幕下相撲は、私達である。

9月場所も中日を終えて、中盤戦から終盤戦へと
歩を進めつつある。
序盤を勝ち先行で迎えた者は、その勢いを止めないように、
いい部分が何かを分析しそれを突き詰める。
負けが先行している場合はその逆で、
悪い部分に徹底的に向き合い、悪い中で
如何に光明を見出していくか取組んでいく。
毎日相撲を取るために、コンディションは日々変化する。
思考錯誤する中で出る結果も変わり、
事態が好転する者が居れば、逆に好調を維持できない者も現れる。
15日間をトータルで観るからこその面白み。
それが大相撲本場所の醍醐味である。
だが、それはあくまでも15日を毎日取れる身分の者に限った話で、
私が話したいのは幕下の力士のことである。


幕下以下の相撲はご存知の通り、15日ではなく、7日で終わる。
全ての力士にとっての目標は、最低限4勝することである。
1番が占める比重が、15日取るのと単純比較して2倍ということは、
1度の勝利と敗戦がその力士の将来を大きく左右することになる。
そのため、中日以降の4日目、5日目に成るに連れて
彼等の相撲は苛烈を極める。
この時点で既に負けが込んでいる場合は、
全勝でもしない限り翌場所は今よりも地位を落とすことになる。
例えば3勝3敗で迎えた7番目の相撲で敗れた場合、
仮に勝利したのと比較して2場所連続で
4勝3敗しなければいけない。
これは、大変なことである。
相撲内容は、関取には遠く及ばない。
だが、そこには給料を貰っている力士には取れない
デスマッチが存在している。
地獄の釜は、口を開けて待っている。
誰もが「蜘蛛の糸」のカンダタ宜しく、
細い糸を手繰り寄せて、自らの未来を切り開こうと努力する。
映画やドラマであれば、物語の主人公は
苛烈な環境を脱出することに成功するが、
幕下相撲に於いては地獄の釜に墜ちていく様を
残酷に映し出すのだ。
3勝4敗であれば、まだいい。
2勝5敗や1勝6敗だと、大幅に地位を落とすことに繋がるし
一番最悪なのは、休場した場合である。
数年掛けてコツコツ築いた地位は、
双六の「スタートへ戻る」の升を引いてしまった時のように
水の泡となる。
それはまるで、夢から覚めたかのように。
それを彼等は痛いほどよく知っている。
何故なら、周りも、自分もそれを経験しているからである。
誰もが明日を掴むために、自分に出来る最高の相撲を取る。
技術的にも体力的にも、取るに足らないかもしれない。
しかし、何者かになりたい等身大の人間が
人生の集大成として見せる相撲にはその生き様が透けて見える。
そう。
幕下相撲とは、私達の生き写しなのである。

幕下相撲は、私達である。” に対して1件のコメントがあります。

  1. toitoi より:

    はじめまして。とてもいいコラムですね。幕下をじっくり観戦してみたくなりました。
    私はいつもテレビで観戦しているのですが、幕下のダイジェストって何時頃に放送されているんでしょうか?

  2. Nihiljapk より:

    >toitoiさん
    コメントありがとうございます。
    幕下のダイジェスト放送は無いですが、
    リアルタイムで有ればNHK BSサブチャンネルか
    大相撲協会公式サイトのストリーミング中継があります。
    録画であれば、無いことも有るのですがyoutubeで
    取組ごとにアップロードされているので、
    気になる一番があれば見てみるのも一興です。
    幕下に興味を持っていただいて大変うれしいです。
    これからの取組は、とにかく人間臭くていいですよ。
    いろいろ考えさせられます。

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