なぜやくみつるさんの大相撲に関する意見は、響かないのか。

やくみつるさん。
大相撲のことをとにかくよくご存知のやくみつるさん。相撲の歴史から最近の相撲事情に至るまで、本当によくご存知だ。その興味は単に幕内十両に留まらず、幕下以下にまで及ぶ。
よくご存知という言い方を元再発防止検討委員にするのは失礼かもしれないが、本当に博識な方だ。メディアに出演した時は、やくみつるの役割を果たしている。
やくみつる的な役割というのはデーモン閣下とも山根千佳さんとも少し異なる。デーモン閣下は相撲ジャーナリズム的な観点からの硬質な相撲を語るという役割を、山根千佳さんはアイドルという立場でありながら相撲に詳しいという役割を果たしている。
悪魔に対してフラットなジャーナリズムを求めるのは色々と倒錯している感は有るが、それはデーモン閣下と相撲ファンとの信頼関係が有るからこそ成立しているのではないかと思う。山根千佳さんについてはアイドルというポジションである以上、100人中100人との信頼関係を構築するのは難しいが、一定の割合で信頼を勝ち取れたことは素晴らしいのではないかと思う。
やくみつるさんの役割は、主に三つだ。一つは、その博識から最近の相撲事情を語るということ。もう一つは、シニカルな視点から相撲をスカして語るということ。更にもう一つは、元再発防止検討委員の立場からジャーナリズム的な役割を果たすということだ。
デーモン閣下や能町みね子さんがそれらの役割を果たす機会が増えたため以前と比べると相撲に於けるやくさんの出番は減ったように感じているが、それでも2016年に大相撲について語れる識者というとやくみつるという名前は登場してくる。大相撲について語り部は求められているが、結局その役割を担える人は限られている。
しかし、デーモン閣下や能町みね子さん、そして山根千佳さんと比べると、私はやくさんのファンを見たことが無い。そして不思議なことに、かなり特殊なことを話している割には、やくさんの語る概念が浸透している気配も無い。遠藤が良い相撲を取っている時に下半身が安定していることを「遠藤ペンタゴン」とやくさんは一貫して呼んでいるが、これに追従する人は相当少ない。やくさんのメディア露出とこの概念の連呼度合いを鑑みると、相当少ない。疑問に思われた方はツイッターで検索することをお勧めしたい。想像以上に少ないことに驚くはずだ。
では一体何故、やくみつるさんの意見はメディア露出に見合うほど響かないのか。それは、やくさんが元:再発防止検討委員という立場でありながらリスク無き言論に終始していることに有ると私は思う。
これほどまでに大相撲に関与しているやくさんだが、実は大相撲にとって良からぬ出来事が起きた時にコメンテーターとして先頭に立って苦言を呈することが無い。数年前に例の問題が起きた時も、白鵬がやらかした時も、そういう役割を果たしていたのはやくさんではなかった。
朝青龍も白鵬も批判したが、やくさんは批判の急先鋒という立場ではなかった。それは、ある程度世論が彼ら二人に対して批判的な方向で舵を切ったからだった。遠藤の改名についても、同じだった。そこには批判を覚悟で流した血が有る。リスクが有る。当ブログはそうした議論の度に、何度となく閉鎖の危機を迎えてきた経緯も有る。
やくさんがそういう世論の動向を見定めた上で批判しているのか、それとも単にタイミングが少し遅かったのかは知らない。ただ、自らの言論で世論を傾けているのではなく、結果的に世論が傾いた後で批判に相乗りする形になっているのは事実だ。
テレビというのは本当に正直だ。デーモン閣下が2年前に白鵬に踏み込んで意見した時、相当大きな反響が有った。それはデーモン閣下がリスクを負い、立場を失うリスクをも承知の上で言葉を選びながら言うべきを言ったことを視聴者が理解したからだ。
言葉の重みやリスクの大きさは、雰囲気で分かる。あの時のデーモン閣下の覚悟は相当なものだった。良いか悪いかは別にして、やくさんはコメンテーターとしてそうしたリスクは冒さない。だが、結果的にリスク無きところで批判を被せているのだとすると、これほど格好悪く映ることは無い。
能町さんのように博識とスカしに徹してしまえば、そうしたリスクは無い。だが元:再発防止検討委員という肩書を持つ以上、ジャーナリズムを求められることも有る。肩書が有るからこそ、ある程度当たり障りの無い範囲で批判しているのかもしれないが、それは肩書を汚す行為でもある。「再発防止検討委員」という肩書にはそれほどの責任が求められるのである。だからこそ、やくみつるさんが結果的に勝てるケンカに特化しているのを目の当たりにすると苛立ちを覚えるのだと私は思う。
残念ながら、そうした姿勢には再発防止検討委員が求めてきた品格は無い。
品格を求めるのであれば、自らも品格を示すのが筋というものだ。
繰り返し言うが、私にはやくさんが意識的に世間に相乗りする形で批判をしているかは分からない。ただ、そのように映る言論を繰り返してしまっているということは、元:再発防止検討委員という立場から理解せねばならないと思う。
肩書とは本当に難しいものだ。
役割を担うと、相応の責任を追うことになるのだから。
吐いた言葉は全て自分に返ってくる。
これほど怖いことは無いと思う。
肩書とは、それほど怖いものなのである。
追記:
やくみつるさんは横綱審議委員ではなく、再発防止検討委員でした。
文中訂正いたします。
◇次回Ustream放送のお知らせ◇
10月31日 21:00~23:00(予定)
テーマ:
①豪栄道が11月場所優勝した時の横綱昇進は是か非か(アンケート企画)
②最強関脇は誰だ?(@Search_net_box氏 プレゼン企画)
放送に際して、以下アンケートを取ります。
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問1:豪栄道が11月場所優勝した場合、横綱昇進させることに賛成ですか?反対ですか?
問2:問1について賛成もしくは反対の理由を教えてください。
問3:あなたの考える、横綱昇進基準について教えてください。
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  1. TCE00074829 より:

