アマチュア横綱・遠藤大相撲入りから、学生相撲出身力士の伸びしろを考える。

アマチュア横綱・遠藤の大相撲入りが決定した。
アマチュアとしての実績は近年では突出しており、
幕下10枚目格付出デビューを果たすことになる。
4年前の妙義龍、2年前の明月院(千代大龍)、昨年の山口(大喜鵬)。
最近幕下付出デビューした力士の活躍ぶりを考えると遠藤も、
と期待するのはごく自然なことだと思う。
遠藤は高校時代から全日本高校選手権を優勝、
大学時代には全日本選手権 、岐阜国体、
全日本大学選抜大会を優勝する逸材である。


私も全日本選手権で遠藤を目にする機会が有ったのだが
アマチュア力士特有の立会いの駆け引きも
それほど気にならない程度だったことや
強烈な前への推進力に加えて得意な態勢に持ち込む技術を
兼ね備えていることに驚かされた。
安定感有る取り口は若手と言うよりは既にベテランのそれで、
学生は勿論、松永六十四などの社会人の強豪と混じっても
付け入る隙が無い印象を受けた。
現段階の実力で言えば既に十両、
プロの相撲にアジャストすれば幕内で取ることも
十分可能と言えると思うのだが、
裏を返すとそこに不安が有る。
そう。
伸びしろである。
当ブログでは度々話題に出しているのだが、
学生時代の鮮烈な印象を理由に
つい過剰な期待をしてしまうが
大学4年間を経て角界入りした力士の中で
横綱になったのは輪島ただ一人である。
尾曽(武双山)や田宮(琴光喜)は健闘した方なのだ。
完成した相撲を取っているということは
それ以上に技術を研さんしなくても
身体を大きくしなくても何とかなってしまう。
その証拠として、学生出身の力士独特の傾向として
デビュー以降それほど身体が大きくならないことと
相撲のスタイルが変わらないことが挙げられる。
学生時代に完成度で何とかしてしまってきた
経験が有ると、その後もその範囲内で対応してしまう。
当たり前のことだ。
何とかなってしまうのだから。
実績ある大卒力士にどの程度の活躍を期待するかによって
成功と見なすか失敗と見なすかは異なってくるが
圧倒的な実績をアマチュアで重ねた力士に対して
前頭のエレベーター程度で満足してほしくないという
思いが有ることは事実で、それ故に落胆してしまうのである。
だが、八百長問題や暴力問題などに揺れた大相撲である。
怪我や相撲自体が通用しないリスク、
そして大相撲人気の低下を考慮すると、
プロ入りすること自体非常に覚悟が要ることなのは間違いない。
近年学生相撲を経て角界入りする力士の数は、年間10名程度。
アマチュア相撲に残り、将来は高校や大学で
指導者として生きていく方が生活は安定するだろう。
先の見えない不況や先のリスクを考えれば
周囲がそのような選択を勧めることは大いに想像がつく。
だが、そうした中で彼らは角界入りするのだ。
私はそのこと自体素晴らしいことだと思う。
この決断自体が退路を断って生きていくという
意思表示なのだからこそ、
現状維持やアジャストというレベルで満足するのではなく、
相撲を極めてほしい。
私達一般人は、そういう強さをアスリートに求めている。

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