重差がある二人が中盤まで五分の攻防だったことからも分かる。
翔猿が逆に貴景勝のペースにハマったと言えるだろう。
これを再現可能かはわからない。ただ、少なくとも翔猿に好きなようにさせない圧力を植え付けることは出来たと思う。
もう好き勝手はさせない。
そういう怖さのある相撲だった。
豪ノ山を相手に撃ち合うか。ペースを変えるか。
明日の相手は豪ノ山。
前にガンガン出てくる、恐れを知らない新鋭。今日霧島を破っていることもかなり不気味だ。
本来同型が相手であれば阿武咲のようにそこまで心配は無い。
何故なら貴景勝の方がより性能がいいからだ。
だから、正面からやりあう相撲を挑まれたとしたら、普通ならば攻防はあるにせよ貴景勝がペースをどこかで握ることになる。
ただ、初日から繰り返し指摘しているように、まだ貴景勝は宇良以外を相手に一方的に当たり勝つ相撲は無い。
撃ち合うか、どこかでペースを変える動きに出るか。変えるならば張り手か、いなしか、引きか。
今日の翔猿との一番を取った貴景勝が何を選択するか、注目だ。
その他の見どころ
6日も経つと、そろそろ綻びが生まれてくる。
あれほど良かった大栄翔が連敗し、熱海富士にも土がついた。
豊昇龍も苦手の高安にあの手この手を尽くすも全て通じず、高安の恐ろしさだけが際立つ結果になった。今日の高安は普通ではなかった。
そして琴ノ若だ。
今の琴ノ若はどんな攻めも受け止める魔力を感じる。大栄翔につづいて北勝富士も吸収してしまった。
下がっても余裕がある。攻めきれない。土俵際で逆転を受けるか、反撃に転じるか。
これ、どうやって、勝つんだよ。。