優勝を決する一番で変化する覚悟こそ、白鵬の強みである。
変化での決着。
飛び交う怒号。
野次。
これでいいのか。
いや、良い訳がない。
少なくとも観客が観たい取組と、白鵬の取組には明確に開きが出ている。是非は個人の価値観に委ねられるが、かなりの割合で否定的な意見が出ている。むしろ白鵬の取組内容を擁護する声を探す方が難しいほどだ。擁護する意見についても、これまでの功績を考慮してのことである。
観客も、親方も、横綱審議委員会も、マスコミも、そういう取組の後には厳しい意見を提示する。当然白鵬の耳にも聞こえているし、揺れることも有るだろう。
それでも今の白鵬は、勝負の一番で変化することが有る。全て分かった上で、その先に何が待ち受けているかを受け入れた上で、それでも変化するのだ。
その覚悟こそが、白鵬の強みである。そしてその覚悟が、稀勢の里にも豪栄道にも足りなかったのだ。
思えば稀勢の里と豪栄道の一番で、白鵬は考えられる限りで最速の立合を見せた。白鵬は誰よりも研究している。つまり、稀勢の里と豪栄道はその立合を受け止めるしかないことを十分理解していたのだ。つまり、覚悟が足りないことを白鵬は見抜いていたのだ。
今日の白鵬の取組は、皮肉にも白鵬の今の強さを象徴していたわけである。
稀勢の里も豪栄道も、試されている。3横綱に有って彼らに無いものが浮き彫りになった。
白鵬を相手でも勝負に徹することが出来るのか。罵声を浴びながら勝つ覚悟が有るのか。観客の大半が会場を去るような形になろうとも、その一番を勝つためにあらゆる手段を尽くす覚悟が有るのか。
稀勢の里は琴奨菊戦で、その覚悟を見せた。
白鵬が相手でも、それが出来るのか。
これは明確な分岐点だ。
二人はどうするのか。
5月場所まであと1ヵ月半しかない。
しかし、1ヵ月半も有るのだ。
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