垣添に見る、元関取にとっての幕下。2
十両と幕下を行き来するのではなく、
過去に幕内で確固たる地位を築いた力士が
幕下に登場する光景。
そうした存在は1場所でも1人、
もしくは居ないという場所もかなりの確率で
あるのだが、今場所は垣添が幕下で登場している。
見た目にもその衰えが隠せない垣添。
何よりも番付が如実に彼の現実を示している。
だが、私はまだ彼の相撲を目にしていない。
単に勝ち方を忘れてしまったという
低迷理由も中には有る。
垣添が現在の地位なのは一時的なものなのか、
それとももはや力自体が失われてしまった
ということなのだろうか。
私は、吐合の取組の後で登場した
老いた垣添の戦いぶりを見た。
結果は、残酷なものであった。
鋭い突き押しで相手の先手を奪い、
相手が後退する中でそのまま電車道。
もしくは中に潜り込んで早さで圧倒する。
これが垣添の黄金パターンであった。
だが、彼の生命線とも言える
鋭い突き押しはかつてのそれではなかった。
先手こそ奪うのだが土俵を割るまでには至らず、
捕まってしまい、そこから相手のターンに持ちこまれる。
もしくは後退する相手が反撃の引き落とし、
苦し紛れ気味の投げを打たれ、そのまま敗れてしまう。
前日までの成績は、何と0勝5敗。
全ては突き押しが威力を失ってしまったことが
その根底に有り、勝てない結果を招いてしまっている。
四つ相撲について対応力が有る者は、
前への推進力を多少失ったとしても
その引き出しの多さから苦境を打開出来るのだが、
突き押し相撲に特化したタイプは
この部分が衰えると急速に結果が出なくなる。
かつての北勝海、最近であれば千代大海辺りが
このタイプに属するのだが、彼らは衰えた後で
現役引退を決意するまでの間が非常に早かった。
横綱や大関という立場がそうさせた
ということなのかもしれないが、
垣添はこの厳しい現実を目の当たりにしながらも
彼等とは同じ決断をしなかった。
それが仮に、全敗対決を制した今日、
同情の拍手をもらったとしても。
続く。