一年前に初めて稽古見学に行った私が、久々に北の湖部屋を訪れてみた。Part2 ある若手力士編

久々に訪れた北の湖部屋。
靴を脱ぎ、座敷に行こうとしたすぐそこに
当ブログ開設のきっかけとなった力士:吐合さんが居た。
いきなりのことに驚くが、ここは北の湖部屋なのだから当然だ。
厳雄さんに一礼し腰を下ろすと、眼下には
テレビ画面で普段見る顔が目と鼻の先に居る。
北太樹さん。
北はり磨さん。
鳰の湖さん。
北の湖部屋にとっては日常の光景でも、
普段観ていない者としては異空間である。
あれほど激しい相撲を取る力士達が、屈伸運動をする。
四股を踏む。
すり足をする。
ピンと張りつめた空気の中、この部屋のトップの力士達が
真剣な面持ちでひとつひとつの動きをすれば、
周囲にも緊張感が走る。
観ているこちらとしても、背筋が伸びる。
気が付くと私は、正座をしていた。
この後絶対に足を崩すことになると分かっていながら。
そうしなければならないような空気が、
この場には有ったのである。


まだ早い時間なので、申し合いは三段目以下の力士達が行っている。
そんな中、ゴムチューブでインナーマッスルを鍛える
北太樹さんが、申し合いに参加していない、
いかにも若い力士に対して何か話している。
実力的にまだ申し合いに参加できないのか。
それとも、何か理由が有るのか。
それは分からない。
だが、この若い力士について一つ言えるのは、
まだまだ体が出来ていないことである。
というのも彼はいい体をしているのだが、
脂肪の付き方が肥満体のそれを抜けていないのである。
重力に逆らえずに垂れる脂肪は、
彼がまだ力士に成り切れていないことを雄弁に語る。
この要素が残っているにもかかわらず関取を務めている
明瀬山が特殊なのだ。
そんな彼に対して北太樹さんは歩み寄り、何か教えている。
勿論彼にとって返事は「Yes」と「ハイ」しか有り得ない。
言われた通りに動き始める。
どうやらスクワットの仕方を教わったようだ。
腰を下ろす。
戻る。
腰を下ろしたところで、北太樹さんが止める。
どうやら、彼のスクワットは教えたとおりに出来ていないらしい。
そしてそれは、知ってか知らずか、楽をしているらしい。
しっかりと腰を下ろすように促す。
みるみるうちに苦悶の表情を浮かべ、
ヘナヘナと倒れる。
表情は柔和だが、当然ここで終わらせるはずもない。
部屋頭に続けろという空気を出されては、
苦しくても立ち上がらざるを得ない。
立ち上がるが、何しろ体が出来ていないので
この苦しいスクワットに対応できない。
何回か繰り返しただけで、もう続けられない。
北太樹さんは声を荒げるでもなく、怖い顔をするでもなく
淡々とスクワットに付き合う。
しかし、淡々としたところこそ一番恐ろしいのだ。
座敷からのアングル上、正面に若手。
後姿の北太樹さんという構図なのだが、言葉ではなく
背中が語っているようにすら見えるのである。
そう。
力士には言葉は要らない。
態度と、結果で示すのだ。
手持ちの名鑑を引く。
そうか。
若手の彼は、高根君と言うのか。
スクワットが出来ないところを、私は知っている。
番付を上げたら、私は今日のことを思い出すだろう。
続く。
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