「神ってる」豪栄道の快進撃。苦難の2年間の集大成を見よ。

カド番で迎える9月場所。
2年間大関としての勝率が5割を少し上回るほど苦しみ続けた力士が、ここまで12連勝。
大関としての低迷。
そして、この快進撃。
二つの事実を並べると、今の豪栄道は流行り言葉でこう言い表されることになる。そう。「神ってる」のである。
前に出る豪栄道はとにかく強い。
一度中に入れると手が付けられない。
腰が伸びて、勝負は一瞬にして決する。
それだけではない。中に入れないことで焦らない。チャンスが来るまで攻めを受けられる。無理に入ろうとして態勢を崩され、バンザイの態勢になることも無い。
ここまで豪栄道の良さだけが出た場所を、私は知らない。攻めが冴えわたっていても、攻めが良過ぎるがために崩し切れないのに前に出てしまうことも有った。その墓穴を掘るまいとして攻めを自重し過ぎて決め手を失い、反撃を許して敗れるというパターンも有った。
攻めが良ければ守りに綻びが出る。守りを意識すれば攻めのバランスが崩れる。相撲というのは本当に難しいと思う。
今の豪栄道は、攻めと守りの調和が絶妙だ。どちらも出来るからこそ、どのような場面でも対応できる。対応できるからこそ、無理をしない。無理はしないが、攻めが良いから確実に決められる。
良い部分が出るのも豪栄道だが、悪い部分が出るのも豪栄道だ。これは豪栄道なのだろうか。別の誰かとさえ思うほど、今の豪栄道は全てに於いて「神ってる」のである。
そして私は思った。初優勝の時は大抵どの力士も「神ってる」ということだ。「神ってる」状態になるには、3つのポイントが有ると私は考えている。
まず序盤だ。序盤戦でミスをしないこと。まずここでつまずくから「神ってる」状態にはなれない。
次に、ターニングポイントとなる取組だ。「神ってる」状態になりかけの力士同士の対戦なので、当然激戦になる。ここで良さを出すことで一気に持って行ければ「神ってる」状態に近づくことになる。
そして最後に、終盤戦での大一番だ。「神ってる」を完璧にするためにも、ここで出てくる強力なライバルを押し切ることだ。その場所で一番良い力士が登場するため、ここで躓いてしまうことも多い。
更には、私は「神ってる」状態に成れる力士と成れない力士が居るとも考えている。
一番「神ってる」になりやすいのは、突き押し相撲の力士だ。突き押し相撲の力士が前に出る相撲で勢いに乗って、そのまま優勝というパターンはこれまでも多く有った。平幕優勝の時の琴錦など、その典型例と言えるだろう。佐渡ヶ嶽部屋の力士に多く有ると言えると思う。
相撲というのは、15日間良い取組だけを続けるのが大変難しい競技だ。普段であればどこかで間違えてしまう。普通の取組をしたつもりが、相手に上回られてしまう。それだけで、優勝争いからは後退してしまう。
突き押し相撲が乗ってくると、この間違いが無くなることが有る。1年間のリーグというスパンではなく、15日間の短期決戦だからこそ「神ってる」に成れる力士が優勝することも有る。
ただ「神ってる」を一度経験した力士は、その後変わることが有る。そこが初優勝の面白いところだ。最初は「神ってる」のかもしれない。だが、その時の相撲を再現できるようになるのが、初優勝の持つ魔力だ。
この豪栄道を「神ってる」というだけで終わらせたくないし、大関の座を守ることに苦しむ姿は観たくない。それほど豪栄道は苦しみ続けた。最初は大関が豪栄道を縛っているのだと考えていたが、それが2年続くとさすがに実力だと考えざるを得なくなった。
「神ってる」豪栄道が凄いというだけだと捉えられる方も居るかもしれない。違う。大関に潰される力士も多い中で、12日間で「神ってる」ところまで持ってきたこと。これが素晴らしいことだ。
安定して成績を残すことが大関としては求められる。その重圧の中で、不本意な相撲を取りながら地位を守ることがどれだけ難しいことか。それでも、豪栄道は2年間大関だった。力を発揮できずとも、発揮できない豪栄道が常態化しようとも、大関の地位を守り抜いた。今の「神ってる」豪栄道は、苦しんだ2年間の集大成なのである。
「神ってる」豪栄道が成し遂げる姿を、目撃しよう。そして、それを「神ってる」にしない豪栄道の今後に期待しよう。
さぁ、今日は豪栄道祭だ。
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