北の湖理事長死去。「江川ピーマン北の湖」とは異なる、愛すべき理事長の素顔を悼む。
北の湖理事長が亡くなった。
吐合さんを通じて北の湖部屋に足を運び、稽古を何度か見せて頂いたことが有る。素晴らしい力士に囲まれ、相撲部屋はアスリートを集める場所ではなく、人を育てるための場所なのだと知ることが出来た。私は北の湖部屋に出会わなければ、ここまで相撲を好きにならなかったと思う。
体調不良が噂されていたが、本当のことではないと信じようとしていた。だが、あまりにも噂にはリアリティが有り、希望的観測は悲観的観測にかき消されようとしていた。そして、今日の訃報である。
62歳。
早過ぎる。
そして、悲し過ぎる。
北の湖理事長は、愛された方だった。ここ2年で理事長を知る多くの方と出逢い、様々なエピソードを聞いた。強面で「江川ピーマン北の湖」と謳われた「憎らしいほど強い」と言われた理事長とは別の顔が有り、私は更に北の湖理事長を好きになった。
そんなエピソードを思いつく限り紹介したい。
「北の湖理事長ってあんな風に怖そうじゃないですか。でも怒ってるところ見たこと無いんですよ。」
「北の湖さんって、弟子から『オヤジ』って呼ばれてるんですよ。弟子もオヤジって呼びたいみたいなんですよね。」
「北の湖さんって色んなモノを部屋に持ってるんです。その辺に絵とか沢山転がってるんですけど『あ、それ3000万円』とか、ビックリしますよ。」
「北の湖さんって写真撮影する時、現役の頃の感じの表情で撮ってくれるんです。」
「北の湖さんって未だにジョッキ一杯の酒を3口で飲むんですよ。」
「北の湖さんの飲む酒って、焼酎97:緑茶3くらいです。色付けに数滴お茶入れるだけなんですよ。」
「北の湖さんって稽古場には殆ど出てこないんで、教えてもらったこと殆ど無いんです。」
「でも、ちょっと教えてもらった時、『こうやって、こうやって』って腕を脇に差し込んできたんですけど、ちょっと腕動かしただけで身動き取れなくなるんです。」
「理事長って大露羅のことすっごい好きなんですよね。」
「部屋で理事長とみんなで酒飲むこと有るんですけど、もうニコニコしてるんですよ。でもおかみさんが降りてくるとムスっとして、『降りてくんな!』ってやるんです。」
「で、酒飲んでると大露羅に甘えるんですよ。理事長。」
「理事長、大露羅に甘えて『大露羅さん、すいません、もう一杯下さい』って言うんですよ。で、大露羅が『オヤジ、飲みすぎだ』って言って拒否するんですよ。」
ご冥福をお祈りいたします。