33回目の優勝という「呪い」から解放された白鵬。新たな局面を迎える大横綱に期待することとは?

白鵬が33回目の優勝を果たした。
これまでと比較すると少し危ない取り口が目立つ中、
それでも勘所は抑えてきっちり勝つ。
これが勝つ力士の凄さなのかと思い知らされる。
昨日の稀勢の里との一番は、
今場所の白鵬を象徴するような内容だった。
先手を取って、稀勢の里を押し上げる。
徳俵の付近で稀勢の里の左下手が入る。
構わず攻める白鵬。
土俵際で稀勢の里が捨て身の投げを放つ。
このような展開だと、攻め急いだ力士が
大抵逆転の投げを喰って敗れる。
私は投げが出た時、稀勢の里がこの一番を制したと思った。
だが体制有利だったのは、むしろ白鵬の方だった。
考えてみるとこの1年の白鵬は、
この姿勢が如実に出ていたように思う。
勝つことに貪欲であること。
それこそが大関横綱との違いを産んだのではないだろうか。
夏場所で果し合いに来た稀勢の里を出し抜いた、
あの立ち合いを思い出してほしい。
殺気立つ稀勢の里に対して、呼吸ひとつで
勝負を決めた白鵬。
良い勝負をすることではない。
勝つことが譲れなかったのである。
そしてこの姿勢がこの一年、物議を醸すことになった。
勝ちに対して貪欲であるがために、
大横綱らしからぬ行動を起こすことにも繋がったのである。
豊真将へのダメ押しは、その最たるものだと思う。
素晴らしい人間性とは対極の、あまりに黒すぎる白鵬。
最初はそんな白鵬に戸惑いを覚えていたのだが、
闘争心が暴発する白鵬を見慣れてくると、
徐々にその行動を諌めるようになった。
勝ちに貪欲であることが物凄い相撲の原動力であり、
そしてそれこそがファンの心を掻き毟ることになったのである。
だがここで、白鵬は新記録を達成した。
それは同時に、ここ数年白鵬を支え続けてきた
一つの目標が無くなることを意味している。
恐らく白鵬は来場所以降、
ここ数年とは異なる姿を見せるのではないかと思う。
横綱として勝ち続けることが何より大事である、
ということに変わりは無いだろうが、
勝ちにこだわる強烈な動機が無くなった今、
相撲に対する向き合い方が微妙に変化するのではないかと予想する。
ある意味で33回という数字は呪いだったのかもしれない。
記録が白鵬を変えたという言い方も出来ると思う。
凄味の有る相撲でありながら、必ずしも共感はできない。
しかし周囲の理解をかなぐり捨てたからこそ、
相撲内容は切れ味を増す。
苦しい時代を支えた白鵬だからこそ、
このような変化を許せないという方も多かった。
記録に邁進することによって
白鵬とファンとの溝が出来たことは事実である。
だが、白鵬がこの呪いから解き放たれることによって
ひょっとしたらファンも同じ呪いから
解き放たれることになるのかもしれない。
肩の力が抜けた新たな白鵬は、
あの頃の白鵬に戻るのかもしれない。
名実ともに歴史上で最高の力士となった今、
周囲の声や過去の自分を俯瞰できるようになるのかもしれない。
そうした時に、また新たな白鵬が誕生する。
白鵬が土俵に立つこと。
それ自体が既に歴史なのである。
33回という呪いから解放された白鵬は、
この後どのような歴史を紡ぐのか。
楽しみでならない。
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33回目の優勝という「呪い」から解放された白鵬。新たな局面を迎える大横綱に期待することとは?” に対して1件のコメントがあります。

  1. marumaru1226 より:

    40回越えと
    さらなる
    土樋態度向上と
    宮城野部屋の後輩達の底上げを期待してますし
    白鵬土俵入りに
    宮城野部屋の後輩力士の太刀持ち、露払いを期待してます!

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