叩き上げのエリートと幕下相撲。
昨日は学生相撲のエリートの
完成度の高いが故の魅力について語ったが、
日本人エリートというのは実は
大学出身だけに限らない。
いや、むしろ日本人エリート枠という意味では
こちらの方が主戦力と言えるだろう。
そう。
中卒・高卒力士である。
団塊の世代が
泣いて喜ぶキーワードとして
「金の卵」があり、中卒の少年がこぞって
集団就職をしていた時代が有り、
中卒が一つのステータスだった時代があるが、
大学全入時代の今、中卒高卒が
優位性を持つ唯一の業界が
大相撲と言えるだろう。
3.中卒・高卒エリート
現在上位に位置する力士の中で、
中卒高卒に当たるのが、以下の通り。
・琴奨菊
・稀勢の里
・豪栄道
・豊ノ島
・栃煌山
そして、大卒に当たるのは以下の通りである。
・土佐豊
・嘉風
・豪風
・宝富士
…名前を出すと、将来性に致命的な差が生じている
ということが良く判るだろう。
そして、
尾車部屋は大卒の育成が上手い
という誰も注目しなかった事実にも
気付くことだろう。
一般人であれば、前者ですら
顔と名前が一致しないケースも多いが、
後者となると相撲ファンすら「誰?」
となることもしばしばであろう。
さて、そんなわけで中卒・高卒について
分析をしなければならないわけだが、
大卒との比較で言うと、
デビューから勝ち越しを毎回重ねて
幕下まで到達するという方が稀である。
むしろ、中卒・高卒であれば
三段目辺りが一つの壁となり、
一度は停滞するものだ。
とはいえ、有望な若手であれば
この辺りの壁はせいぜい1年程度で突破していく。
そして、やはり彼らを待ち受ける
本格的な壁こそが幕下なのである。
外国人力士は身体能力、
大卒は経験と総合力という明確な
ストロングポイントが存在していたが、
中卒・高卒について長所は
自信とセンスである。
中卒・高卒でこの世界に飛び込む者の多くは
それぞれのカテゴリの全国大会で
既に結果を残しており、
それなりの成功体験を持っている。
そしてこの時代なので、
こうした将来有望な少年の下には
有名な親方のスカウトが複数入ることになる。
成績は既に残している、
そしてテレビで見たような有名人が
自分に対して媚びを売るとなれば、
「オレって特別!」と思うことは
至極当然なのである。
ちなみに中学時代の知り合いが
相撲で全国大会に出たところ、
当時隆盛を極めていた出羽海部屋からスカウトを受けた。
両親と本人が親方ならびに当時の主力力士との
食事会に参加するなかで
「二子山部屋なら…」
という
大臣なら辞任レベルの
失言と共に破談になったということを
小耳にはさんだことが有る。
暴走した自信が成せる業であろう。
センスに裏打ちされたエリート意識に
経験が加わることで、
外国人や学生出身エリートにも対応出来るようになる。
引き出しに無い攻めをされると
アッサリ土俵を割るが、
ツボに入ると凄まじい力を見せる。
この若手は将来どのように成長するか、
そんな思いを巡らせることこそが
中卒・高卒エリートを見る楽しみと言えるだろう。
続く。