野球の二軍と幕下相撲の違いとは?前篇

幕下相撲を観るようになり、その魅力について
これまで様々な方面から語ってきて、
有り難いことに様々な反響を頂いてきた。
面白いと思ってもらえるポイントは人それぞれだが
伝わっていることは素直に嬉しい。
知識がゼロの相手に対して興味を抱いてもらい、
そして観るという行為に至るまでマインドセットするには
それなりにロジカルで、それなりに感情を揺さぶる
説明が必要になってくる。
成し遂げていない者同士が互いに技を競い
何者かにのし上がっていくプロセスを観る過程で生じる
様々な要素が面白い、ということで
私はよくAKB48やジャニーズJr.を観るのに共通した
面白さが有ると説明するのだが、
ここでよく聞かれることが有る。
幕下相撲と、他の競技の二軍とではどう違うのか?
他の競技の下積み選手には無い、幕下相撲ならではの魅力とは?


私はあくまでも幕下相撲目線でしか
その魅力を考えていなかったのだが、
確かにそれは下積みをしている人達に共通して言える
魅力に過ぎないのかもしれない。
だとすれば、わざわざ幕下相撲ではなく
サッカーのJFLや野球の二軍戦、ボクシングの8回戦を観ても
いいわけである。
こうした疑問に応えるべく、私は所沢第二球場に足を運び、
日本ハムVS西武の試合を観戦してきた。
ハンカチ王子登板試合という副産物が先立っての観戦で、
エリートが泥に塗れる非日常感を目の当たりに出来ることは
私にとっては非常に魅力的なことであったのだが、
この試合観戦を通じて幕下相撲と野球の二軍との間に
大きな隔たりが有ることを実感した。
そう。
選手たちが大変洗練されているということである。
ハンカチ王子以外にも赤ゴジラ嶋や、
6球団競合のドラフト1位ルーキー大石など、
知名度の高い選手達もこの中に含まれており、
彼らが高い次元で技を競い合っているのである。
考えてもみると二軍の次のカテゴリは一軍なのであり、
その力量の差というのは知名度ほど無いのかもしれない。
事実、確かな技量を備えた選手が調子を崩して
調整するために行く場が二軍なのだから
その環境が高いレベルだと考えることは至極真っ当なことである。
だが、反面で気迫を前面に出したり
ユニフォームを泥まみれにするような、
そういうプレイヤーの不在は一つの発見だった。
例えば、俊足功打の選手が小技をちらつかせるようなことも無いし、
ピッチャーもブラッシュボールなどの反則スレスレの線を
狙ってくる者は誰も居なかった。
例えばこれが相撲であれば立ち合いの変化や
立ち合いの駆け引き、張り刺しやゆるふんといった
八方手を尽くしている。是非は別として。
つまり、プロ野球の二軍というのは
一軍の予備軍であり、長期的な目線から個別の課題を
克服するための場ではないかと思うのだ。
このように考えたのには理由が有る。
そう。
プロ野球選手は給料を生活できる程度に貰っており、
またドラフト下位や育成枠でなければすぐには解雇されないのだ。
一軍に昇格するための長期的な計画として猶予を与え、
またそれを実現するためにも金銭的な保証をすることで
二軍選手たちは確かな技術と体力を身に付ける。
このような違いが有ることにより、
二軍野球ファンは一軍選手へと成長するプロセスを楽しむ。
幕下相撲とは異なる楽しみ方が存在しているのである。
幕下以下だと給料が貰えず、食事と寝床を保証されるだけの
半人前の立場であることから、一番に賭ける動機が
そもそも大きく異なる。
それ故に幕下には関取には出来ない生死を賭けた
デスマッチがそこかしこで繰り広げられており、
この残酷な戦いの中に感じるものが有るのだ。
相撲独自のヒエラルキー構造がもたらす
経済的な事情の特殊性は、幕下相撲を時に残酷に、
時に関取を上回る魅力を我々に提供する。
だが、その魅力を提供するのは果たして
経済的な事情に依るものだけなのだろうか。
後篇に続く。

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