    やくみつる氏は、横綱審議委員であった事実はありませんよ。
    やく氏が務めたのは、2007年に起こった時太山暴行死事件を受けて発足された再発防止検討委員会(2009年の大麻問題“再発”を受けて「生活指導部特別委員会」へと改称し、2012年に解散しました)の委員です。彼は2007年の発足時から2010年まで任にありました。

  2. 笑岩 より:

    初めてコメントいたします。この記事を拝読して少し自分なりに考えたことを書いておきたくなり投稿いたしました。
    個人的には、やくさんは今角界ではこんなことが起こっているのですよ、ということを伝える「池上彰的」ポジションなのだと理解しています(巧拙は別にして)。
    池上さんは独自の尖った意見を言いません。しかし、「政治有識者たち」の空気に迎合していろいろな意見を紹介することはあると思います。一般の人々にとってはそれが新鮮で、かつ求めている情報なのでしょう。まあ、彼の番組は家族が見ているのを横目で見るくらいなので、この認識も怪しいのですが。
    やくさんも同じなのではないかと思います。一般のメディアに出て、角界の問題を説明し、それに対する「有識者たち」の意見を紹介する。それがやくさんが求められている役割なのではと思います(くり返しますが、巧拙は別にして)。そしてこの役割を果たす人は、他のメディアでも独自の尖った(=興味深い)意見を言うわけにはいかなくなるでしょう。バランス感覚があまりないとみなされてしまうと、この役割はできなくなるので。
    まあ、これは相撲オタクの私が考えたことですから、的外れかもしれません。実際私もやくさんの発言を注視したことがないですからね(笑)。ただやくさんがリスクを取らないのは、上に述べたような理由もあるのではないかと思っています。池上さんもリスクある発言はしないですからねえ。まあ、やくさんは自分の意見として言っているという違いはありますが。
    長文なことでおわかりだと思いますが、やはり全くまとまっていない意見です。どなたでも何かコメントいただければ幸いです。

  3. ガンバレ豊響 より:

    説得力がないのは、マスコミへの露出度が低いからでしょう。遠藤ペンタゴンについては、遠藤が膝に重症を負ったから、なかなか漫画みたいな表現にそぐわなくなったからでしょう。八百長に関しては、微妙な問題であり、簡単には指摘出来ないはず。どうしても内輪の話しになりがちです。旭大星と千代丸の一番とかでもね。

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