4横綱最後の砦:日馬富士。苦境に喘ぐ中、日本人より日本人らしい生き様に期待する。

2勝3敗。
上位との対戦を残して、この成績だ。
本来ならば、成績の悪い力士には滅法厳しい横綱審議委員会の諸先生方がここぞとばかりにマスコミの前で苦言を呈することだろう。実に簡単な仕事だと思う。
そしてマスコミもまた、本来ならばこういう成績の力士に対しては意地の悪い記事を書くことになる。「金星配給が歴代何位」みたいな、通算在位場所数を考慮に入れずに書くのだから、スポーツ新聞や夕刊紙というのも実に簡単な仕事だと思う。
日馬富士は、本当に難しい立場だと思う。
横綱は、強くなければならない。
横綱は、強いからこそ横綱なのだ。
人格や模範となる行動は品格という言葉で評される。横綱には土俵を降りた後の生き様も見られてはいるが、成績が伴わなくても品格が有れば許されるというものではない。
横綱は、品格も強さも求められる。だから、今の日馬富士は本来横綱としては役割を果たしていないと捉えられても仕方がないのである。
ただ、今場所の場合は事情が異なる。
他の3横綱が既に休場し、大関高安も平幕も休場者が続出している。この非常事態に於いて軽々しく休場を勧告することなど、誰に出来るというのだろうか。
想像してほしい。
4横綱が全員休場するという事態を、最後の一人になった横綱が受け入れることがどれだけ耐え難いことか。自分一人の批判ならまだしも、横綱全体や相撲界全体が批判されるのだ。
そう。
日馬富士は、最後の砦なのだ。
そう考えるのはひょっとしたら日本的なことなのかもしれない。自分一人の不振を相撲界全体として捉えられることを、理不尽に感じることが自然なことなのかもしれない。
日馬富士は、日本人が好む力士だと思う。
体は小さいが、誰が相手でも手を抜かないし、真っ向から勝負を挑む。最初は彼も、なりふり構わぬ相撲を取ることもあった。ダメ押しをすることもあった。その度に大きな非難を受けた

ここで変わらない、変われない、変えない力士も大勢いる。そういう力士は次第に期待されなくなる。特にそれは外国人力士に顕著だ。
だが、モンゴル人の日馬富士は批判に真摯に向き合った。彼は単に、してはならないことをしなくなった訳ではない。その証拠に、日馬富士は近年批判されるような行動は一切無い。
外国人力士が相撲の精神性を理解するのがどれだけ難しいことか。それは他の力士がふとした拍子に議論を起こすような事件を起こすことからも明らかだ。
誰よりもフェアで、日本人よりも力士であることに向き合い続けた日馬富士は、不調でありながら最後の砦を守ろうとしている。星が上がらないという逆境でも、彼はその姿勢を貫いている。これがどれだけ重いことか、お分りいただけるだろうか。
だから、私は今の日馬富士を批判することはできない。
願わくばここから調子を上げて、15日間完走してほしい。生き様と強さを、見せてほしいのである。この非常事態だからこそ、頼れるのは日馬富士だけなのだ。
休場しても、責められない。
そういう厳しい状況だ。
ただ、これは日馬富士のドラマだ。
白鵬のドラマや稀勢の里のドラマがクローズアップされることが多かっただけに、今私たちは日馬富士に向きうチャンスを得ている。
今一度、日馬富士の真骨頂を見せてほしい。
相撲の力、横綱の力、そして、日馬富士の力。
全身全霊の凄みに、期待したい。
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4横綱最後の砦:日馬富士。苦境に喘ぐ中、日本人より日本人らしい生き様に期待する。” に対して3件のコメントがあります。

  1. shin2 より:

    日馬富士の切り札的な「頭で当たって左に動いて左上手投げ」という技があるのだが、五日目の阿武松戦は左上手に手が届かなかった。もう左肘だけでなく、左腕全部が思うように動かせないのではないか。
    今まで見てきた横綱の最後の一番(と言っても、朝青龍は不規則な引退だったから、直近で14年前の九州場所の武蔵丸まで遡ることになるのだが)を思い出してしまった。
    横綱には失礼だが、貧乏クジを引く形になってしまった。もう本人が気が済むまで相撲を取ってくれ、としか言いようがない。

  2. ロック より:

    今回の記事、読んでいて涙が出ました。日馬富士のファンというわけでもありませんでしたが…。ありがとうございます。

  3. TCE00079091 より:

    「支持する」を100回ぐらい押したいです
    素晴らしい記事をありがとうございました。

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