ダメ押しはモンゴル人特有のものではない。日馬富士2敗目から見える、激しさと品格の狭間での迷い。
日馬富士対豊ノ島の取組を観た。
立ち合いから日馬富士が圧倒。
土俵際まで電車道で持って行くも、いきなりのスローダウン。
隙が出来たところを豊ノ島が逆襲し、勝負有り。
談話によると、日馬富士は豊ノ島が既に
土俵を割っていたと勘違いしたらしい。
だがこの話、少し変ではないだろうか。
お気づきの方も多いと思うが、日馬富士はあの凄い立ち合いを見せた時は
かなりの割合で勢い余ってダメ押し気味に、
時にはダメ押しそのものを繰り出す。
だが、今回は何も無かった。
つまり、日馬富士基準で考えれば土俵際で自粛したのである。
考えられる理由はただ一つ。
そう。
2日目の取組に対する注意である。
土俵際でのスローダウンは、今までの取口とは明らかに異なる。
そして、場所中にその判断をするに至ったということは、
今場所中に起こった出来事と結び付けるのが自然なことだ。
となると、2日目の一件が関与していると考えるのが妥当だろう。
激しさを制御した結果、
制御に失敗した格好になったということだ。
しかしこの激しさ。
よく言われるのがモンゴル人ならではのものであり
制御するための相撲を覚えなければならないと言われているが、
一つ疑問が有る。
ダメ押しをする力士は、白鵬と日馬富士だけなのだ。
そして、彼らは下の番付に居た頃は、
ダメ押しなどしていなかったのである。
つまり、何が言いたいか。
彼らも、ダメ押しの無い相撲を取ることは出来るのだ。
正確に言うと、ダメ押しの無い相撲も取ることが出来た。
だが、日本的な相撲のフレームから離れ、
モンゴル的な激しさに回帰することによって彼らは強くなった。
勿論、ダメ押しをすることと強くあることが直接的に
関与している訳ではない。
だがダメ押しに見られるような激しい相撲を取るように
なってからというものの、日馬富士の成績は好転した。
激しさの先にダメ押しが有るという構図なのである。
日馬富士の一時期の不振は、横綱相撲を強いられたことに起因している。
それ故、日馬富士特有の早い、荒い、強いという取口が失われた。
その結果、日馬富士は安馬としての相撲に回帰し、名誉を挽回した。
横綱としての振る舞いよりも、強く在ることを優先させた。
それが、日馬富士の生き方だったのだ。
だからこそ意外だったのは、まだ日馬富士が
こうした意見を気にしていると思われることにある。
迷うことは有ると思う。
怒られれば誰しも一度は考える。
しかし、取口の見直しがこの日のようなズレを産むことも有る。
今まで勢い余って傷つけてきた力士に
今度はその報いを受けることになるとしたら、
これは皮肉なことだ。
だからこそ、日馬富士は今の相撲を取り続けるしかない。
批判を浴びようとも。
何故ならそれが、日馬富士の相撲だからである。
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