把瑠都の早期引退に見る、「巨漢力士29歳限界説」とは?

すこし古い話だが、把瑠都が引退した。
豪快な取り口に加えて温和で且つユーモアの有る
稀有な人柄の持ち主だった把瑠都の引退は
相撲界の大いなる損失で、誰もが彼の引退を惜しんだ。
かく言う私もその一人で、多分に漏れず
白鵬が衰えたとしたら、その後の相撲界は
把瑠都が引っ張っていくものだと信じて疑わなかった。
だが、白鵬は優勝を重ね、1年半前に幕内総合優勝を飾り
全盛期を迎えたと思われた把瑠都はその後輝きを失った。
何とも分からない話である。
さて、把瑠都の引退を語る上で外せないのが
このあまりに早すぎる決断だ。
今回の引退で、私は感覚的に何となく思っていたが
検証してみたいと考えた一つのことが有る。
そう。
巨漢力士の衰えの早さ、である。


曙然り、小錦然り。
加齢と共に急激に衰え、本来の姿が喪失されるのを
よく目撃していないだろうか?
巨漢力士は、あくまでも健康を維持することと
パワーで圧倒すること、そして相手のスピードを
殺すだけの懐の深さを武器として維持しなければならない。
だが、歳と共に体重は自らの肉体を蝕む。
巨漢故に怪我が増え、また体重が有るので引きに屈したり
体格の大きさゆえに相手のスピードについていけない。
休場は増える。
攻略法は確立される。
そうなると、彼らは急激に名前だけで恐れられない
存在に身を落とすことになる。
果たして、巨漢力士の花の命は本当に短いのだろうか?
私は、過去の名力士について検証してみた。
ちなみに今回は、衰えたと思しき時期については
私なりの基準で選定している。
ここで言う巨漢というのは、180キロ以上の力士ということで
共通認識を抱いていきたい。
◆巨漢力士の衰えた時期についての考証◆
体重 全盛期 主な実績 衰退期 主な出来事
把瑠都 189 27 幕内総合優勝 27 大関陥落
雅 山 182 23 大関昇進 29 前頭に定着
武蔵丸 224 28 横綱昇進 31 休場場所が続く
 曙  226 24 横綱昇進 28 2年間ほぼ優勝に絡めず
小 錦 260 27 綱取り 29 これ以降上位で2桁勝利できず
大乃国 210 25 横綱昇進 26 皆勤負け越し
朝 潮 186 27 大関昇進 29 これ以降2桁勝利1場所のみ
※体重は衰退期を参照しています。
大関以上を経験した巨漢力士がここ40年でこの7名のみであることから
100%断言はできないが、概ね傾向として言えるのは
「29歳巨漢力士限界説」
ということである。
決して私は力士に対してダメのレッテルを張りたいわけではないし、
事実武蔵丸のようにこの説の枠に囚われずに息の長い活躍を
見せた力士も存在している。
だが、一つの傾向としてこうした結果が出た、
ということだけは共有しておきたい。
加齢と共に、180キロを超える肉体で
相撲を取り続けることは大変難しい。
そもそも相撲というのはそう長い期間全盛期を張れない
競技であることは事実で、巨漢でなくとも
30歳以降も衰えなく取れる力士はそう多くない。
しかし、魁皇や霧島、千代の富士のように
歳を経ても維持できるスタイルもまた存在する。
今であれば恐らく白鵬もそこに位置しているだろう。
誰もが現役を長く続け、ベストな相撲を取ることに
注力していることだと思う。
今後は体重に対して注目していただけると、幸いである。
◇特報◇
「幕下相撲の知られざる世界」では300万アクセス記念ということで
第二弾イベントとして9月28日にオフ会を開催します。
日時場所は未定ですが、参加ご希望の方はプロフィール欄を
参照のうえメールをご送付ください。
ちなみにFacebookページです。
限定情報も配信しています。
https://www.facebook.com/nihiljapk

把瑠都の早期引退に見る、「巨漢力士29歳限界説」とは?” に対して2件のコメントがあります。

  1. しなびん? より:

    最近、個人的興味が沸いて、色々チェックすると
    だいたいカラダの出来始めた頃に(三段目〜幕下)でシャレにならないケガする人がかなり多いんですよね。
    んで、大抵が頸椎か脊椎やらかしてしまう。
    このクラスになると真っ向ブチカマシがそのまんま反作用として自分に返ってくるので、カラダが中途半端に出来てると体幹や首周りに筋肉がない若手だとモロに跳ね返ってくるのが理解出来る。
    (三段目クラスだと体重150オーバーが珍しく無くなるし。
    太りはじめで、カラダが出来はじめの十代〜二十代にはかなり危険なクラスだと思う事が多い。

  2. しなびん? より:

    さて、本題の巨漢力士の場合。
    膝周りの筋肉幾ら鍛えてもどーにもならんのが人体の構造。
    んで、下半身出来てる場合だと膝への衝撃をコシを割って膝直撃ではなく筋肉で支えてダメージを逃がすノウハウが相撲には存在するのですが、、、
    それを持ってしても軟骨へのダメージはいかんともし難い。自然回復したりとか基本無いですから、軟骨や靭帯は。
    晩年の武双山関も、実力云々抜きで
    「だめやこの人、膝が完全に終わっとる」
    のが見てて判ってしまう程、膝へのダメージは軽く見るコトが出来ません。
    まして、把瑠都関は…
    (筋肉ではなく、膝関節をロックして相撲取ってたので一切逃げの無い負荷が膝関節と骨に掛かってる。正直小錦関のがまだ…ってレベル。
    巨漢だからこそ下半身の筋肉のみで支える事が出来ず、関節に依存した加重をかけ過ぎるとあっという間に壊れる、というジレンマ。
    イニシエのノウハウはバカに出来ないですよね、、、

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)