綱取り消滅で噴出する失望の声。正しい稀勢の里の見方を考える。

稀勢の里が2敗目を喫した。
横綱昇進はこれでもうほぼ不可能になったと考えていいだろう。
先場所あれほどやれたのに、今場所はそれが出来ない。
白鵬に勝てなかったことで、「自信が確信に成る」
ところまで至らなかったのが今回の結果に
繋がっているのではないかと思う。
長い目で見た時、あの一番がターニングポイントになった
と振り返ることになるのかもしれない。
希望的観測としては、あれが有ったから今が有る、
みたいなことになればいいとは思うのだが、
自信を掴み損ねてしまった決定打にも成り得るだけに
不安を覚えずには居られない。
気になるのは、この全くポジティブでない結果に対して
ツイッターが大いに荒れていたこと。
変わっていないことに対する失望。
期待していた分だけ感じる怒り。
そして一番よく有るのが、「オレは期待していなかった」
という期待の裏返しの斜に構えた態度。
強烈な感情が、一人の力士の敗北によって巻き起こされている。
だが、少し待ってほしい。
果たしてそれは、正しい見方と言えるのだろうか?


稀勢の里を応援するのに、勝つことだけを
期待するのは少し違うということである。
稀勢の里を応援する上で重要なのは、
彼の成長過程をリアルタイムで共有することに有る。
100%報われるドラマが見たいのであれば、
フィクションを見るしかない。
だがこれは、生身の人間がやっていることである。
努力が必ずしも報われない世界こそが相撲界で、
土俵の結果というのは対戦相手に左右される。
偶発的な要素と本人の努力が絡み合い、
予測不能な結果を生み出す。
その理不尽さが面白いのである。
だから私が言いたいのは、稀勢の里を応援する
というのは、万人には向かないということである。
勝つことが好きな巨人ファンタイプの人には、
彼が負けを通じて成長するドラマは向かない。
恐らく白鵬を見るのが合うと思う。
そして、持たざる者が持っている者を倒す筋書きが好きな
広島ファンタイプの人にも、工夫や智略で勝つわけではないので
このドラマは向かない。
恐らく安美錦を見るのが合うと思う。
目の前の現実を現実として受け止め、
足りない部分を声援でバックアップしながら共に進む。
自らの課題に向き合い、もがき苦しむ。
そして、日々変化する。
苦楽を共にし、絆を深めることが楽しいのだ。
その延長線上に結果を出すことが待っていて、
ドラマを共有しているからこそその喜びは深くなる。
そう。
この楽しみ方は実に幕下相撲的なのである。
ジャニーズJr.的であるとも言うし、
またAKB48的であるとも言う。
予測不能なだけに、応援している筈が傷つくことも有る。
だが、それも含めて楽しいことなのである。
勿論私はこの見方を強要しない。
辛い時が多く、ストレスに耐えかねる時も有るからである。
しかし私がこの話をしようと思ったのは、
期待して離れたり、斜に構えて手のひらを返すのは
本人が一番傷つくということがきっかけであった。
よく聞く話だが、
「挫折した時に、信頼できる人が誰か分かった」
ということ。
つまり、ここで離れるサイドの人というのは
間違いなく「信頼できない」と分類されるのである。
そしてその類の人は、これもよく言われる
「勝ったら親戚とか友達っていう人が増えた」
というジャンルに位置するのである。
無自覚に苦しめるのであれば、自分の適性を見極めた方がいい。
そして自分に適した力士を応援するのが
互いにとって幸せなことなのだ。
一つ言えるのは、私は自分の性質に合っているから
稀勢の里を諦めずに応援していきたい、ということである。
■追伸
名古屋場所9日目に参戦します。
もちろん、吐合Tシャツ着用します。
ご覧になったら一声お声かけください。
ビールの1杯はご馳走いたします。

綱取り消滅で噴出する失望の声。正しい稀勢の里の見方を考える。” に対して4件のコメントがあります。

  1. 碧海 より:

    ツイッター、というかネット全体が荒れるほど変に期待値をあげられすぎるのはただ単に
    「稀勢の里が日本人だから」
    だけじゃないかと思われます。
    応援?していたファンの目からも、
    時々解説にいる親方の目からも
    「日本人横綱が・・・」
    という期待感だけで語られ(ほかに横綱どうこう言える日本人がいないのもあるんで)
    彼の「力士としての姿」が完全に消えちゃってる。
    「相撲は日本の国技だから日本人がんばれ」という特性に比較的出世が早かった稀勢の里がはまりすぎてしまったのが悲劇ですね・・・
    「日本人横綱候補生」という肩書きをはずせば、もしかしたら彼のファンはかなりいなくなっちゃうかもしれません。
    まぁいなくなった後に残ったファンこそが本当に彼を理解できる人ですが。
    あ、日付はずれますが、今日これから名古屋場所へ行く予定です。
    「過剰かつ無意味な期待が一番の敵である」
    稀勢の里に逆に愛を感じるんで、何も言わずじっと見てこようと思います。今の段階でも結果はすでに出せてると思うんですけどね・・・

  2. えみ より:

    いつも楽しく拝見しています。コメントを書くのは初めてなので拙い文章になると思いますがお許しください。
    私は稀勢の里が大好きです
    先場所千秋楽に負けた時は泣いてしまったほどです
    相撲を好きになってからその時々に応援している力士はいましたが負けたのを見て泣いたことはなく自分でも驚きました
    そして稀勢の里という力士の特異性をいつも感じていました
    例えば他の大関が8勝7敗でもまあちょっとした苦言はあるけれど稀勢の里がコンスタントに10勝していてもボロクソに言われたりする
    「可哀想なくらい期待されている稀勢の里」とアナウンサーが言ったことがありましたがまさに、という感じです
    今回の綱取りも降ってわいたような感じでした
    先場所稀勢の里も「今日で台無しですね」と言っていたように綱取りなど考えていなかったはず
    しかし今場所綱取りだぞ、と言われれば稀勢の里の立場上「嫌です」とは言えないわけです
    なのに特にアンチからのひどい書き込みなどは胸が痛くて痛くて・・・
    だから実は綱取りが失敗したことにホッとしている自分もいます
    また力をつけて誰にも文句をいわれない昇進をしてほしいです
    幕下評論家さんの文章を読んで本当に胸がスッとして嬉しかったです
    そして私もこれからも稀勢の里を応援し続けます!

  3. Nihiljapk より:

    >碧海さん
    コメントありがとうございます。
    稀勢の里に横綱を要求するのは、
    原に王長嶋を求める行為と同じなのかもしれないですね。
    時代背景として日本人ヒーローを求めるのは致しかた無いことで、
    それほど傑出した外国人横綱が居たからこそ、
    稀勢の里への期待は大きくなったのかと。
    それに、彼の場合は期待させるだけの爆発力を見せますからね。
    身の丈に合った要求をするのもいいのかもしれません。
    ただ、可能性をつい彼には見出してしまうんですよね。
    そしてその可能性と言うのが、たかだか2か月前。
    私はまだ諦めたくないです。

  4. Nihiljapk より:

    >シバ さん
    稀勢の里については、自分の相撲が取れる時と
    取れない時の落差が激しいんですよね。
    悪いなりにまとめることが出来ないのが、彼の弱点です。
    そして、悪い時に悪い姿を見せてしまうのが、
    ファンを失望させてしまう要因になっています。
    適性という言葉で片付けてしまうのは簡単ですが、
    先場所を見ると、克服できるのでは?
    と期待せずには居られないんですよね。

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