波乱の9月場所で私が平幕優勝を期待し、恐れる理由。
9日目終了。
優勝争いのトップは、豪栄道。
2敗で阿武咲を始めとする平幕力士が続く。
日馬富士は、3敗だ。
何が起きるか、全く分からない。
あと6日間で、どのようなドラマが待ち受けているのか。
楽しみで、怖い。
終盤戦に稀勢の里が勝負弱さを見せるのではないかと不安に思ったことは、星の数ほどある。相撲を観ていて怖さを覚えるのは、期待と裏返しの結末がちらついた時だ。だが、今回の怖さというのは意味合いが異なる。
そう。
優勝の重みが保たれるかが、怖いのである。
優勝には、格が有る。横綱や大関が強さを見せる中、その場所で一番の活躍を見せた力士が勝ち取るのが、優勝というものだ。だからこそ、関脇以下の力士が優勝するのは特別なのだ。
ただ、平幕優勝という事例も過去には有った。私が知る限りで印象深いのは琴富士だ。彼の優勝が劣っていた訳ではない。あの場所で素晴らしい相撲を取っていた。何かが憑依したように勝ちを重ね、気がつくと優勝していた。横綱や大関が優勝するところしか見たことが無かった私には、衝撃的だった。
そういう優勝もある。15日間で最も良かった力士が掴み取ることも、あるのだ。琴富士以降も何度か平幕優勝を目の当たりにし、私はそういうことも有ると理解していた。数年に一度、波乱に身悶えしても良いのではないかと思っていた。
今は、違う。
この数年で、優勝のハードルは上がった。優勝の価値を白鵬が、日馬富士が、鶴竜が、そして、稀勢の里が高めたのである。照ノ富士の初優勝も、琴奨菊の日本出身力士として10年ぶりの優勝も、豪栄道の全勝優勝もその格に相応しいものだったのである。
今の平幕力士達が、果たしてそれだけの説得力のある優勝を見せてくれるのか。15日の狂い咲きだとしたら、それは私がここ数年見届けてきた優勝とは異質のものではないだろうか。
だからこそ、怖いのである。
仮に平幕優勝だったならば、波乱だったと振り返る以外の何かが有ってほしい。優勝した力士にはその後更に活躍してほしいし、歴史の転換点であってほしい。阿武咲に期待するのは、後で振り返った時にこの場所がターニングポイントになる、そういう期待を抱ける力士だと思うからだ。
では大翔丸は、どうだろうか。
千代大龍は、どうだろうか。
貴ノ岩は、どうだろうか。
私には分からない。ただもし彼らが今場所優勝するならば、白鵬達が高めた優勝に相応しい力士になってほしい。今の優勝とは、重いものなのだ。
あと6日で、優勝は決定する。
期待と恐れを抱きながら、優勝の重みに身悶えしたい。
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これらの内容は文脈を読んでもらえないと言葉だけが独り歩きする恐れがあるので、クローズドな環境で発表することをお許しください。興味がある方は、以下の予約サイトよりご登録くださいますようお願いします。
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