稽古総見での蒼国来への温かい大歓声、そして過酷な現実。

稽古総見を見てきた。
あの時出会った右肩上や先日部屋で見た
北播磨、鳰の湖といった北の湖部屋勢が出てくることや
個人的にプライベートで友人に推しまくっている明瀬山など、
観たい力士が粗方登場することも有って
朝4時から目が覚めてしまう始末だった。
7時前には既に長蛇の列。
着物を着用して意図的にテンションを上げる私。
1人で東6列の升席という贅沢を味わいつつも
いきなり幕下が登場し、高鳴る鼓動を抑えられない。
楽しいポイントが多すぎて、
それを説明し出すとキリが無いので今回は止めておくが、
北の湖部屋の稽古見学に関する記事を一旦止めて
総見の内容に言及したのには大きな理由が有る。
そう。
蒼国来である。

蒼国来が土俵に上がった瞬間の国技館は、
総見ではなく、復帰のお披露目の場と化していた。
鳴り止まぬ拍手。
四方八方から聞こえる、激励の声。
誰もがその大きな意味を噛みしめていた。
幕内力士との申し合いを数番終わらせた後、
粋過ぎる演出として、白鵬が蒼国来を対戦相手に指名した。
何と美しい光景だろうか。
平成の大横綱がその復帰を祝して、胸を貸す。
本来であれば大関横綱との稽古の場である。
そこを敢えて、蒼国来なのだ。
予想だにしなかった展開に、更に湧く館内。
二人だけの特別な世界が、幕を開ける。
しかし、そこは横綱白鵬である。
大関でも殆ど勝てない白鵬に、蒼国来は勝てない。
立ち上がり、白鵬に挑む蒼国来。
倒され、また向かっていく。
場内から「頑張れ！」「負けるな！」という
声援が鳴り響く。
本当に温かい。
今日一番のショットだったことは間違いない。
だが、私はこの申し合いを殆ど見ていられなかった。
理由は簡単だ。
蒼国来が、弱過ぎるのだ。
立ち合いで蒼国来が前みつを引く。
右に左に揺さぶり、態勢を崩しながら前に出る。
ここまでは普通の稽古だ。
だが、白鵬には全く通じない。
この態勢から首根っこを掴み、真横に投げる。
組み付いていたはずの蒼国来が、吹き飛ばされる。
子供相手のVTRでしか見たことの無い光景を、
白鵬は蒼国来を相手にやってのける。
残酷なまでの力の差。
美しい光景であるが故に、蒼国来に肩入れすることで
美談として終わらせたいシーンではあるのだが、
それにしては余りにも準備が足りていないのである。
無罪と信じながらも罪を問われ、
周囲からは有罪と疑われる日々。
トレーニングはしているものの、復帰できるとは限らない。
このような状況の中で、2年前と同じ実力を保てるか？
保てと言うのか？
私には言えない。
そして、責める気にもなれない。
今の状況から幕内で対応できる状態まで回復するには
どれくらい時間が掛かるのだろうか。
むしろ、戻るのだろうか。
時は、残酷である。
そして、疑いを掛けてしまったことで
蒼国来の土俵人生は全く異なるものになってしまった。
当ブログは法律や事実関係を論証出来ないので
そうした部分は他の方にお願いしたい。
だが、2年間大相撲から離れた蒼国来という力士が
土俵に復帰し、そして元の地位を取り戻そうと
人生を賭けて臨んでいる。
それは非常に重いことである。
私には蒼国来のこれからのドラマを語ることしか出来ない。
あとは、彼次第である。
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