稀勢の里綱取り失敗。この事実が我々に伝える、残酷だが前向きなことを考える。

稀勢の里が2敗目を喫した。
序盤での2敗。
しかも豊ノ島と碧山。
言い逃れが出来ない状況である。
稀勢の里の綱取りは、5日目を以って終わった。
そう言ってしまって良いと私は思う。
ここ数場所、同じ光景をデジャブのように見続けてきたが、
少なくとも私は稀勢の里に期待し続けた。
だが、それは叶わなかった。
さすがに今日、23時に小田急線に揺られて帰る際、
このモヤモヤを整理するのには苦労した。
恐らくこのブログを読んでいる多くの方も、
私と同じような感情を抱いたのではなかろうか。
裏切られたことに対して、腹を立てて消化するのも
一つの手だろう。
可愛さ余って憎さ百倍という感情、
今の私にはよく分かる。
今まで期待してきた手前、
その魅力を忘れることは出来ない。
ここまで来たら結果はどうあれ期待し続ける、
というのも一つの考え方だ。潔いと思う。
だが、今の私にはどちらも出来なかった。
怒っても何も始まらないし、
無償の愛を施すには心がささくれ過ぎているからだ。
そこで私は考えた。
この事実が何を映し出すか、を。
すると、私は実はたまらなく残酷な事実から
目を背け続けていることが分かった。


そう。
今の稀勢の里は横綱の器ではない、ということである。
何を今更、と思うかもしれない。
そんなことは分かっている、と言われるかもしれない。
だが、これを受け入れることは、私にとっては
非常に革命的なことだった。
私が稀勢の里に期待したのは、現時点で横綱に成れるという
想いがあったことに起因する。
そう思わせたのは、白鵬や日馬富士に対する
素晴らしい取組の数々であり、
九州場所で鶴竜に対して見せた、劣勢を乗り切る力によるものだった。
こうしたポジティブな要因は、稀勢の里に対する
期待感を膨らませた。
だが、肝心のプレッシャーに対する弱さは
改善されることは無かった。
結局私は、ポジティブな要因を過度に評価し、
ネガティブな要因から目を背けてきたのである。
これだけ続けば、もう認めざるを得ない。
過度に期待し膨らんだ期待感は、事実を認めることで
急激に萎んでいった。
場所前のワクワク感は失せ、ただ冷静に
結果を流し見する自分になってしまった。
だがこの事実を認めると、非常に楽な気分に成った。
それは、この言葉には別の意味が有るからだ。
「今の」稀勢の里は横綱の器ではない。
つまり、将来は分からないのだ。
よく考えてほしいのだが、稀勢の里の歩みは
着実なのである。
4年前は、三役で不安定な成績を残していた。
3年前は、三役で安定して勝ち越せるようになった。
2年前は、大関に昇進した。
1年前は、安定して2桁勝てるようになった。
そして今、安定して優勝争いに加われるようになった。
非常に簡単なことなのだが、未来は分からないのである。
今は確かに横綱の器ではないかもしれない。
だが歩みを止めない限り、可能性は有り続ける。
他の力士は分からない。
だが、稀勢の里にはそういう可能性が有る。
勿論、これから同じ成長が出来るとは限らないし、
ひょっとしたらこれを越える成長曲線を描くかもしれない。
結局それは稀勢の里次第である。
来場所以降も落胆するかもしれない。
この事実を認めたところで、感情が動くことからは
逃れられないだろう。
だが、どんな結果が出ても、ニュースや新聞から
目を背けたい時が有っても、結局見続けることになる。
これで、いいのだ。
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稀勢の里綱取り失敗。この事実が我々に伝える、残酷だが前向きなことを考える。” に対して5件のコメントがあります。

  1. 287057 より:

    CM出演で先を越された遠藤に人気を奪われそうな気配です。
    実力もその遠藤が台頭する兆しがあります。
    主役交代は意外と早いかも。
    とはいえ、日本人力士期待の星として、孤軍奮闘の日々が報われるように、おしん横綱と謳われた亡き師匠の如く、遅咲きでもいい、開花してくれればと願います。

  2. 福岡市城南区の相撲好き より:

    稀勢の里の歩み、、    
    ご指摘のとおり、1年間単位で考えると、確実に成長していますよ。同感です。ありがとうございます。
    昨年は、5月場所から連続4度も準優勝しています。今回も多分、準優勝で5連続、、、連続してこんなに準優勝した力士は、いないのではないでしょうか?

  3. nihiljapk より:

    287057さん
    一度期待させた分だけ、今回駄目だったことは
    見切りを付けさせる結果になるかもしれませんね。
    遠藤が魅力的な相撲を取っていますし、
    それもまた仕方ないのかなと思います。
    しかし、結局自分に出来ることを続けるしかないので
    着実に前に進んでいけば、恐らく人は帰ってくるんじゃないかと
    思ってもいます。

  4. nihiljapk より:

    福岡市城南区の相撲好きさん
    「着実」では我慢できない人達が溢れていて、
    過大に求めたために今回の結果になったのだと思います。
    遠藤に対してもそうなのですが、
    実際の姿を把握できない状態で希望的観測が強まって
    勝手に裏切られてしまう。
    虚像を作っている時ほど楽しく、現実を観ると醒めてしまう。
    難しいところでもありますね。

  5. 碧海 より:

    十二日目現在で鶴竜が11勝1敗。
    もし千秋楽で白鵬に負けて2差になった場合・・・
    春場所では「綱取りの場所」だとかは騒ぐでしょうか?
    まかり間違ってもさわがないでしょう。
    勝って同星なら流石に一寸は言うでしょうけども。
    でもこのレベルで稀勢の里だと性懲りもなく騒いできたのです、
    「国産横綱」というレッテルがあるばっかりに。
    正直、ずっと前からバカバカしいことだと思ってます。
    初日の可愛そうなくらい茹で上がった顔を見て、
    「ほっといてあげたらいつかそれっぽいところまで育つかもしれんし、横綱がどうとかいう話はなしにしてあげて・・・」
    と思ってしまいました。

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