高校野球の投球制限を巡る議論。相撲ファンの立場からその是非を考える。
夏の甲子園が始まった。
高校球児による明日なき戦いは、
アマチュアならではの純粋さ故に
プロ野球とは異なる魅力が有ることは間違いない。
だからこそ観る者の心を揺さぶり、
野球自体のレベルで言えばプロ野球やメジャーリーグには
遠く及ばないが、それでも高い注目度を誇っている。
だが、第95回を迎える大会だけに
固有の問題として「大会期間が短いこと」が挙げられる。
端的に言うと、ピッチャーの消耗である。
高校野球なので、高いクオリティのピッチャーを
複数抱えるチームなどそうは無い。
準々決勝からは毎日のように日程が組まれている以上、
勝つためにはエースが登板し続けるしかない。
そのうえ、日本的な考え方では球数を制限するという
発想も根付かないので、球数を投げさせることを厭わない。
私は相撲ファンでもあるが、野球ファンでもあるので
高校野球で消耗したかつての甲子園のスターが
勤続疲労で30前後に潰れていく様を見たくはない。
嫌な見方ではあるが、有望な高校生であればあるほど
地方大会で敗れてほしいと思うほどである。
将来の有る高校生だから、ここで終わりじゃない。
彼らを潰さないための体制を構築すべきだ。
だがそれは、高校野球の魅力を台無しにしかねないリスクも孕んでいる。
となると、公立高校は勝ちにくくなる。
野球校が勝つ確率の高い高校野球に、果たして魅力は有るのだろうか?
このように言われる方も居る。
確かにその通りである。
だが、それは誰のためなのだろうか?
チャンスの間口が広がるという観点で考えると
それは球児達の為でもあるが、
野球校によるプロじみた野球ではなく、
純粋に野球に明け暮れる高校球児のものでなくなるから
つまらない、という観る側が気持ち良くなるための要求である。
結局、我々が今の形の甲子園を望むのは
多くの場合が我々自身のためなのである。
私は、高校球児に潰れてほしくないからこそ、
球児を守るための体制を整備してほしいと思っている。
しかし、私は自分自身が非常に都合の良い人間であることに気付いた。
というのも、私は相撲ファンとして
力士たちに負荷を掛け過ぎているからである。
力士は強くなるために、体を大きくしている。
他のアスリート以上に多く食べ、
脂肪を付けながら前への推進力と
相手の動きを止めるための肉体を作り上げている。
だが、この体の作り方は明らかに
寿命を削る行為なのである。
現役力士の多くが糖尿病などの病気を抱えており、
久島海などの相撲OBは想像以上に早く亡くなっている。
大型化することで人としても寿命は縮まるし、
膝や腰などにもダメージが蓄積する。
相撲は確かに強くなるが、犠牲も想像以上に大きい。
相撲を愛し、力士を愛しているのであれば
本来であれば私は彼らにこうした風習を止めるように
意見すべきなのかもしれない。
だが、私は今の体ではない、階級制の相撲については
相撲の魅力を台無しにする行為であることも知っている。
大型力士による迫力の有る攻防。
小兵力士による、技術とスピードによる打開。
今の相撲は、健康を犠牲にすることによって
より魅力的なものになっている。
これは紛れもない事実である。
だから、私は自分が楽しみたいが為に、
こうした意見については目を瞑っている。
負荷が掛かっていることは重々承知している。
だからこそ相撲がストイックで、
各自が工夫を重ねていて、
その結果が土俵の充実なのである。
高校野球の在り方に物申すのは簡単なことである。
だが、物事にはさまざまな側面があり、
それに応じて我々は立場を変えることになる。
相手の立場を理解し、多面的に考えながら
どうあるべきかを判断する。
必要なのは、ある見方だけを押し付けることではない、
ということだと思うのである。
◆お知らせ:謝罪◆
昨日パソコンが壊れた関係で、
頂いたメールが全て見られなくなりました。
別のパソコンを急きょ購入し、現在作業への影響は有りません。
横審審議委員会につきましては
記事をまとめているところだったのですが、
復元することが出来ず、コメント欄で頂いた
ご意見を元にこれからエントリーいたします。
メールしていただいた皆様、大変申し訳ありません。
今後は外付けのハードディスクを購入するなど、
バックアップ体制を組んだうえで対応いたします。
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