ポスト北の湖理事長は誰か。逆風無き今、数十年後の繁栄をもたらすリーダーの誕生に期待する。

北の湖理事長が亡くなった。
ネットでの速報、ニュース報道、新聞、全てが北の湖で溢れかえっている。今大相撲は大変な人気だが、これほど話題を席巻したのは大鵬さんが亡くなられた時以来だ。追悼メッセージの多さに、改めてその存在の大きさを感じる。
そして、語られるエピソードと、知られざる北の湖理事長の顔。いつもの表情と、あまり見ないオフショット。その全てが惜しいと感じさせるもので、何故生前にもっと調べようとしなかったのかと今更ながら悔いている。
さて北の湖さんが亡くなられたことはいち北の湖ファンとして大変残念なのだが、実はもう一つ大きな問題が有る。つまり、誰が次期理事長になるのかということだ。
この10年、大相撲は北の湖理事長の方針に沿って運営されてきた経緯が有る。時にこうした意向は、批判に晒されてきた。しかし、如何なる批判に晒されようとも北の湖理事長は自身の方針を貫いた。当然この運営は良い面も有れば、課題も有った。しかしそれも北の湖理事長の方針だから、ということで各自の努力によって課題を乗り切ることになった。
トップが変われば理念にも変化が生じる。理念に基づき、方法論も変化する。時代に応じて変わらねばならないところが有る反面で、変えてはならないところも有る。加速度的に変化する現代だからこそ、それに合わせて適正化せねばならないことも有る。
2015年の相撲界は、過去と比べると逆風らしい逆風は無い。だが、将来的な大相撲の繁栄という意味で考えると、問題は棚上げされている。
例えば土俵の充実に向けた施策については、過去のそれを踏襲するだけでは限界が来ていることも事実だ。相撲のゴールデンエイジとも言える15歳から22歳の期間の強化策は中卒高卒を確保できない今、アマチュアとの連携が必要になることは確実である。
怪我に対するスタンスをどうするか、ということも当然問われる問題だ。大怪我を経験し、元の番付に戻ってもパフォーマンスは戻らないという課題に対していかに向き合うか。公傷制度を復活させるのか。させるとすればどのような形にしていくのか。
更には、新規ファンの開拓という問題も有る。見た目上の観客は増えているが、若年層を巻き込むという課題については全く解決できていない。相撲を観る若者が少数派という実情を変えなければ、10年後の枡席は高齢化が進行するだろう。文化として相撲を定着させる試みが必要になるが、どうするか。
今日伺った話によると、北の湖理事長は持ち込まれる提案を「若い人たちにやらせてみよう」と許容したのだという。遠藤パネルや和装デー、お姫様抱っこ。新規ファンの開拓に貢献した様々なアイデアは、理事長の後押しによって成立するものだったのだ。
北の湖理事長の後、一体誰が大相撲に更なる繁栄をもたらすのか。政治的な部分も有ると思う。ただ、それだけでは大相撲を舵取り出来ない。時には批判されようとも自身の方針で未来を作るという覚悟が必要だ。
逆風は無い。だが、数十年後に振り返るとターニングポイントとなるのは、正に今だ。時代を創る新たな理事長の誕生を期待したい。
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