WBC監督選考と、相撲部屋の運営の共通点とは?
WBCの監督選考が混迷を極めている。
ソフトバンク秋山監督に白羽の矢が立っていたものの、
彼はこの依頼を固辞しているとの報道が出ており、
どうやら秋山監督は消滅の流れであるという。
今回の監督について言えば優勝以外だと後退、という
究極の火中の栗状態なわけで、
余程日本野球の今後を考えているか、何も考えていないか、
それともリスクよりも自己顕示欲が強いか、仕事が無いか、
という人でも無い限りこのオファーを受託することは無いだろう。
そんな中で野村監督就任待望論が出ている。
当の本人も前向きで、しかし彼へのオファーをしようという
具体的な動きは無く、ヤフーコメントなどでは
これに対して批判的な言動が目立っている。
野村監督は日本野球史上でも有数の実績を残した名監督である。
それは間違いない。
だが、WBC監督にふさわしいかと言うと
別のベクトルで考える必要が有る。
そう。
それは丁度相撲部屋の特性に応じて適性の有る
力士をスカウトしなければならない事情と類似している。
WBC監督に必須となる条件を考えた時に、
2連覇した王監督・原監督に共通しているものを考えた。
すると、以下の2つの要素が浮上してきた。
まずは、短期決戦に強いことである。
ペナントでは140試合という長期スパンで選手を育てたり、
時にはスター選手が不調であっても我慢強く起用し続けることが
チームとしての成長を促し、誰かが不調になっても
カバーできる強さを養っていく必要があるが、
短期決戦だとそもそもチーム運営の仕方が異なってくる。
例えば、チームの柱であったとしても
時には非情に徹してベンチに置いたり、
しかし時には不調であっても信じて使い続ける、
という難しい対応に迫られることになる。
非情に徹して成功したのは第一回の福留の
準決勝以降の代打起用であり、
信じて使い続けて成功したのは第二回のイチローである。
また、継投の巧さというのもこの要素に含まれてくる。
当初藤川を起用していたが、彼の調子が上がらないと見ると
ダルビッシュを抑えに回すという柔軟な決断が下せたことも
第二回の勝因の一つであると言えるだろう。
この要素に関して言えば、野村監督は
短期決戦に大変強い監督であり、条件を満たしている。
ヤクルトの監督として戦力に恵まれているという訳ではない状態で
3度の日本一に輝いたことは、その証左だからである。
そして、次の要素が実に重要なのである。
そう。
スター集団の心を掴み、チームとして一丸と出来ることである。
王監督はカリスマ故に、原監督はスローガンを体現することで
チームをまとめ上げることに成功した。
競技は違えど、チームの和ということを考えると
ワールドカップの日本代表についても同じことが言えるわけで、
トルシエ時代は中山と秋田を、岡田時代には川口を
まとめ役に据えることによってこの目的を果たした。
ちなみにこの点について大失敗したのが、
北京オリンピックの時の星野監督である。
一時的に結果が伴わなかったことに伴い彼は川上と岩瀬を叱責し、
また不調のダルビッシュの扱いにも失敗している。
逆に言うと和が保たれているチームが失敗した事例を私は知らない。
野村監督はこの点はどうなのだろうか?
この点について疑問が残ると言わざるを得ない。
野村監督は、メディアを用いた独自のコミュニケーションを取る。
選手の正確に応じて無視、称賛、叱責というアプローチを取り、
当初選手たちは当惑するが、彼のシャイな人柄故のことなのだと
汲み取ることで徐々に信頼関係を構築する。
そのため、彼のコミュニケーション手法は
長期的なチーム運営には向いていると言えるが、
信頼関係を結べて居ない選手が相手になると
大いに不安である。
そもそも、野村監督は弱小チームで
いかにやりくりするか?ということに長けた監督である。
彼は常勝チームを率いた経験が無く、
スター選手を束ねるという経験をしたことも無いのだ。
そう考えると常勝チームでスター集団の扱いに長けた
監督を選ぶことこそ、空中分解のリスクを
未然に防ぐことに繋がるわけである。
チームの個性に合わせて監督を選出する必要があるし、
監督のカラーに合わせてチーム作りをする必要が有る。
では、このWBCの監督選考問題を
相撲部屋に当てはめると、どのように人を集めて
どのような親方像になることが求められるのか?
貴乃花部屋を例に取り上げてみよう。
続く。