白鵬の強さは、圧倒的な取りこぼしの無さである。高安の普段着の相撲による白鵬撃破で期待される、「前向きな地殻変動」とは?

高安が白鵬を撃破した。
ここまで好調の高安が立ち合いからの攻防で互角、
そして呼び込んだところで白鵬が態勢を大きく崩し、
何とか立て直しを図るも、そのまま手を付き大波乱に。
今日の結果は白鵬がやらかしたが故であることは
誰の目にも明らかだが、私も含めて相撲ファンであれば
この結果は大きな驚きであった。
よく知られていることではあるが、
白鵬の特徴として平幕に対する圧倒的な強さが挙げられるからだ。
先ほどツイッターで呟いた内容を引用しよう。
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【白鵬の金星配給一覧(26年版)】
19年秋:豊ノ島
20年春:安美錦
20年秋:稀勢の里
21年秋:翔天狼
22年九州:稀勢の里
24年春:豊響
25年初:妙義龍
26年九州:高安←NEW!
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対平幕戦では今日まで82連勝という話さえ聞こえてくるし、
10日目までの過去2年の成績が118勝2敗というデータも有る。
平均的な成績の横綱である日馬富士が
過去2年で15個の金星を配給していることを考慮すると、
この強さが如何に傑出しているかがよく分かるだろう。
余談だが、稀勢の里は過去2年で平幕相手に
16敗していることも付け加えておく。
このデータを持ち出して私が一体何を言いたいか。
それは、白鵬が平幕力士にとって
いかに勝ちをイメージしづらい力士か?ということである。
無欲の勝利という言葉も有るが、
1年に1度しか平幕を相手に負けない力士に対して
ポジティブな心構えで取組に臨めるだろうか?
白鵬と平幕の対戦は、大抵の場合相撲になっていない。
立ち合いでいきなり白鵬有利な形を作られるか、
もしくは立ち合いから形を崩して自滅するか。
それが私には不満だった。
普段もっとやれる力士達が、白鵬の前だと何も出来ない。
稀勢の里の前では120%の力を発揮し、名勝負を繰り広げるのに。
これでは、戦う前から勝負は決している。
序盤に圧倒的な成績を残し、ライバル力士達は
当然のように取りこぼす。(これは責められないことだが)
星の上でリードした白鵬は、心理的にも肉体的にも
終盤を優位な状態で迎える。
白鵬が優勝に一番近い存在であり続けたのは
この序盤力によるものが大きかったのだと私は考えていた。
だが、ひょっとすると今日の結果は始まりなのかもしれない。
というのも、勝ちを掴んだのが照ノ富士でも遠藤でも逸ノ城でもなく、
高安だったからである。
高安は確かに優秀な力士だが、その期待というのは
まずは三役に定着し、その後じっくり力を付けた後で更に上へ、
というものである。
現時点で特別ではない存在が、今できるベストを尽くして
白鵬に勝利したこと。
この事実は同じような境遇の力士達に勇気を与えるのではないだろうか。
今は先述したような、現時点で将来を大きく嘱望される
若手が数多く出現していることに加えて
勢や碧山、そして高安のように時間を掛けながら
着実に力を付けて上位を脅かしつづある中堅も増えてきた。
そう。
過去に白鵬がやらかした時とは状況が大きく異なるのである。
あと一歩力を付ければ三役も目指せるし、
大関獲りの足がかりを掴めるかもしれない。
そういう野心を抱ける存在が、そこかしこに存在している。
しかも、今日の高安は彼のベストを尽くしたのではなく
今場所好調な相撲をそのまま白鵬にぶつけた、という内容だった。
野心的に、ポジティブに。
力を付けた力士達がそういう心境で自分のベストをぶつけてきたら、
白鵬はどうこれに応えるのだろうか。
闘う前から白鵬に敗れている時代は、もう終わりにしよう。
自分の全てを白鵬の前に晒し、そして白鵬も応戦する。
こういう攻防がお互いを高め合い、更に素晴らしい相撲が観られれば
こんなに嬉しいことは無い。
自分のベストをぶつけてくる相手を常に圧倒できるほど、
相撲が簡単でないことを我々はよく知っている。
新たな時代の扉が開くことを期待し、
2014年はその変化が見られた一年ではあったが
唯一変わらないのは白鵬の圧倒的な存在感だった。
序盤すら油断ならない日が来れば、相撲は更に面白い。
前向きな地殻変動によって福岡の後部席が埋まる、
そんな2015年が到来することを切に望む。
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