何故大卒力士の多くは、横綱大関の居る部屋を選ばないのか。
先日Ustream配信をした時のこと。
「次の大関は誰だ?」という内容の資料の中で、一つ気になるトピックが有った。大関の多くは横綱大関が在籍している部屋から生まれる、というのだ。
遡れば若貴や武蔵丸、武双山と雅山、出島はこれに類する。最近の事例で言えば照ノ富士、琴奨菊がそうだ。更に言えば稀勢の里や豪栄道も、三役定着クラスの力士を数多く擁する部屋の出身である。
白鵬や鶴竜は小さな部屋の出身であり、昇進の必須条件とは言わない。ただ、力士として強くなるための一つの方法として、強い力士が身近に居る部屋に在籍するという方法が有ることは間違いない。
良い手本が近くに居ればその技を盗むことも出来るし、少し甘えが生じれば叱咤激励されること請け合いだ。立場が上になれば、自分を律するのは自分だけになる。場合によっては親方すらアンタッチャブルということすら有ると聞いている。
環境が全てではない。
しかし、環境が力士を強くすることも有る。
それは歴史が証明している事実なのだ。
さて最近少し気になっているのが、大卒力士のことである。
幕内中位までは番付を駆け上がるが、その後大関はおろか三役や幕内総当たりの地位まで定着することもあまり無い。先日のインタビューでも、西岩親方がスカウトした際に中卒高卒での入門を渋られることが多く、その大きな理由が「せめて大学は出したい」ということを明言されていた。つまり、大卒を選択する力士の割合は増えているということだ。
相対的に大卒力士が増えているのに、三役すら定着できない。いかに上位に外国人力士が増えているとはいえ、これは由々しき事態である。果たして現在幕内に居る大卒力士の在籍部屋はどうなっているのか。
◆主な大卒日本人力士の在籍部屋◆
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嘉風(関脇):尾車部屋
宝富士(小結):伊勢ヶ濱部屋
松鳳山(前5):二所ノ関部屋
妙義龍(前6):境川部屋
正代(前6):時津風部屋
豪風(前7):尾車部屋
千代大龍(前8):九重部屋
徳勝龍(前12):木瀬部屋
英乃海(前12):木瀬部屋
御嶽海(前13):出羽海部屋
大翔丸(前13):追手風部屋
里山(前15):尾上部屋
明瀬山(前16):木瀬部屋
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誉富士(十3):伊勢ヶ濱部屋
遠藤(十6):追手風部屋
常幸龍(十6):木瀬部屋
石浦(十8):宮城野部屋
剣翔(十9):追手風部屋
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宇良(下2):木瀬部屋
大輝(下8):八角部屋
坂元(下11):追手風部屋
山口(下26):宮城野部屋
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石橋(三付出):高砂部屋
小柳(三付出):時津風部屋
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その多くは大卒力士が数多く在籍している部屋か、もしくは既に幕内中位程度の力士を要している部屋、更にはこれから強くしようとしている部屋に大別されることが分かる。逆に現在横綱大関が在籍している部屋に所属している事例は少ないのである。
あらかじめ断っておくが、私は決して「横綱大関が居る部屋を選ばないのは甘えだ」とか、「大卒力士が多く在籍している部屋を選ぶのはぬるま湯に漬かりたいから」とか、そういうことを言いたいわけではない。強くなるための部屋選びをした結果、このような結果になっていると理解している。
大卒を育成するのが上手い部屋、叩き上げを育てるのが上手い部屋も有るだろう。更には、部屋にはその部屋の相撲のスタイルが有るとも聞いている。それらを総合的に判断してのことだと思う。
ただ、そのように判断しているとはいえ、解せないことも有る。例えば、伝統的に優秀な力士を数多く輩出している佐渡ヶ嶽部屋を大卒力士達が選ばないことだ。
いずれにしても横綱大関とは言わなくても、三役や上位総当たりといったラインに定着すればその判断に一定の理解は出来ると思う。今もどかしいのは、大卒の質を考慮するともっとやれるのではないか?という想いが有るからである。
結局上位に居る日本人力士の多くは、中卒ないしは高卒だ。だが中卒力士も高卒力士も数が減ってきている。これからの大相撲を支えるのは、間違いなく大卒力士なのである。
最善の部屋選びを。
そして、その部屋で最大限に力を伸ばしてほしい。
私が言いたいのはそれだけである。
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