白鵬休場で改めて考える、日本出身力士優勝の可能性。数値的にも心情的にも期待を寄せられる稀勢の里の凄さとは?

白鵬休場。
言葉を並べてみても、どうにも「白鵬」と「休場」が結び付かない。今日もテレビでこのニュースが報じられ、白鵬の写真と休場という言葉が躍っても、そういうアナウンスが流れても、信じ難いものが有った。結局15時40分になったら例の土俵入りを見せて、2秒で取組を終えて悠然と帰ってくるような気がしていた。
だが、結局白鵬が現れることは無かった。
前代未聞の9月場所が、始まったのだ。
朝青龍引退後は白鵬が優勝争いの中心に居て、「白鵬か、それ以外か」という構図が数年続いた。2010年3月以降の32場所で23回の優勝。この間の白鵬以外の優勝の内訳は、日馬富士5回、把瑠都1回、旭天鵬1回、鶴竜1回、照ノ富士1回。
優勝経験の有る力士さ2名しか居ない、新時代の9月場所。そして鶴竜と豪栄道、琴奨菊に既に土が付いた。果たしてこれから何が起きるのか。予測不能としか言いようが無い。等しく優勝の可能性が有る中で、議論を呼び続けてきた例の言葉がまた浮上しつつある。
「日本出身力士の優勝は?」
外国人力士が支え続けてきた最近の大相撲。相撲の精神を体現してきたのは他ならぬ外国人力士だった。日本出身力士はそこに向き合い、過大な期待を背負いながら期待に殉じ続けてきた。外国人力士達に対して感謝しながらも、日本出身力士に対して期待してしまうのは失礼という概念が最近では支配的で、話題を口に出すことすらタブー視されつつあるところではあるが、相撲中継では定期的に話題になる。
個人的にはそこに差別意識が有る訳ではなく、単にそれは郷土力士の延長線上に有る概念だと思うので、期待を寄せることそのものがごく自然なことだと捉えている。だからこそ話しづらい話題ではあると思うが、この視点で相撲を観ることは止められないと思う。
さてそれでは少し考えてみたいのだが、仮に日本出身力士が優勝するとしたら、それは果たして誰なのか。優勝ラインは、この異常な状況なので恐らく12~13勝といったところだろう。つまり、白鵬が居ない条件下で最低12勝出来ることが条件となる。
そこで「白鵬が居なかったら」という視点を考慮し、過去3年で11勝したことが有る日本出身力士を洗い出してみようと思う。実力者の奮闘の可能性を考慮して過去3年、平幕優勝の可能性を考慮し幕内での11勝以上の経験を、そして最もモノを言うであろう、過去1年の実績をそれぞれまとめた。
■幕内で3年以内に11勝以上したことが有る日本出身力士■
力士 過去3年 過去1年 上位総当たり圏内
==========================
稀勢の里:8    3    8 
琴奨菊 :2    0    2 
豪栄道 :4    0    4 
栃煌山 :2    1    1
妙義龍 :2    0    1
隠岐の海:3    1    0
嘉風  :1    1    0
高安  :2    0    0
宝富士 :1    0    0
徳勝龍 :1    1    0
遠藤  :1    0    0
豊ノ島 :1    0    0
千代大龍:1    0    0
勢   :2    0    0
千代鳳 :1    1    0
==========================
幕内総合優勝はほぼ三役以上であることを考慮すると総当たり圏内での実績と、過去1年での実績を加味してこの表を見てみると、この中で可能性が高いのは稀勢の里と言わざるを得ない。
稀勢の里に対する期待というのは難しいもので、これもまた議論の対象になりやすい。力の及ばぬ力士に対して過大な期待を抱くことを諌めたい気持ちも分かるし、稀勢の里に想いを寄せるがために他の力士、特に外国出身力士に対してリスペクトが無いように映りやすいということもその理由として挙げられるのは重々承知している。
確かに期待を裏切り続けてきたかもしれない。だが郷土力士として今、外国出身力士に対抗できる可能性が残されているのは、やはり稀勢の里しか居ないのである。序盤で碧山に敗れ続けても、腰高な部分を付け込まれても、土俵際で逆転を喰らっても、緊張が瞬きに現れても、それでも稀勢の里は数字の面からも実績を残してきた。
とはいえ数字はあくまでも数字だ。
我々は結局主観で相撲を観ている。主観を排するために数字という裏付けを求めているのだが、最終的に行き着くところは主観だ。だからこそ、客観的な指標は指標に過ぎない。稀勢の里が真に凄いのは、数値的に優秀であることも一つ有るが、それ以上に期待を裏切り続けても期待を背負い続けられるところに有ると私は思う。
これだけ裏切れば、もう誰もが離れてしまう。過去に一過性で期待を集めてきた力士達は、今同じ期待を背負っていない。何故なら期待と現実の実力のギャップに気付くと、人はその力士に対して興味を失うからである。期待を裏切られるのには、大きな痛みを伴う。だからこそ、人は裏切られたらその後で同じ期待を抱かないように予防線を張るし、傷つく前にその人から去ることも多い。
だが、稀勢の里はその限りではない。期待を裏切った後で白鵬を、照ノ富士を、そして鶴竜を完膚なきまで叩きのめす。だから、稀勢の里を諦められないのである。数字や裏切りの歴史を超えて、この大チャンスの場所で日本出身力士として期待される稀勢の里。千載一遇の大チャンスに思い切り期待して、そして思い切り裏切られてもいいと思うのだ。
余談だが、幕内で11勝以上の経験が有る力士について外国出身力士バージョンも作ったので、こちらも参照していただきたい。
■幕内で3年以内に11勝以上したことが有る外国出身力士■
力士   過去3年 過去1年 上位総当たり圏内
==========================
鶴竜   :7    3    7
照ノ富士 :3    3    3
栃ノ心  :1    1    0
大砂嵐  :2    2    0
逸ノ城  :1    1    0
魁聖   :1    0    0
臥牙丸  :2    1    0
==========================
白鵬   :18   6    18
日馬富士 :9    3    9
==========================
◇お知らせ◇
幕下相撲の知られざる世界のFacebookページはこちら。
限定情報も配信しています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)