貴乃花と白鵬のファンサービスの違いに思う。Ⅱ

前回のブログで貴乃花による
吉本新喜劇出演というファンサービスは
作られた萌えである、という話をした。
力士は只でさえ土俵を下りれば
大男が変わった風体で相撲以外のことを
しているのだからそれだけで
萌えの対象となるわけだが、
萌えとして成立するのはそこに
リスペクトが有るからなのである。
だが、昨今の不祥事や力への憧憬が
失われている背景から、力士に対する
リスペクトは失われつつある。
それ故、貴乃花が仕掛ける吉本新喜劇への
出演というのは、リスペクトが無い人間からすれば
バカがバカをやっている、という程度の
認識しかしないため、逆にイメージダウンしてしまう、
という問題定義をしたわけである。
では、このような状況の中で、
相撲界がすべきファンサービスとは
一体どのようなものなのか?
答えは既に、白鵬が実践していたのである。


白鵬のファンサービス。
それは、巨人のキャンプに参加する、
ということである。
バッティング練習する白鵬。
ブルペンでフォームが出来ていない中で
どうにかキャッチャー目掛けて投げ込む白鵬。
そして、普段土俵では見せない
柔和な表情で無邪気に楽しむ白鵬。
3分程度のこのニュースを観て感じたのは、
白鵬は120点の対応をしたということだ。
ではなぜ、キャンプ参加がファンサービスとして
完璧だったのか?
それは、白鵬が素晴らしい身体能力を見せることによって
「力士ってすげぇ!」
と思わせるに至ったからである。
ファンに媚びて人間宣言をする類のファンサービスは
どんな競技でも走りやすい。
例えば必要以上に握手会を開いたり、
サインをさせたりというのは正にこれである。
「ファンの皆様の為にさせて頂く」
というメンタリティは、ファンにも当然通じてしまう。
そうした意識でサービスをしたのでは、
ファンとしてもどこかでファンサービスを
要求する意識が芽生えてしまう。
某球団の外野席のファンがこの例に当てはまり、
26番目のファンという名の元に甘やかされた結果、
一部暴徒化したファンが選手を中傷するという
最悪の結果を招いてしまった。
選手とファンは同格ではない。
あくまでもファンにとって選手とは
リスペクトの対象である、という線引きを
取らなければならない。
だが、媚びるタイプのファンサービスというのは
選手を身近な存在にするといういい面もあるのだが、
反面でやり方を間違えるとリスペクトを
犠牲にしてしまうのである。
白鵬のファンサービスが優れているのは、
決してファンに対して媚びるのではなく、
競技経験が有るわけではないので上手くは無いのだが、
随所に素晴らしい能力を魅せるところにある。
つたないフォームで打つ白鵬。
野球のリテラシーが有れば、明らかに有り得ない
フォームだということは間違いない。
しかし、インパクトの瞬間にセンスを見せつける。
捉えた打球はピンポン玉のように飛んでいくのだ。
普通の素人は、こうはいかない。
この映像を観たものは、間違いなく
野球素人の白鵬の下手さに対して軽んじるのではなく、
素人にも関わらず有り得ないポテンシャルを見せたことに
相撲や白鵬の凄さを思い知る結果になるわけだ。
真の意味でのファンサービス。
それはリスペクトを醸成して、憧れ故に
またその競技を観たいと思わせることに他ならない。
しかしながら、親近感を与えることによって
同じ人間として共感する対象である、
という認識を与えることも効果的である。
この面に於いても白鵬は忠実にミッションをこなした。
190センチ150キロの白鵬が
巨人のユニフォーム、しかも69番を背負っている。
勿論帽子はかぶっていない。
マゲのままである。
キャッチボールする白鵬。
バッティングする白鵬。
ポテンシャルは見せるが、全てが拙い。
そう。
これは貴乃花的アプローチによる、
アイドルとしての力士像すら体現しているのである。
ポテンシャルによって凄さをアピールしつつ、
等身大の人間としてのムンフバティーン・
ダワージャルガルさんがそこには確かに居る。
力士とは、超人であると同時にアイドルである。
貴乃花も、相撲協会も、そのことを知ってほしいと
白鵬の120点の対応を観て強く思った。

貴乃花と白鵬のファンサービスの違いに思う。Ⅱ” に対して2件のコメントがあります。

  1. 無双 より:

    コメント失礼します
    ニュース番組で見ましたが、
    白鵬がマウンドからストライクの投球は、圧巻でした
    思わずスゲーと叫んでしまいました。
    まさに、
    「競技経験が有るわけではないので上手くは無いのだが、随所に素晴らしい能力を魅せるところにある。」に同感します。
    で、余談ですいませんが、
    某球団のファンは、「25番目」では、なくて「26番目」ですよ。ベンチ入りできる選手は25人ですから。
    西岡選手に対して応援拒否など、確かにあれはよくなかったと思います。
    やっぱり、白鵬は、超人であると同時にアイドルですね

  2. 入間川サポーター より:

    貴乃花も大横綱とされる立派な成績を残し、本来であれば引退後もリスペクトされるべき存在だと思います。
    しかしながら、引退後の相続でもめた時のテレビでの異常な言動などですっかりリスペクトを失ってしまったといえます。もちろん本人の問題以上に賭博や八百長の問題による大相撲のイメージダウンはあると思いますが。
    おっしゃるように今の貴乃花が吉本新喜劇に出演したとしても「バカがバカなことを・・・」とまではいかないにせよ、貴乃花の出演によって意外性を感じさせることで注目を集めようとする作戦はたいした効果は生じさせないでしょう。

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