遂に白鵬を倒した稀勢の里。その再現性の有無から、来場所以降の展望を考える。

今場所のメインイベント、白鵬VS稀勢の里。
先場所の14日目にあれほど凄い内容を見せ
新時代の到来を期待させたのだが、
稀勢の里は初の綱取りのプレッシャーから
序盤で3敗してしまう。
プレッシャーから解放された稀勢の里は
そこから全勝。遅すぎた連勝だが、
苦手の日馬富士と琴欧洲は難なく退けた。
白鵬は連勝を重ねて、早々と優勝。
立ち合いを失敗しても、大関を退けるという
とんでもない内容。
しかし、脇腹を痛めてしまった。
序盤でドロップアウトしたために、
皮肉にも万全の調子で臨む稀勢の里。
そして優勝は決めたが、爆弾を抱えてしまった白鵬。
その爆弾とは、連勝と怪我の二つである。
身体が壊れるリスクを背負い、勝ちに邁進するか。
今後のことも考えて、身体に無理の無い相撲を取るか。
どちらを取るかは予測が立たなかった。
だが、日本中の期待が掛かる中、
本気で稀勢の里を潰しに掛かった白鵬である。
どちらかと言えば、彼の生き方を考えれば
力を抜く相撲を取る構図は考えにくかった。
そして、運命の一番。


立ち合いから突っかける白鵬。
仕切り直す。
呼吸が合わない。
自分のペースに持ち込もうと、間合いを気にする白鵬。
マイペースを崩さない稀勢の里。
変化の匂いすら漂う。
遂に立ち合い。
白鵬、左手で張り差し。
問題はこの後だ。
その直後に、白鵬は更にカチ上げを敢行したのだ。
張り差しの後に、カチ上げ。
相撲で初めて、ワンツーを放つ力士を目撃した。
衝撃の破壊音。
白鵬は、確実に稀勢の里を潰しに来た。
だが、稀勢の里は動じない。
そのまま前に進み、白鵬を捕まえにかかる。
たまらずフルスイングの張り手を振るう見舞う白鵬。
捉えられない。
前に進む稀勢の里。
後退しながら体を入れ替えつつ、張り手を交える白鵬。
それでも怯まず、ひたすら前に出る稀勢の里。
白鵬の支配力が及ばない。
稀勢の里を止められないのだ。
この状況を打破するために、下がっては張り手を繰り出す白鵬。
だが、その張り手が隙を生み、前進を許してしまう。
一気に押し込み、そのまま吹き飛ばす。
これだ。
これこそ、私達が見たかった稀勢の里である。
腰が降りている。
脇が閉じている。
そして、愚直に前に進む。
この当たり前が当たり前に出来ると、
稀勢の里はここまで強いのか?
日馬富士、琴欧洲はまだしも、白鵬が相手である。
そして、この相撲は別に普段出来ないことをやってのけた
という訳でも無い。
再現性の有る相撲を自然体で取っている、というだけの話だ。
つまり、これは偶然ではなく必然の相撲。
翻って白鵬に目を向けると、
他の力士が相手の時には全くしてこなかった
張り手とカチ上げのワンツーコンビネーションに加えて、
不利を打開するために張り手を多用した。
そして、それは状況を更に悪化させた。
張り手は稀勢の里の推進力を止められず、
むしろ張り手が生み出した隙を突かれ
押し込まれてしまった。
そう。
自然体でなかったのは、むしろ白鵬の方だったということである。
考えてみると、先場所から白鵬は
稀勢の里に対して張り手を多用してきた。
その結果態勢が不利になり、左を許し、
強引な揺さぶりから決死のすくい投げを放って
勝ちを引き寄せざるを得なかった。
白鵬は、稀勢の里が相手だと
スタート地点から追い込まれているのである。
誰よりも稀勢の里を認めている証拠だろう。
自然体を生み出すためのプロセス。
自信を生み出すのに必要なプロセスとも言い換えられる。
まずは、相手に慣れること。
これは出稽古によって克服されたことなのかもしれない。
そして、結果。
5月場所での優勝争いに加え、
名古屋場所での綱取り失敗からの連勝ストップ。
遂に、整った。
稀勢の里が稀勢の里の相撲を取り続けるための準備が。
後は、自然体を継続すれば、
結果は転がりこんでくる。
自然体の稀勢の里は、横綱クラスの実力者なのである。
今一番怖いのは、ここで掴んだ自信を
またしても千秋楽の琴奨菊戦で粉々にしてしまわないか?
ということだけ。
同じ轍は二度踏んではいけない。
明日からが、新たな始まりである。

遂に白鵬を倒した稀勢の里。その再現性の有無から、来場所以降の展望を考える。” に対して1件のコメントがあります。

  1. beonaoto より:

    「今一番怖いのは、ここで掴んだ自信をまたしても千秋楽の琴奨菊戦で粉々にしてしまわないか?」まさにこのコメントにつきますね。そして実際やってまいそうなのがキセという力士なんでしょう。

  2. アメフト好きの萩原くん より:

    これが優勝の可能性を残した一番ならまた結果は
    違った可能性大だと思うんですよ
    二場所連続優勝は必須だとは思いませんが直前二場所に
    優勝を含まない昇進は絶対にやめるべきだと思います
    後はこの相撲を再現して優勝するだけです
    まあ今日負けたら最初からやり直しなんですけどね
    体重があってかつ自分より低い力士(ズバリ琴奨菊)というのは
    稀勢の里にとって物理的にやりにくい相手だと推測されます
    実は足長いですからね萩原くんは

  3. 一相撲好き より:

    今場所の前半戦3敗を見る限りでは、
    今日勝って綱取りの可能性が来場所につながったとしても、
    同じ失敗を繰り返す可能性は否定しきれないと考えます。
    昨日の白鵬戦の勝利は素晴らしい内容だったと思いますが、
    そこに至るまでの状況を考慮するとやや割引が必要だと感じます。
    また、出稽古についても稀勢の里にとって有益なものかどうかは、
    千代大龍、栃煌山戦を見る限りむしろ害も大きいと感じます。
    出稽古で確認できた問題点を修正していく対応力が
    今の稀勢の里にはやや不足していると感じます。
    来場所の千秋楽には良い結果が出ていると良いのですが。

  4. 麦太郎 より:

    まさに稀勢の里の良さが、これでもかと光った一番でしたね。
    手負いの状態と言えど、本気で潰しにきた横綱の張り手とかち上げを、
    もろともせず前に前に出る重厚な圧力。
    堪らず引き技に出た横綱の動きにも、しっかりとついて行き、
    その後も間髪入れずに攻め続け、組んでからの一気の寄りが
    勝負を決めました。
    この突進力こそが彼の一番の持ち味であり、多少の変化など
    意に介さぬ足腰の粘りが白星を生み出す原動力です。
    これをごく当たり前として発揮できれば、彼が綱を張るに
    ふさわしい力量を身に付けたと言えるでしょう。
    稀勢の里の今後の精神面での成長に注目です。

  5. なの。 より:

    [もう横綱にしちゃえよ、星なんかどうでもいいじゃん。両横綱倒したんだから、少なくとももう横綱と互角だよ]
    これがボクの今の気持ちです。

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