把瑠都大関復帰消滅に伴う、大関陣の「明日は我が身」の危機とは?
把瑠都が6敗目を喫した。
今場所での大関復帰の目が無くなり、
再度大関に昇進するには3場所で33勝という
高いラインを超える必要が有る立場に戻ってしまったことは
一相撲ファンとしては大変残念である。
以前も書いたのだが、白鵬1横綱時代に
6大関が犇めいていたあの頃、
取りこぼしの少なさと、スピードを
体格と体力で凌駕出来るスタイルから
白鵬にとって一番の脅威となるのは
把瑠都であると想像していた。
実際、昨年の初場所で優勝したのは把瑠都。
その後の飛躍は見えたはずだった。
だが、誰よりも成績に安定感の無かった
日馬富士が横綱に昇進し、
そして把瑠都は怪我が原因で関脇に身を落としてしまった。
彼が今回10勝のラインを越えられなかったのは、
ひとえにコンディションの問題である。
立ち合いに鋭さが無いので先手を取られる。
普通であればそれでも上手を取って相手を止め、
身動きを封じた上で押し出してやれば良いのだが
相手の押しを止められない。
ズルズルと後退し、そのまま土俵を割る。
先手を取ったり、相手を止めさえすれば
体格の優位がモノを言うので勝ちを掴める。
つまり他の力士よりも勝つ確率は
極めて高いスタイルと言えるのだが、
コンディション不良はスタイルの根幹を揺るがしてしまう。
数年前であれば、仮に関脇に転落しても
現在のコンディションでも2ケタ勝つ確率は
かなり高いものだったと想像する。
何故なら千代大海や魁皇など、高齢化の進んだ大関陣に
上位にはなかなか勝てない稀勢の里や鶴竜が
目下のライバルだったからだ。
だが日馬富士は横綱に昇進し、
稀勢の里や鶴竜も安定して2ケタ勝利出来る実力を身に付けた。
佐渡ケ嶽部屋の2大関も健在。
加えて関脇小結には大関を目指す豪栄道、妙義龍、栃煌山。
外国勢も魁聖、栃ノ心、碧山、そして臥牙丸。
そもそも陥落した時から、苦難の道は想定されていたのだ。
確かに本調子であれば、周囲がいくらレベルアップしていようとも
把瑠都の相撲は誰にとっても脅威である。
だが、ひとたび調子を崩してしまえば
2ケタ勝利するのは困難を極める。
今回把瑠都が大関復帰できなかったのは
コンディションが整わなかったからではあるが、
逆にコンディションが戻らない限り
彼が元の地位に戻ることは難しいということが
証明されてしまった。
だが、これは把瑠都だけの問題ではない。
そこで、大関陣のここ1年の成績を洗い出してみた。
◆過去1年の大関陣の成績◆
鶴 竜 10–5 13–2 8–7 9–6 11–4 9–6
稀勢里 11–4 9–6 11–4 10–5 10–5 10–5
琴奨菊 8–7 9–6 9–6 10–5 休場 8–7
琴欧洲 10–5 8–7 8–7 9–6 休場 9–6
そもそも私は先場所把瑠都ではなく、
佐渡ケ嶽部屋の2大関の方にこそ危機を感じていた。
彼らはコンディションを崩して2ケタ勝利出来るだろうか?
ただでさえ過去1年で、この2大関は殆ど2ケタ勝利していないのだ。
稀勢の里すら大関昇進後は10勝5敗の場所が多く、
一度自分の相撲が取れなくなれば
危険な領域に身を落とすことになる。
今後高安や千代大龍、常幸龍辺りも
上位に食い込んでくることを想定すると
その状況は更に苛烈になることが想定される。
そう。
怪我明けの場所で10勝するというのは
大変困難な時代なのだ。
明日は我が身。
まずは2場所連続での負け越しを避けること。
そのためには、健康を維持すること。
当たり前のことを当たり前に遂行する。
危機管理の基本である。