葛藤の末に掴んだ、6度目の優勝。最強横綱を倒すために日馬富士が取った、ハイリスクな決断とは?
日馬富士が6度目の優勝を決めた。
横綱昇進後に不振を極め、事有る度に
批判を受けてきた彼が毎日素晴らしい内容で結果を残し続けた。
遂に白鵬まで破って、文句なしの優勝である。
先日の記事では大鵬北の湖型の横綱相撲からの脱却、
そして安馬の相撲への回帰、ということで
今場所の好調を評した。
出来ない相撲ではなく、自分にしかできない相撲を取ること。
相手に左右されない、スピード相撲。
序盤で流れを掴めば、彼を止められるのは
稀勢の里と白鵬だけなのだ。
そして今日はその白鵬との大一番。
日馬富士がいくら好調とはいえ、白鵬の形を許してしまえば
体格差も有り、ひとたまりも無い。
それは、これまで何度となく対戦している
日馬富士が一番よく分かっている。
では勝つためにどうすればいいか。
これは難しい話だ。
そこで日馬富士が選んだのは、攻めの決断だった。
立ち合い。
いきなり彼は左上手を取りに行く。
ここからはもう、安馬の相撲だ。
素早く白鵬の横から攻め、彼の巨体は無力化する。
恐らく現役最速であろう安馬の攻めは
あっさりと現役最強力士を陥落させる。
文章にするとたったこれだけの話だ。
これだけ期待値の上がった両雄の対決にしては
あっけない幕切れと言ってもいいかもしれない。
だが今回の勝因は、彼が場所中に一度はやる、
変化気味に左上手を取りに行く取り口だった。
もし取れなければ、相手は自分の懐に居るのだから
ほぼ勝負は終わってしまう。
また、この動きが読まれ、上手を許しても
その後の展開が相手の方が早かったとしたら
日馬富士はやはり負けてしまう。
結局この戦術と言うのは、まずは左上手を掴むこと。
そしてその後相手よりも早く動くこと。
この二つを遂行しなくてはならない。
この大一番で、日馬富士はこの勇気ある決断をした。
「もし負けたら」と考えたら、絶対に取れない一番だ。
そういう心の葛藤を彼は乗り越え、そして
白鵬を乗り越えたわけである。
ましてや彼の場合、これまでは全勝優勝が常で、
勢いに乗ったトランス状態の人間が、
恐怖感など全く思いも寄らない状態で
目の前の力士を叩きのめすスタイルだったわけだが、
今回の場合は稀勢の里に一度敗れている。
一度勢いが失われた状態になると、考える隙が出来てしまう。
葛藤の無い状態であれば思いもしないことを考えると、
迷いが生まれてしまう。
闘志を前面に出し、相手よりも早く動いて牛耳る相撲は
自分にワガママでなければ務まらない。
そういう状態から、日馬富士は葛藤の末にハイリスクな決断をし、
最強横綱に勝ったのだ。
これは、凄いことである。
今回の優勝は、絶好調の日馬富士が勢いによってもたらしたのではない。
生身の人間が、恐怖と向き合った末に掴んだ栄光なのだ。
1月は、どうなるのか。
アイツとの対戦は?
最強横綱の逆襲は?
とりあえず私は、来年の相撲カレンダーを買おうと思う。
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色んな意味で思い切った立ち合いだったとは思うんですけど、見た目ほどハイリスクではないのでは?という気がします。だってあの立ち合い、少なくともここ最近は、調子が上がらなかった場所も含めて百発百中ですよ。今回白鵬にすら通じたということは、佐々木主浩のフォークボールみたいなもんで、分かってても食ってしまう決め球なんじゃないかと思いました。